暗号資産取引の基礎——取引所と販売所の違い・仕組み・購入の流れ

暗号資産(crypto-asset)に関心はあっても、「取引所と販売所は何が違うのか」「どういう仕組みで買うのか」「誰が業者を監督しているのか」といった点までは整理できていない、という人も多いと思います。この記事では、暗号資産取引の基礎となる仕組みを、金融庁などの公的機関が公表している情報をもとに整理します。どの方法・どの業者が良いか・有利かを決めるのではなく、暗号資産取引の仕組みがどうつながっているかを、自分で確認するための前提として整理することを目的としています。

最初に、二つの前提を確認しておきます。一つ目は、暗号資産は「法定通貨」ではないという点です。金融庁は、暗号資産について「法定通貨ではありません」と説明しています。二つ目は、暗号資産は価格が変動するという点です。金融庁は「暗号資産は、価格が変動することがあります」とも説明しており、利益も元本も保証される性質のものではありません。なお、本記事の内容は2026年6月時点で確認した公式情報をもとにしています。暗号資産の制度は改正されることがあるため、最新の情報は金融庁・国税庁などの公式情報で確認することが前提になります。以下では、この前提のもとで、暗号資産取引の仕組みを一つずつ整理します。

暗号資産とは——法的な位置づけ

暗号資産は、かつて「仮想通貨」と呼ばれていましたが、資金決済法の改正(令和2年5月1日施行)により、法令上の呼称が「暗号資産」へ変更されました。インターネットを通じてやり取りされる財産的な価値で、ブロックチェーンなどの技術を用いて記録・移転される、という点が特徴とされます。

ここで押さえておきたいのは、暗号資産は「法定通貨」ではないという点です。法定通貨(日本円や米ドルなど、法令上、通貨として通用するもの)とは異なり、暗号資産は特定の発行体による価値の保証があるわけではなく、需給などによって価格が変動します。金融庁は、暗号資産について「法定通貨ではありません」「価格が変動することがあります」と明示しています。

また、現物の暗号資産そのものは資金決済法上の「暗号資産」として扱われ、株式や債券のような金融商品取引法上の有価証券とは異なる枠組みに位置づけられます。一方で、暗号資産のデリバティブ取引(証拠金取引など)や、収益の分配を受ける権利が付されたトークンなどには、金融商品取引法の規制が関係する場合があります。このように、商品や取引の形態によって適用される枠組みが異なるため、暗号資産を一律に有価証券と同じものとして捉えるのは適切ではありません。制度の細部については、本記事では概要にとどめ、詳しくは金融庁の公式情報で確認していただくことを前提とします。

「取引所(板取引)」と「販売所(相対取引)」の違い

暗号資産を売買する方法には、大きく分けて「取引所(板取引)」と「販売所(相対取引)」という二つの形があります。同じ暗号資産交換業者が、その双方を提供している場合もあります。まずは、それぞれの仕組みを分けて押さえておくと、後の整理が見通しやすくなります。

取引所(板取引)の仕組み

取引所(板取引)は、利用者どうしの注文を付け合わせて売買を成立させる仕組みです。買いたい人と売りたい人の注文(板)が並び、価格と数量が合致したところで取引が成立します。利用者が業者を相手に売買するのではなく、利用者どうしの注文がマッチングされる、という点が特徴です。

金融庁の事務局説明資料では、暗号資産交換業者が提供する形態の一つとして、「顧客間の注文を付け合わせる『取引所』(板取引)」が挙げられています。なお、同資料では、暗号資産の性質上(同一の暗号資産が複数のプラットフォームで取引されるため)、個別の「取引所」が持つ価格形成機能は限定的とされる、という整理も示されています。

販売所(業者と相対)の仕組みとスプレッドの考え方

販売所(相対取引)は、暗号資産交換業者自身が取引の相手方となって、利用者に暗号資産を売る・利用者から買い取る仕組みです。利用者は、業者が提示する価格で売買します。金融庁の事務局説明資料では、暗号資産交換業者が提供する形態として、「業者自身が取引の相手方となる相対取引」が挙げられています。

販売所では、一般に、業者が提示する売値(利用者が買うときの価格)と買値(利用者が売るときの価格)に差があります。この差を「スプレッド」と呼び、実質的なコストの一要素にあたると考えられます。スプレッドの幅は、業者・銘柄・時点によって変動するため、本記事では具体的な数値を示すことはしません。

ここで注意したいのは、取引所(板取引)と販売所(相対取引)の「どちらが有利か」を一律に決めることはできない、という点です。手数料・スプレッド・取扱銘柄・最低取引数量などの条件は業者によって異なり、また同じ業者でも形態によって異なります。どの方法・どの業者が自分に合うかは、これらの条件を各社の公式説明で確認したうえで、利用者自身が判断することが前提になります。

暗号資産交換業は登録制——誰が扱えるか

国内で、暗号資産と法定通貨(または他の暗号資産)との交換サービスや、暗号資産の管理などを業として行うには、「暗号資産交換業」の登録が必要です。この登録制は、平成29年4月1日から開始された制度です。つまり、誰もが自由に交換サービスを提供できるわけではなく、登録を受けた事業者だけがこれを行える、という枠組みになっています。

金融庁は、利用者に向けて「暗号資産交換業者は登録が必要です。利用する際は登録を受けた事業者か確認してください」「暗号資産の取引を行う場合は事業者から説明を受け、内容をよく理解してから行ってください」と説明しています。利用を検討している業者が登録を受けているかどうかは、金融庁が公表している「暗号資産交換業者登録一覧」で確認できます。

また、暗号資産交換業に関する自主規制を担う団体として、一般社団法人 日本暗号資産等取引業協会(JVCEA、Japan Virtual and Crypto assets Exchange Association)があります。JVCEA は、自主規制規則の制定、会員業者への監査、利用者からの苦情・相談の受付などを行う、認定された自主規制団体です。

利用者保護の枠組みの概要

登録を受けた暗号資産交換業者には、利用者を保護するためのいくつかの枠組みが課されています。代表的なものとして、利用者から預かった財産を業者自身の財産と分けて管理する「分別管理」、利用者への情報提供、広告・勧誘に関する規制などが挙げられます。これらは、利用者が安心して制度を利用できるようにするための制度的な枠組みです。

ここで、概念を分けて理解しておくことが大切です。これらの利用者保護の枠組みは、業者の側に起因する事態(破綻など)に備えて利用者の財産を保全することなどを目的としたものであり、価格変動による損失(投資の損益)を補うものではありません。「利用者保護の枠組みがあるから損をしない」という関係ではない点に注意が必要です。資産の保全に関する制度と、相場変動による損益とは、別のものとして整理してください。

なお、分別管理の具体的な方法(金銭の管理方法、暗号資産の保管方法など)は制度の細部にわたるため、本記事では概要にとどめます。詳しくは金融庁の公式情報や、各社の開示情報で確認していただくことを前提とします。

口座開設〜購入の一般的な流れ

暗号資産を購入するまでの一般的な流れは、おおむね次のようになります。あくまで一般論であり、手順の細部や必要書類は業者によって異なるため、実際の手続きは各社の公式説明で確認することが前提になります。

第一に、登録を受けた暗号資産交換業者を選びます。このとき、金融庁が公表している登録業者の一覧で、登録の有無を確認することが望まれます。第二に、口座開設を申し込み、本人確認の手続きを行います。暗号資産交換業者は、本人確認(取引時確認)を行うことが求められています。第三に、業者側の審査を経て、口座が開設されます。第四に、日本円を口座に入金します。第五に、取引所(板取引)または販売所(相対取引)で、暗号資産を購入します。

ここで前提として押さえておきたいのは、本記事は購入の手順を一般的に整理したものであって、暗号資産の購入を勧めるものではないという点です。暗号資産は法定通貨ではなく価格が変動する、という前提を理解したうえで、利用するかどうか・どの方法を選ぶかは、利用者自身が公式情報を確認して判断することが前提になります。なお、暗号資産取引のリスクと税金については、暗号資産取引のリスクと税金の基礎で別に整理しています。

用語の整理

この記事で扱った主な用語を整理します。

確認のポイント

最後に、暗号資産取引の仕組みを確認するときに意識したい点をまとめます。

よくある確認事項

暗号資産と仮想通貨は違うものですか

同じものを指します。かつて「仮想通貨」と呼ばれていたものが、資金決済法の改正(令和2年5月1日施行)により、法令上の呼称が「暗号資産」へ変更されました。本記事では、公式表記にならって「暗号資産」と記しています。なお、暗号資産は「法定通貨」ではなく、株式などの有価証券とも異なる枠組みで扱われる点に注意が必要です。

取引所と販売所は、どちらが良いのですか

一律に決まっているわけではありません。取引所(板取引)は利用者どうしの注文を付け合わせる仕組み、販売所(相対取引)は業者自身が相手方となる仕組みで、それぞれ性質が異なります。手数料・スプレッド・取扱銘柄・最低取引数量などの条件は業者によって異なるため、どちらが自分に合うかは、各社の公式説明で条件を確認したうえで判断することが前提になります。本記事では、どちらが有利かを決めることはしません。

暗号資産はどの業者でも扱えるのですか

いいえ。国内で暗号資産と法定通貨などの交換サービスを業として行うには、暗号資産交換業の登録が必要です(平成29年4月1日制度開始)。金融庁は「暗号資産交換業者は登録が必要です。利用する際は登録を受けた事業者か確認してください」と説明しています。利用を検討している業者が登録を受けているかどうかは、金融庁が公表している登録業者の一覧で確認できます。

口座を開設するのに本人確認は必要ですか

一般的に必要です。暗号資産交換業者は本人確認(取引時確認)を行うことが求められており、口座開設の際には本人確認の手続きが必要になるのが一般的です。必要書類や手続きの細部は業者によって異なるため、具体的な内容は各社の公式説明で確認することが前提になります。

さいごに

暗号資産取引には、取引所(板取引)と販売所(相対取引)という売買の形の違い、暗号資産交換業の登録制、利用者保護の枠組みといった、確認しておきたい基礎があります。本記事は、それらを公的情報に沿って整理したものであり、特定の取引を勧めたり、避けるよう勧めたりするものではありません。

暗号資産は「法定通貨」ではなく価格が変動する、という前提のもとで、各制度の詳細や最新の動向は、金融庁・国税庁・JVCEA などの公的機関の公表情報や、各社の公式情報で確認していただくことを前提としています。最終的な口座開設や取引の判断は、読者ご自身が公式情報を確認したうえで行ってください。

暗号資産取引のリスクと税金については、次の記事で別に整理しています。

参照した公式情報

本記事は2026年6月時点で確認した公式情報をもとに作成しています。暗号資産に関する制度は改正されることがあるため、最新の情報は金融庁・国税庁・JVCEA などの公式情報、および各社の公式説明で確認してください。

最新の取引条件・手数料・キャンペーン等は、必ず各社公式サイトでご確認ください。本ページの情報は作成時点のものです。