フィボナッチゾーン/コンフルエンス実践ガイド|重なり・帯幅・失敗例を整理

フィボナッチの水準を複数引くと、線が近くに集まる場所ができます。これを一本の線ではなく「帯」として扱う考え方と、そのときに何を先に決めておく必要があるのかを整理します。

本記事は、リトレースメントとエクステンションの計算式とアンカーの記録方法を理解していることを前提にします。式そのものの説明は繰り返しません(該当記事は末尾の「次に読む記事」に挙げています)。

本記事は一般的な情報の整理であり、特定の銘柄や取引を勧めるものではありません。数値はすべて説明のために作った合成値で、実在の相場ではありません。最終的な判断は、読者ご自身が必要な情報を確認したうえで行ってください。

フィボナッチゾーンとコンフルエンスの意味

本記事での「ゾーン」の定義

本記事における「ゾーン」は、複数の明示した計算水準を含む価格帯を指す、本記事上の操作的な定義です。標準化された指標名でも、特定のツールの機能名でもありません。他の資料で同じ語が別の意味で使われている場合があります。

コンフルエンス

「コンフルエンス」は、複数の根拠が同じ価格の近くに集まっている状態を指す言い方です。集まっていること自体は観察できますが、それが確からしさを高めるかどうかは別の問題です。この点は後の節で扱います。

線ではなく帯として記録する理由

計算で出る水準は、小数点以下まで一つの値に定まります。しかし実際にその数値ちょうどで何かが起きるとは限りません。帯として扱う理由は、主に次の2つです。

  1. 入力に幅があるため。高値・安値をどの時点で取るかで水準が動きます。前提となる値が動くなら、出力も幅を持って記録するほうが実態に合います
  2. 複数の水準が近接するため。別々のスイングから出た水準が近くに並んだとき、それらを個別の線として扱うより、範囲として扱うほうが記録が簡潔になります

ただし、帯にすると「当たった」と言える範囲が広がります。そのため、幅をどう決めたかを先に固定しておかないと、後からいくらでも都合よく解釈できてしまいます。

近い2水準を線ではなく上端と下端のある帯として記録する比較
到達・反応・不成立を同じ価格帯で比較します。画像を拡大して表示(原寸 1672×941)

複数スイングからゾーンを作る手順

手順自体は単純です。順序を守ることが要点です。

  1. 使うスイングを決め、それぞれ高値・安値・方向・時間足を記録する
  2. それぞれについて比率を指定し、水準を計算する
  3. 各水準に「どのスイングの、どの比率か」を紐づけたまま並べる
  4. 近接した水準を含む最小の範囲を取る
  5. 余白を足す場合は、足す前に規則を決める

4の「最小の範囲」とは、対象とする水準の最小値と最大値をそのまま端点にしたものです。ここには裁量が入りません。裁量が入るのは5です。

複数時間足を重ねるときの注意

時間足を変えると、見える高値・安値が変わります。そのため、

支持・抵抗候補との重なりを分類する

フィボナッチ水準以外の要素を重ねる場合、要素ごとに入力が何かを分けて書きます。

要素主な入力裁量の入り方
リトレースメント水準選んだ高値・安値・比率・方向アンカーの選択
エクステンション水準A / B / C の3点・比率点の選択と方式の選択
過去に反発した価格帯目視で選んだ過去の値動きどの反発を採るかの選択
区切りのよい価格価格の桁ほぼ入らない

「候補水準」「観察水準」と書き、「支持線」「抵抗線」と断定しないでください。確定した事実ではなく、観察の対象として選んだ位置だからです。

ゾーン幅を事前に決める

幅の決め方は、計算を始める前に一つ選んで固定します。

どれを選んでも構いませんが、結果を見てから広げたり狭めたりしないことが要点です。触れなかったから広げる、という調整をすると、その帯はもう観察の道具として機能しません。

合成価格で計算例を確認する

以下はすべて合成値です。実在の相場ではありません。

最小値幅・価格幅・比率幅・変動幅でゾーン幅を事前固定する4方式
ゾーン幅は観察前に一つの規則へ固定します。画像を拡大して表示(原寸 1672×941)

2つのスイングから水準を出す

スイング安値高値値幅 D比率計算水準
A1001606061.8%160 − 0.618 × 60122.92
B901455538.2%145 − 0.382 × 55123.99

最小の帯

下端 = 122.92
上端 = 123.99
幅   = 123.99 − 122.92 = 1.07

この [122.92, 123.99] が、余白を足していない最小の帯です。幅の1.07は計算の結果であり、決めた値ではありません。

スイングAの61.8パーセント押し122.92を下端、スイングBの38.2パーセント押し123.99を上端とする幅1.07の帯を拡大して示し、各水準に元のスイングと比率が紐づいていることを示す模式図
別々のスイングから出た2水準が作る最小の帯

成立例と不成立例を同じ条件で比べる

例を見る前に、成立・不成立を分ける判定を一つだけ決めます。判定が複数あると、どれを見るかを後から選べてしまうためです。

帯 = [122.92, 123.99]

判定P(これ一つで成立・不成立を分ける)
  「安値が帯の上端 123.99 以下」 かつ 「終値が帯の上端 123.99 以上」
  → 両方を満たせば成立、いずれかを満たさなければ不成立

前半は帯に到達したこと、後半は帯より上で期間を終えたことを表します。この一つの判定を、2つの合成経路に同じように当てます。

経路の要約安値 ≤ 123.99終値 ≥ 123.99判定P
例1帯の中まで下げ、その後上へ戻った満たす満たす成立
例2帯を通過して下へ抜けた満たす満たさない不成立

2つの例は、前半(帯に到達した)では同じです。分かれるのは後半だけです。つまり「帯に触れたかどうか」と「その後どちらで終えたか」は別の事柄で、判定Pは後者まで含めて一つの条件にしています。

⚠ 判定Pは、この記事で観察の例を示すために決めた条件です。これが適切な判定であるとか、この条件を使うべきだという意味ではありません。要点は、条件を先に一つ決めて、両方の例に同じものを当てるという手順のほうにあります。

上部に帯122.92から123.99と単一の判定Pすなわち安値が123.99以下かつ終値が123.99以上という条件を示し、左に安値と終値の両方が条件を満たして成立となる経路、右に安値は満たすが終値が帯の下で不成立となる経路を並べ、同じ判定を両方へ当てていることを示す模式図
判定を一つだけ先に決め、同じものを両方の例に当てる

⚠ この2例は合成した架空の経路であり、標本ではありません。ここから勝率、優位性、期待できる収益といったものを導くことはできません。2つの例をいくつ並べても同じです。

エントリー・無効化・利幅の境界を算数として確認する

用語の意味と距離の測り方だけを確認します。以下は算術の例であり、価格を設定すべきという意味ではありません。

合成値として、観察価格を124.00、無効化の境界を121.50、比較のための水準を129.00とします。

下方の幅 = 124.00 − 121.50 = 2.50
上方の幅 = 129.00 − 124.00 = 5.00
比       = 5.00 ÷ 2.50 = 2.00   (1 : 2)

この計算が示すのは距離の比だけです。それぞれの位置に到達する見込みや、その比で取引を繰り返した場合の結果については、何も示していません。比が大きいことは、望ましさを意味しません。

同じ判定条件を成立例と不成立例へ適用する比較
成立例と不成立例を同じ規則で比べます。画像を拡大して表示(原寸 1672×941)

コンフルエンス要素は独立とは限らない

これが本記事で最も重要な点です。

「4つの根拠が重なった」と言うとき、その4つが別々の情報から出ているとは限りません。フィボナッチ水準は、選んだ高値と安値から派生します。同じ高値・安値を使って比率を変えただけの水準を別々の根拠として数えると、同じ情報を何度も数えていることになります。

具体的に、入力を書き出して確かめます。

要素入力
A 61.8% 押し122.92高値 160.00・安値 100.00(スイングA)
C 50% 押し130.00高値 160.00・安値 100.00(スイングA、Aと同一)
B 38.2% 押し123.99高値 145.00・安値 90.00(スイングB)
D 過去に反発した価格帯安値100.00 の近傍を目視で選んだもの
高値160、安値100、高値145、安値90の4入力から4要素が派生する依存関係図。要素Aの122.92と要素Cの130.00は高値160と安値100を完全に共有し、要素Bの123.99は高値145と安値90という別の組から算出され、要素Dは安値100の近傍を目視で選んだものであることを矢印で示す
どの要素が入力を共有し、どの要素が共有していないかを分ける

確認のしかたは単純です。各要素について「何を入力にしたか」を書き出し、同じ入力が複数の要素に現れていないかを見ます。現れていれば、その要素どうしは独立ではありません。

上の例では、4要素のうち少なくとも A と C が重複しています。「4つ重なった」ことが「独立した根拠が4つある」ことにはなりません。

なお、ここで述べているのは数え方の重複についてであり、各要素の有効性や的中率について何かを主張するものではありません。独立であっても有効とは限らず、独立でなくても無意味とは限りません。

TradingViewで確認できる操作範囲

以下は、提供元が公開している公式ヘルプで確認できる範囲の説明です。画面の名称・配置・初期値は変更されることがあるため、実際の画面でご確認ください。本記事は特定のツールの利用を勧めるものではありません。

公式ヘルプで説明されている範囲では、次のような操作が挙げられます。

複数のスイングを重ねる場合も、上記の範囲を組み合わせることになります。「ゾーン」という名前の専用機能があるかどうかは、ここでは述べません。利用中の画面と公式ヘルプでご確認ください。参照したヘルプページは記事末尾に掲げています。

限界と誤用

よくある確認事項

フィボナッチゾーンとは何ですか

本記事では、複数の明示した計算水準を含む価格帯を指す操作的な定義として使っています。標準化された指標名ではありません。

帯の幅はどう決めればよいですか

最小範囲のみとするか、価格・比率・変動幅の指標などの規則で決めます。どれを選ぶかより、計算の前に決めて、結果を見てから変えないことが重要です。

線が何本重なれば信頼できますか

本数から信頼度を導くことはできません。重なった要素が同じ入力から派生している場合、本数は同じ情報の重複を数えているだけになります。

コンフルエンスがあれば反転しやすいですか

本記事はその主張をしません。重なりは観察できますが、そこから反転の確からしさを導く根拠を本記事は示していません。

成立例と不成立例はどう比べますか

例を見る前に判定の定義を書き出し、同じ定義を両方に当てます。例を見てから定義を決めると、比較になりません。

1:2という比は良い数字ですか

距離の比を計算しただけで、望ましさを示すものではありません。到達の見込みについては何も示していません。

複数の時間足を重ねるべきですか

本記事は「重ねるべき」とも「重ねるべきでない」とも述べません。重ねる場合は、時間足ごとに入力を分けて記録し、独立性を過大に評価しないようにします。

まとめ

本記事は一般的な情報の整理です。特定の銘柄や取引を勧めるものではなく、個別の状況に応じた助言でもありません。最終的な判断はご自身で行ってください。

参照した公式情報

本記事の数値はすべて合成値であり、実在の相場ではありません。

参照した提供元ヘルプ(製品仕様)

以下は、画面の機能・操作の説明として参照した提供元のヘルプページです。金融事実の根拠には用いていません。製品仕様は変更されることがあります。

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