ピボットポイント完全ガイド|6方式の計算式とTradingView設定を比較

ピボットポイントは、前の期間のデータから、当期間の基準となる水準を機械的に算出するものです。フィボナッチの描画と違い、どこを起点にするかを人が選びません。そのぶん、方式・期間・取引時間の定義・データ提供元といった条件の違いが、そのまま数値の違いになって現れます。

この記事では、6つの方式の計算式を並べ、同一の合成データを用いた計算結果を比較します。

本記事は一般的な情報の整理であり、特定の銘柄や取引を勧めるものではありません。数値はすべて説明のために作った合成値で、実在の相場ではありません。最終的な判断は、読者ご自身が必要な情報を確認したうえで行ってください。

ピボットポイントとは

前の期間の高値・安値・終値(方式によっては始値も)から、P(ピボット)と、その上下に並ぶ R1R3(上側)、S1S3(下側)を算出します。

左に前期間の高値110、終値106、始値104、安値100を確定値として示し、右に当期間のP、R1、R2、S1、S2が期間開始時点で決まっていることを示し、両者を方式ごとの式が結ぶ構成図
前期間の確定値から、当期間の基準水準を算出する

要点は、期間が始まる時点で水準がすでに決まっていることです(後述するWoodie方式だけは当期間の始値も使います)。この点が、値動きを見てから引くフィボナッチの描画とは異なります。

計算に使う前期間データと基準期間

必要な入力は方式によって異なります。

記号意味
H前期間の高値
L前期間の安値
C前期間の終値
O前期間の始値(DM方式の分岐で使用)
O_current当期間の始値(Woodie方式で使用)

基準期間は日足・週足・月足などから選びます。日足を基準にすれば毎営業日、週足を基準にすれば週ごとに水準が更新されます。

前期間の高値安値終値始値と日足・週足・月足の基準期間
チャートの表示時間足と、計算に使う基準期間は別です。画像を拡大して表示(原寸 1672×941)

Traditionalの計算式

P  = (H + L + C) ÷ 3
R1 = P × 2 − L
S1 = P × 2 − H
R2 = P + (H − L)
S2 = P − (H − L)
R3 = P × 2 + (H − 2L)
S3 = P × 2 − (2H − L)

R3 と S3 の式が、次に挙げる Classic と異なります。同じ「ピボット」でも、この2方式は R3 / S3 だけが違います。

Fibonacciの計算式

P は Traditional と同じで、そこから前期間の値幅に比率を掛けて段を作ります。

P  = (H + L + C) ÷ 3
R1 = P + 0.382 × (H − L)
S1 = P − 0.382 × (H − L)
R2 = P + 0.618 × (H − L)
S2 = P − 0.618 × (H − L)
R3 = P + 1.000 × (H − L)
S3 = P − 1.000 × (H − L)

比率は 0.382 / 0.618 / 1.000 で、フィボナッチ描画で使う比率と同じ数値です。ただし掛ける対象が違います。描画では選んだスイングの値幅、ここでは前期間の値幅です。

Woodieの計算式

P の算出に当期間の始値を使う点が特徴です。

P  = (H + L + 2 × O_current) ÷ 4
R1 = P × 2 − L
S1 = P × 2 − H
R2 = P + (H − L)
S2 = P − (H − L)
R3 = H + 2 × (P − L)
S3 = L − 2 × (H − P)

当期間の始値が入るため、期間が始まるまで値が確定しません。他の方式と同じ感覚で「前日のうちに分かる」と扱うと食い違います。

Classicの計算式

PR1S1R2S2 は Traditional と同じで、R3 / S3 の作り方だけが違います。

P  = (H + L + C) ÷ 3
R1 = P × 2 − L
S1 = P × 2 − H
R2 = P + (H − L)
S2 = P − (H − L)
R3 = P + 2 × (H − L)
S3 = P − 2 × (H − L)

DMの計算式

DM(DeMark)方式は、前期間の始値と終値の関係で計算が分岐します。

C < O のとき   X = H + 2L + C
C > O のとき   X = 2H + L + C
C = O のとき   X = H + L + 2C

P  = X ÷ 4
R1 = X ÷ 2 − L
S1 = X ÷ 2 − H

扱う段は P、R1、S1 の1段のみです。R2 / R3 / S2 / S3 に相当する水準はありません。他方式と同じ表に並べるときは、この点に注意してください。

Camarillaの計算式

前期間の終値を基準に、値幅へ係数を掛けて段を作ります。

P  = (H + L + C) ÷ 3
R1 = C + 1.1 × (H − L) ÷ 12
S1 = C − 1.1 × (H − L) ÷ 12
R2 = C + 1.1 × (H − L) ÷ 6
S2 = C − 1.1 × (H − L) ÷ 6
R3 = C + 1.1 × (H − L) ÷ 4
S3 = C − 1.1 × (H − L) ÷ 4

分母が 12 → 6 → 4 と変わるため、段の間隔が他方式より狭くなります。

6方式を同じ合成OHLCで計算して比べる

以下はすべて合成値です。実在の相場ではありません。

前期間   H = 110、L = 100、C = 106、O = 104   (値幅 H − L = 10)
当期間   O_current = 107

DM方式は C(106)> O(104) なので、X = 2H + L + C = 220 + 100 + 106 = 426 の分岐を使います。

方式PR1 / S1R2 / S2R3 / S3
Traditional105.33110.67 / 100.67115.33 / 95.33120.67 / 90.67
Fibonacci105.33109.15 / 101.51111.51 / 99.15115.33 / 95.33
Woodie106.00112.00 / 102.00116.00 / 96.00122.00 / 92.00
Classic105.33110.67 / 100.67115.33 / 95.33125.33 / 85.33
DM106.50113.00 / 103.00
Camarilla105.33106.92 / 105.08107.83 / 104.17108.75 / 103.25

表は小数第2位までの表示です。丸めは表示のときにだけ行い、計算の途中では丸めていません。

表から読み取れること

共通の価格軸上にTraditional、Fibonacci、Woodie、Classic、DM、Camarillaの6方式の水準を行ごとに並べ、Camarillaが103.25から108.75の範囲に密集しClassicが85.33から125.33まで広がることを示す比較図
同じ入力でも、方式によって水準の広がり方が違う

どの方式が優れているかを示す表ではありません。同じ入力に対して、段の間隔と広がりが違うことを示しています。

日足・週足・月足とsession/timezoneの差

同じ方式を選んでも、次の要素が違えば入力となる OHLC が変わり、結果も変わります。

  1. 基準期間:日足・週足・月足のどれを前期間とするか
  2. 取引時間の定義:セッションの開始・終了をどこに置くか。時間外の値動きを含めるかどうかで高値・安値が変わりえます
  3. 表示タイムゾーン:日付の区切りが動けば、「前日」の範囲そのものが変わります
  4. データ提供元:同じ銘柄でも、提供元によって記録される OHLC が一致しないことがあります
方式を選ぶという起点から、基準期間、取引時間の定義、表示タイムゾーン、データ提供元の4分岐を経て前期間のOHLCが決まり、そこからPとRとSの値が出る流れを矢印でたどる分岐図
式が同じでも、入力の決め方が4か所で分岐する

別の画面と数値が合わないときは、まず方式ではなく、この4点を突き合わせてください。方式名が同じでも、条件が違えば一致しません。

日足・週足・月足とセッション・タイムゾーンがOHLCを変える構造
数値が合わない場合は、方式より先に期間と区切りを確認します。画像を拡大して表示(原寸 1672×941)

TradingViewの設定とdaily-based values

以下は、提供元が公開している公式ヘルプで確認できる範囲の説明です。画面の名称・配置・初期値は変更されることがあるため、実際の画面でご確認ください。本記事は特定のツールの利用を勧めるものではありません。

公式ヘルプで説明されている範囲では、次のような設定項目が挙げられます。

数値が想定と違う場合、まずこれらの設定と、前述の取引時間・タイムゾーンを確認することになります。ここに書いていない挙動を推測で補わず、利用中の画面と公式ヘルプで確認してください。参照したヘルプページは記事末尾に掲げています。

TradingViewの方式・基準期間・表示本数・daily-based valuesの確認模式図
実画面の再現ではなく、確認箇所を単純化した模式図です。画像を拡大して表示(原寸 1672×941)

フィボナッチ描画との違い

観点ピボットポイントフィボナッチ描画
主な入力前期間の OHLC人が選んだ高値・安値(3点の場合はさらに1点)
起点の決まり方方式が決める利用者が選ぶ
更新のタイミング基準期間ごとに自動描き直したとき
同じ条件での再現性条件を揃えれば一致するアンカーの記録がないと一致しない
主な差異の原因期間・session・timezone・データ源アンカー・方向・方式・価格軸

優劣の比較ではありません。依存する条件が違う、というだけです。

どちらも条件に依存しない、ということはありません。依存する条件の種類が違うだけで、条件を記録しなければ再現できない点は共通です。フィボナッチ描画の側で何が値を変えるかは、本記事末尾に挙げた関連記事で扱っています。

複数のフィボナッチ水準を帯として扱う場合の注意点は、末尾に挙げた関連記事で整理しています。

限界と誤用

ピボット水準の反転非保証・線数・方式固定・時刻差など6つの限界
ピボットは観察水準であり、反転や利益を保証しません。画像を拡大して表示(原寸 1672×941)

よくある確認事項

ピボットポイントとは何ですか

前の期間の高値・安値・終値(方式により始値も)から、当期間の基準となる水準を算出したものです。期間が始まる時点で水準が決まります。

どの方式を使えばよいですか

本記事は特定の方式を勧めません。段の間隔と広がり方が違うため、何を観察したいかによって選び、選んだ方式を後から変えないことが確認しやすさにつながります。

なぜ他のサイトと数値が違うのですか

方式、基準期間、取引時間の定義、表示タイムゾーン、データ提供元のいずれかが違う可能性があります。まず条件を揃えて比較してください。

Traditional と Classic は何が違いますか

合成例では、P、R1 / S1、R2 / S2 は同じで、R3 / S3 だけが違います。120.67 / 90.67 と 125.33 / 85.33 です。

Woodie だけ P が違うのはなぜですか

Woodie は P = (H + L + 2 × 当期間の始値) ÷ 4 として、当期間の始値を入力に含めるためです。合成例では106.00になります。

DM に R2 や S3 がないのはなぜですか

DM 方式が定義しているのは P、R1、S1 の1段のみだからです。他方式と同じ段数があるものとして扱わないでください。

Camarilla の水準が狭いのはなぜですか

値幅を12、6、4で割った値に1.1を掛けて段を作るため、他方式より間隔が狭くなります。合成例では R3 でも108.75です。

この水準で反転しますか

分かりません。計算で出るのは位置だけで、そこで何が起こるかは示されません。

まとめ

本記事は一般的な情報の整理です。特定の銘柄や取引を勧めるものではなく、個別の状況に応じた助言でもありません。最終的な判断はご自身で行ってください。

参照した公式情報

本記事の数値はすべて合成値であり、実在の相場ではありません。

参照した提供元ヘルプ(製品仕様)

以下は、方式の定義および画面の設定項目の説明として参照した提供元のヘルプページです。相場での有効性の根拠には用いていません。製品仕様は変更されることがあります。

次に読む記事

最新の取引条件・手数料・キャンペーン等は、必ず各社公式サイトでご確認ください。本ページの情報は作成時点のものです。