貸借対照表の読み方|現金・借入金・自己資本・財務安全性を確認する
貸借対照表を見ると、現金及び預金、売掛金、棚卸資産、有形固定資産、のれん、借入金、社債、利益剰余金など、多数の項目が並んでいます。
初心者が特に迷いやすいのは、総資産が大きい会社は安全なのか、現金が多ければ財務は健全なのか、借入金が多い会社は危険なのかという点です。
しかし、貸借対照表では、単に資産や負債の金額を見るだけでは十分ではありません。重要なのは、次の関係をつなげて読むことです。
- 企業がどのような資産へ資金を投じているか
- その資金を借入・社債・取引先・株主のどこから調達したか
- 資産がどのくらい早く現金へ変わるか
- 負債をいつ、どの通貨で、どの条件で返済する必要があるか
- 資産の帳簿価額を将来の利益や売却によって回収できるか
- 損失が生じた場合に自己資本でどこまで吸収できるか
たとえば、現金が100億円あっても、1年以内に返済する借入金が300億円あれば、短期的な資金繰りに注意が必要です。反対に、借入金が多くても、長期固定金利で調達し、安定した営業キャッシュフローを生む事業へ投資しているなら、直ちに危険とはいえません。
また、総資産が増えていても、その原因が回収の遅れた売掛金、売れ残った在庫、収益性の低い設備、買収によって生じた多額ののれんであれば、財務リスクが高まっている可能性があります。
貸借対照表を読むときは、次の順番で確認します。
- どの時点・どの範囲・どの会計基準の貸借対照表か確認する
- 総資産が何によって増減したか確認する
- 現金と1年以内に支払う負債を比較する
- 売上債権と棚卸資産が売上高以上の速度で増えていないか確認する
- 有形固定資産・無形固定資産・のれんの回収可能性を考える
- 短期借入金、長期借入金、社債、リース負債の返済条件を確認する
- 純資産のうち親会社株主に帰属する自己資本を確認する
- 流動比率、自己資本比率、D/Eレシオなどを計算する
- 損益計算書・キャッシュ・フロー計算書・財務注記と照合する
- 複数年、四半期、同業他社で比較する
本記事では、日本基準を採用する一般的な事業会社の連結貸借対照表を中心に、資産・負債・純資産の意味、各科目の分析方法、財務指標、数値例、危険信号、業種別の注意点、2027年4月以後に適用される新しいリース会計まで詳しく解説します。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の企業、銘柄、業種または取引を推奨するものではありません。会計処理や表示方法は、採用する会計基準、業種、契約条件、重要性などによって異なります。実際の投資判断では、最新の決算短信、有価証券報告書、財務諸表注記、適時開示を確認してください。
この記事の構成
- 貸借対照表とは
- 貸借対照表の全体構造
- 流動・固定の区分は「1年以内」だけで決まらない
- 最初の15分で貸借対照表を読む順番
- 資産の部の読み方
- 負債の部の読み方
- 純資産の部の読み方
- 財務安全性を測る主要指標
- 運転資本とキャッシュ・コンバージョン・サイクル
- 貸借対照表を損益計算書・キャッシュ・フロー計算書とつなげる
- 数値例で貸借対照表を分析する
- 貸借対照表で見落としたくない危険信号
- 業種によって貸借対照表の重点項目は異なる
- 日本基準とIFRSで貸借対照表を比較するときの注意点
- 貸借対照表を分析する実務手順
- 貸借対照表の確認チェックリスト
- 貸借対照表に関するよくある質問
- まとめ
貸借対照表とは
貸借対照表は、決算日などある一時点において、企業が保有する資産、返済・支払義務を負う負債、資産と負債の差額である純資産を示す財務諸表です。
英語ではBalance Sheetと呼ばれ、「B/S」と略されます。IFRSではStatement of Financial Position、日本語では財政状態計算書という名称が使われます。
貸借対照表は「一定時点」の残高を示す
損益計算書やキャッシュ・フロー計算書が一定期間の流れを示すのに対し、貸借対照表は決算日時点の残高を示します。
| 財務諸表 | 主に示すもの | 時間の捉え方 |
|---|---|---|
| 貸借対照表 | 資産、負債、純資産 | 決算日時点の残高 |
| 損益計算書 | 収益、費用、利益 | 一定期間の経営成績 |
| キャッシュ・フロー計算書 | 現金の収入と支出 | 一定期間の現金の流れ |
たとえば、2026年3月期の貸借対照表は、原則として2026年3月31日時点の財政状態を示します。翌日の4月1日に借入金を返済したり、大型買収を実行したりすれば、実際の財政状態はすでに変化しています。
そのため、貸借対照表を読むときは、基準日を必ず確認します。決算日後に公表された資金調達、M&A、自社株買い、配当、災害、不祥事などの適時開示も合わせて確認する必要があります。
基本式は「資産=負債+純資産」
貸借対照表は、次の関係で成り立ちます。
資産=負債+純資産
同じ内容を別の角度から表すと、次のようになります。
純資産=資産-負債
概念上、資産側は「調達した資金を何に使っているか」、負債・純資産側は「その資金をどこから調達したか」を示します。
| 区分 | 意味 | 代表例 |
|---|---|---|
| 資産 | 資金の運用先・経済的資源 | 現金、売掛金、在庫、設備、ソフトウェア、投資有価証券 |
| 負債 | 将来の支払・返済義務など | 買掛金、借入金、社債、リース負債、退職給付負債 |
| 純資産 | 資産と負債の差額 | 資本金、資本剰余金、利益剰余金、その他の包括利益累計額 |
たとえば、銀行から100億円を借りて設備を取得すると、資産側の設備が100億円増え、負債側の借入金も100億円増えます。総資産は増えますが、借入時点では純資産は増えません。
一方、利益を計上してその利益が社内に留保されれば、利益剰余金を通じて純資産が増えます。ただし、利益と現金は一致しないため、利益剰余金の増加額と現金の増加額が同じになるとは限りません。
貸借対照表が左右で一致する理由
企業の取引は、原則として複数の勘定科目へ同額を記録する複式簿記で処理されます。
たとえば、100万円の商品を掛けで仕入れた場合、棚卸資産が100万円増えると同時に、買掛金も100万円増えます。このように取引の両面を記録するため、資産合計と負債・純資産合計は一致します。
ただし、左右が一致していることは、企業が安全であることや会計上の見積りが正しいことを保証しません。資産の回収可能性が過大に見積もられていても、会計上の記録自体は左右で一致します。
貸借対照表は時価一覧表ではない
貸借対照表に記載された資産の帳簿価額は、必ずしも現在の売却価格や企業価値を示しません。
たとえば、次のような違いがあります。
- 長期間保有する土地の帳簿価額と現在の市場価格が異なる場合がある
- 工場設備は取得価額から減価償却累計額などを控除した金額で表示される
- 自社で築いたブランド、顧客基盤、組織能力などは通常そのまま資産計上されない
- 買収で取得したブランドや顧客関連資産は無形固定資産として計上される場合がある
- のれんは買収対価と識別可能な純資産などとの差額として生じる
- 売掛金は回収不能見込額を控除していても、将来の実際の回収額と一致するとは限らない
- 棚卸資産は売価ではなく、会計基準に従った帳簿価額で表示される
したがって、純資産が企業の清算価値や株主が受け取れる金額と一致するわけではありません。PBRが1倍未満でも、解散すれば必ず帳簿上の純資産を回収できるという意味ではありません。
連結貸借対照表を優先する
企業グループが連結財務諸表を作成している場合、投資家は原則として連結貸借対照表を優先して確認します。
連結貸借対照表は、親会社と連結子会社を一つの企業集団とみなし、グループ内の債権・債務や投資・資本などを相殺したうえで、企業グループ全体の財政状態を示します。
親会社単体の貸借対照表だけを見ると、次のような実態を見落とすことがあります。
- 子会社が多額の借入金を抱えている
- 子会社に売掛金や在庫が集中している
- 海外子会社で現金を保有している
- 買収によるのれんが連結上に計上されている
- 親会社が子会社株式を保有する持株会社である
ただし、次の確認では個別貸借対照表も重要です。
- 親会社単体の配当原資や分配可能額を考える
- 親会社単体の借入返済能力を確認する
- 子会社からの配当・資金移動への依存度を確認する
- 親会社が子会社債務を保証しているか確認する
- 子会社株式の減損リスクを確認する
連結と個別は、どちらか一方を選ぶのではなく、目的に応じて使い分けます。
貸借対照表の全体構造
日本基準を採用する一般的な企業の連結貸借対照表は、おおむね次の構造です。
資産の部
流動資産
現金及び預金
受取手形・売掛金・契約資産
有価証券
棚卸資産
その他
貸倒引当金
固定資産
有形固定資産
無形固定資産
投資その他の資産
繰延資産
資産合計
負債の部
流動負債
支払手形・買掛金
短期借入金
1年内返済予定の長期借入金・社債
契約負債・前受金
未払金・未払費用
引当金
固定負債
社債
長期借入金
リース負債
退職給付に係る負債
資産除去債務
繰延税金負債
負債合計
純資産の部
株主資本
資本金
資本剰余金
利益剰余金
自己株式
その他の包括利益累計額
株式引受権
新株予約権
非支配株主持分
純資産合計
負債純資産合計
実際の科目名や区分は、業種、取引内容、会計基準、重要性によって異なります。銀行、保険会社、証券会社などは、一般事業会社とは大きく異なる様式を使用します。
資産は流動資産と固定資産などに分かれる
連結貸借対照表の資産は、一般に次のように区分されます。
| 区分 | 主な内容 | 投資家の主な確認点 |
|---|---|---|
| 流動資産 | 現金、売上債権、棚卸資産など | 短期的な換金性、運転資金、回収リスク |
| 有形固定資産 | 建物、機械、土地、建設仮勘定など | 設備効率、老朽化、追加投資、減損 |
| 無形固定資産 | のれん、ソフトウェア、特許権など | 将来収益、償却、減損、買収依存 |
| 投資その他の資産 | 投資有価証券、長期貸付金、繰延税金資産など | 換金性、政策保有、回収可能性 |
| 繰延資産 | 一定の支出を期間配分する項目 | 内容、償却期間、重要性 |
総資産が同じ企業でも、現金中心なのか、在庫中心なのか、設備中心なのか、のれん中心なのかによってリスクは大きく異なります。
負債は流動負債と固定負債に分かれる
負債は、一般に流動負債と固定負債に区分されます。
| 区分 | 主な内容 | 投資家の主な確認点 |
|---|---|---|
| 流動負債 | 買掛金、短期借入金、1年内返済予定債務など | 近い将来の支払額、手元流動性、借換え |
| 固定負債 | 長期借入金、社債、退職給付負債など | 返済期限、金利、担保、財務制限条項 |
負債は、取引先から事実上無利息で調達する買掛金や前受金と、利息を負担する借入金・社債では性質が異なります。また、同じ借入金でも、短期変動金利と長期固定金利では金利上昇時の影響が異なります。
純資産は株主資本だけではない
純資産は、資産と負債の差額です。ただし、連結貸借対照表の純資産には、親会社の普通株主に帰属しない項目も含まれます。
| 区分 | 主な内容 | 親会社株主との関係 |
|---|---|---|
| 株主資本 | 資本金、資本剰余金、利益剰余金、自己株式 | 原則として親会社株主に帰属 |
| その他の包括利益累計額 | その他有価証券評価差額金、為替換算調整勘定など | 自己資本に含まれるが未実現項目を含む |
| 株式引受権・新株予約権 | 将来株式へ転換される可能性がある権利など | 現時点の普通株主資本とは異なる |
| 非支配株主持分 | 連結子会社の純資産のうち親会社以外に帰属する部分 | 親会社株主に帰属しない |
この違いは、自己資本比率、ROE、BPSなどを計算するときに重要です。
流動・固定の区分は「1年以内」だけで決まらない
一般事業会社では、資産・負債を流動と固定に分ける際、通常の営業循環に含まれるかという考え方と、決算日の翌日から1年以内に回収・支払が予定されるかという考え方が使われます。
正常な営業循環に含まれる項目
商品を仕入れ、販売し、代金を回収するまでの通常の営業循環に含まれる項目は、回収まで1年を超える場合でも流動項目に分類されることがあります。
代表例は次のとおりです。
- 商品・製品・仕掛品などの棚卸資産
- 通常の販売から生じた受取手形・売掛金
- 通常の仕入から生じた支払手形・買掛金
- 契約に基づく前受金・契約負債
大型建設、造船、不動産開発など、営業循環が1年を超える業種では、流動資産に長期の仕掛品や販売用不動産が含まれる場合があります。そのため、「流動資産だから1年以内に現金化できる」と機械的に判断してはいけません。
営業循環外の項目は1年を基準に区分する
営業循環に直接含まれない貸付金、借入金、社債などは、一般に決算日の翌日から1年以内に回収・返済予定かによって流動・固定へ区分されます。
たとえば、長期借入金のうち翌期に返済する部分は、固定負債ではなく「1年内返済予定の長期借入金」として流動負債へ振り替えられます。
この振替によって、借入金総額が変わらなくても流動負債が増え、流動比率が低下することがあります。決算時点の分類変化だけでなく、返済スケジュール全体を確認する必要があります。
金融機関には一般事業会社の見方をそのまま使わない
銀行では、預金が主な負債であり、貸出金や有価証券が主な資産です。保険会社では、保険契約に関する準備金が大きな負債になります。
一般事業会社で使う流動比率や在庫回転率を、そのまま金融機関へ適用しても有用な分析にはなりません。金融機関では、自己資本規制、流動性規制、信用コスト、貸倒引当金、金利リスク、保険負債など、業種固有の規制と指標を確認します。
最初の15分で貸借対照表を読む順番
貸借対照表を初めて開くときは、すべての科目を同じ深さで調べるのではなく、重要な変化とリスクを先に抽出します。
| 時間の目安 | 確認する内容 | 主な目的 |
|---|---|---|
| 0~1分 | 会社名、決算日、連結・個別、会計基準、表示単位 | 比較対象を誤らない |
| 1~3分 | 総資産・負債・純資産の増減 | 財政状態の全体変化をつかむ |
| 3~5分 | 現金、短期借入金、1年内返済予定債務 | 短期資金繰りを確認する |
| 5~7分 | 売上債権、契約資産、棚卸資産 | 運転資金と回収・滞留リスクを見る |
| 7~9分 | 有形固定資産、建設仮勘定 | 設備投資、老朽化、減損可能性を確認する |
| 9~11分 | のれん、無形固定資産、投資有価証券 | M&A、資産の質、評価変動を確認する |
| 11~13分 | 長期借入金、社債、リース負債、引当金 | 長期支払義務と返済条件を見る |
| 13~14分 | 株主資本、自己株式、その他の包括利益累計額、非支配株主持分 | 親会社株主に帰属する財務基盤を確認する |
| 14~15分 | 流動比率、自己資本比率、ネットD/Eなど | 重点調査項目を決める |
15分で投資判断を終えるのではありません。最初の確認では、次に読むべき注記や資料を特定することが目的です。
特に大きく増減した科目については、決算説明資料、財務諸表注記、キャッシュ・フロー計算書、企業結合、借入金、有価証券、棚卸資産、固定資産、税効果会計などの注記へ進みます。
決算短信や有価証券報告書全体をどの順番で確認するかは本記事の範囲を超えるため、ここでは貸借対照表の読み方に絞って扱います。
資産の部の読み方
資産は、企業が支配し、将来の収益獲得や費用削減などにつながると期待される経済的資源です。
ただし、貸借対照表に資産として計上されていることは、その金額を必ず回収できることを意味しません。売掛金は回収不能になることがあり、在庫は売れ残ることがあり、設備やのれんは将来の収益が不足すれば減損される可能性があります。
資産の分析では、次の3点を意識します。
- 換金性:いつ、どの程度の金額で現金へ変わるか
- 収益性:その資産がどの程度の利益やキャッシュフローを生むか
- 回収可能性:帳簿価額を販売・使用・売却によって回収できるか
現金及び預金
現金及び預金は、手元現金、普通預金、当座預金、定期預金などを含む科目です。企業の支払能力を確認するうえで重要ですが、残高が多いだけで財務が安全とは判断できません。
現金を見るときは、次を確認します。
- 前期末・前四半期末から増えたか減ったか
- 営業活動で増えたのか、借入や増資で増えたのか
- 1年以内に返済する有利子負債と比べて十分か
- 配当、自社株買い、設備投資、M&Aに使う予定があるか
- 担保差入れや引出制限のある預金が含まれていないか
- 海外子会社に偏在し、親会社が自由に使いにくくないか
- 顧客から預かった資金に対応する現金ではないか
- 季節性によって決算日に一時的に膨らんでいないか
現金が増えた理由をキャッシュ・フロー計算書で確認する
現金残高が100億円から200億円へ増えていても、増加理由によって評価は異なります。
| 現金増加の主因 | 一般的な見方 | 追加確認 |
|---|---|---|
| 本業の営業CF | 事業が現金を生み出した可能性 | 一時的な運転資金減少でないか |
| 借入・社債発行 | 資金調達による増加 | 返済期限、金利、使途 |
| 増資 | 株主からの資金調達 | 希薄化、資金使途、消化速度 |
| 資産・子会社売却 | 資産入替による増加 | 継続的な利益源を失っていないか |
| 設備投資の延期 | 支出を先送りした可能性 | 将来の競争力や更新投資への影響 |
現金は貸借対照表だけでなく、現金が増減した経路まで確認します。
ネットキャッシュ・ネットデット
財務余力を見るため、現金と有利子負債を差し引くことがあります。
ネットキャッシュ=現金及び現金同等物など-有利子負債
ネットデット=有利子負債-現金及び現金同等物など
ただし、どの金融資産・負債を含めるかに統一された定義はありません。
分析者によっては、現金及び預金だけでなく短期保有有価証券を含めたり、リース負債を有利子負債に含めたりします。企業が開示するネットキャッシュと情報サイトの数値が異なる場合は、計算範囲を確認します。
また、現金を借入金から単純に全額控除できるとは限りません。事業運営に最低限必要な現金、顧客預り金に対応する現金、引出制限付き預金などは、返済へ自由に使えない場合があります。
受取手形・売掛金・契約資産
受取手形や売掛金は、商品・製品・サービスを提供したものの、決算日時点でまだ回収していない代金です。企業によっては「営業債権」「売上債権」などとまとめて表示します。
売上債権が増えること自体は、必ずしも悪いことではありません。売上成長に伴って増えるのは自然です。しかし、売上高より速く増えている場合は、回収期間の長期化や売上計上の質を確認する必要があります。
売上債権の増加率を売上高と比較する
たとえば、売上高が前期比10%増加しているのに、売上債権が40%増加している場合、次の可能性があります。
- 大型案件が期末に集中した
- 顧客への支払条件を長期化した
- 回収遅延が増えた
- 海外売上や長期回収案件が増えた
- M&Aにより連結範囲が変わった
- 売上計上後の検収・請求・入金条件が複雑化した
- 為替換算で円換算残高が増えた
会社の説明、売上債権の年齢構成、貸倒引当金、営業キャッシュフローを確認します。
売上債権回転日数
売上債権が平均何日で回収されているかを概算する指標が、売上債権回転日数です。
売上債権回転日数=平均売上債権÷年間売上高×365日
平均売上債権は、簡便的に期首と期末の平均を使います。
平均売上債権=(期首売上債権+期末売上債権)÷2
期首売上債権120億円、期末150億円、年間売上高1,200億円なら、回転日数は約41.1日です。
(120億円+150億円)÷2÷1,200億円×365日≒41.1日
回転日数が長くなった場合は、季節性、売上構成、支払条件、回収遅延を確認します。売上高に消費税が含まれず、売上債権に含まれるなど、分子・分母の範囲が完全には一致しない場合があるため、絶対値より継続的な変化を重視します。
契約資産と売掛金の違い
契約資産は、顧客へ財・サービスを移転して収益を認識しているものの、請求する権利が時間の経過以外の条件にも依存している場合などに計上されます。
一方、売掛金などの債権は、原則として代金を受け取る権利が時間の経過だけを条件とする状態です。
契約資産が急増している場合は、次を確認します。
- どのような契約から生じているか
- 検収・マイルストーン・成果条件は何か
- 売掛金へ振り替わるまでの期間
- 過去に減額・取消し・回収不能が生じていないか
- 契約負債との関係
工事、システム開発、長期サービス契約などでは、契約資産が重要な分析項目になることがあります。
貸倒引当金
受取手形、売掛金、貸付金などの債権は、将来回収できないと見込まれる金額を貸倒引当金として控除して表示します。
貸倒引当金では、残高の多寡だけでなく次を確認します。
- 債権残高に対する引当率
- 貸倒引当金繰入額・戻入額
- 顧客構成や信用リスクの変化
- 特定顧客への集中
- 延滞債権や貸倒懸念債権の有無
- 景気悪化時の引当方針
債権が急増しているのに引当率が低下している場合、理由を注記で確認します。反対に、引当金の増加は将来損失への備えを厚くした結果であり、必ずしも経営悪化だけを意味しません。
債権流動化・ファクタリングにも注意する
企業が売上債権を金融機関などへ譲渡すると、貸借対照表上の債権が減り、営業キャッシュフローが改善して見える場合があります。
債権に対する支配が移転するなど会計上の要件を満たせば、債権の消滅が認識されます。ただし、買戻し義務、遡求義務、保証などが残っていれば、実質的なリスクが企業に残る場合があります。
売上債権が急減して営業CFが改善した場合は、債権譲渡、流動化、ファクタリング、サプライチェーンファイナンスなどの注記を確認します。
棚卸資産
棚卸資産には、商品、製品、半製品、仕掛品、原材料、貯蔵品、販売用不動産などが含まれます。
棚卸資産は将来販売して現金を得るための重要な資産ですが、売れなければ現金化できず、保管費用や値下げ、廃棄、陳腐化のリスクを負います。
棚卸資産の内訳を確認する
在庫増加の意味は、内訳によって異なります。
| 棚卸資産 | 増加の可能な理由 | 主なリスク |
|---|---|---|
| 商品・製品 | 需要増への備え、売れ残り | 値下げ、陳腐化、廃棄 |
| 仕掛品・半製品 | 生産増、工程長期化 | 完成遅延、採算悪化 |
| 原材料 | 増産、価格上昇、供給不安への備蓄 | 市況下落、品質劣化 |
| 販売用不動産 | 開発進行、用地取得 | 販売長期化、金利負担、評価損 |
| 貯蔵品 | 保守部品・消耗品の確保 | 過剰保有、使用見込み低下 |
経営者が「需要増に備えた戦略在庫」と説明していても、その後の販売数量、受注、在庫回転日数を確認します。
棚卸資産回転日数
在庫が売上原価の何日分に相当するかを概算します。
棚卸資産回転日数=平均棚卸資産÷年間売上原価×365日
期首棚卸資産130億円、期末180億円、年間売上原価720億円なら、回転日数は約78.6日です。
(130億円+180億円)÷2÷720億円×365日≒78.6日
回転日数が長期化している場合は、次を確認します。
- 販売数量が計画を下回っていないか
- 原材料価格上昇で金額だけ増えていないか
- 新製品発売前の積み増しか
- 供給網混乱への安全在庫か
- 不採算案件の仕掛品が増えていないか
- 海外在庫や販売用不動産が滞留していないか
- 評価損を十分に計上しているか
棚卸資産は収益性が低下すれば切り下げられる
通常の販売目的で保有する棚卸資産は、取得原価を基本としますが、期末の正味売却価額が取得原価を下回る場合には、原則として正味売却価額まで帳簿価額を切り下げます。
正味売却価額は、おおむね売価から追加製造原価や販売直接経費を控除した金額です。
評価損が計上されると利益が減少しますが、評価損を計上しなければ在庫の帳簿価額が過大になる可能性があります。在庫評価損の有無、計上区分、戻入れ方針などを注記で確認します。
在庫が少なすぎる場合にも注意する
在庫減少は必ずしも良い変化ではありません。
- 需要低迷を見込んで生産を減らした
- 原材料不足で生産できない
- 資金繰り悪化で仕入れを抑えた
- 在庫切れで販売機会を失っている
- 評価損・廃棄によって減少した
売上高、受注、稼働率、納期、営業キャッシュフローと組み合わせて判断します。
有価証券・短期貸付金・その他の流動資産
流動資産には、現金以外にも有価証券、短期貸付金、前払費用、未収入金、未収還付法人税等などが含まれる場合があります。
有価証券
短期保有の有価証券が現金に近い性質を持つ場合がありますが、価格変動、信用リスク、売却制限、満期までの期間を確認します。
「現金及び預金+有価証券」を手元流動性として扱う場合でも、すべてを額面どおり現金化できるとは限りません。
短期貸付金
子会社、関連会社、取引先、役員などへの貸付金が含まれる場合は、貸付先、金利、回収期限、担保、回収実績を確認します。
関係会社への貸付金は、グループ全体の連結貸借対照表では相殺されることがあります。そのため、親会社単体の資金繰りを見るときに重要になる場合があります。
前払費用・前渡金
保険料、賃料、サービス利用料などを先に支払った場合、将来期間に対応する部分が前払費用として計上されます。前渡金は、商品や設備などの引渡し前に支払った金額です。
これらは現金ではなく、将来のサービスや資産を受け取る権利です。取引先の信用力や契約取消時の回収可能性も考慮します。
「その他」が大きい場合
「その他の流動資産」が総資産や純資産に対して大きい場合は、注記や明細を確認します。
複数の小項目をまとめただけの場合もありますが、内容が見えにくいため、次のような項目が含まれていないか確認します。
- 関係会社債権
- デリバティブ資産
- 補助金・保険金の未収額
- 仮払金
- 消費税等の未収額
- M&A関連の一時項目
- 係争中の債権
有形固定資産
有形固定資産には、建物、構築物、機械装置、車両、工具器具備品、土地、建設仮勘定などが含まれます。
製造業、鉄道、電力、通信、不動産、ホテルなどでは、有形固定資産が総資産の大きな割合を占めます。
有形固定資産は取得価額そのものではない
減価償却の対象となる有形固定資産は、一般に取得原価から減価償却累計額や減損損失累計額などを控除した帳簿価額で表示されます。
設備の帳簿価額が小さいからといって、設備規模が小さいとは限りません。長年使用して減価償却が進んでいる場合があります。
注記や有形固定資産等明細表で次を確認します。
- 取得原価
- 減価償却累計額
- 当期取得額
- 当期減少額
- 減損損失
- 減価償却方法・耐用年数
- 担保提供資産
設備投資と減価償却を比較する
設備更新や成長投資の状況を見るため、設備投資額と減価償却費を比較します。
設備投資倍率=設備投資額÷減価償却費
設備投資額が減価償却費を上回る状態が続けば、生産能力拡大や設備更新を進めている可能性があります。下回る状態が続けば、資産規模が縮小している、投資を抑えている、アセットライト化している可能性があります。
ただし、設備価格、M&A、リース、事業構造、建設期間によって解釈は変わります。倍率だけで成長・衰退を判断しません。
固定資産回転率
固定資産を使ってどの程度の売上を生み出しているかを概算します。
固定資産回転率=売上高÷平均固定資産
回転率が低下した場合、先行投資直後で売上がまだ立っていないこともあれば、設備稼働率低下や過剰投資を示すこともあります。
同じ業種の企業や自社の過去と比較し、売上・利益・営業CFが設備増加に追いついているかを確認します。
土地
土地は通常、減価償却されません。そのため、長期間保有する土地の帳簿価額が市場価格と大きく異なる場合があります。
含み益がある土地は資産価値の裏付けになることがありますが、売却しなければ現金化できません。事業に不可欠な本社・工場用地なら、売却価値をそのまま企業価値へ加えることはできません。
一方、利用価値や市場価値が低下すれば減損リスクがあります。遊休土地、撤退拠点、採算の悪い店舗用地などを確認します。
建設仮勘定
建設仮勘定は、建設・製作中でまだ事業の用に供していない設備などへの支出です。完成後、建物や機械装置などへ振り替えられ、原則として減価償却が始まります。
建設仮勘定が増えている場合は、次を確認します。
- 新工場・データセンター・物流拠点などの計画
- 稼働開始予定
- 総投資額と追加支出
- 工期遅延・建設費高騰
- 稼働後の売上・利益計画
- 建設中止や設計変更
- 資金調達方法
長期間にわたり建設仮勘定が減らず、稼働時期が繰り返し延期されている場合は、投資回収や減損のリスクを確認します。
固定資産の減損
固定資産から得られる将来キャッシュフローが低下し、帳簿価額を回収できない可能性が高まった場合、減損損失が計上されることがあります。
減損の兆候には、継続的な営業赤字、事業環境の著しい悪化、用途変更、遊休化、市場価格の著しい下落などがあります。
減損損失が発生した場合は、金額だけでなく次を確認します。
- 対象となった事業・店舗・工場
- 減損の原因
- 将来キャッシュフローの前提
- 回収可能価額の算定方法
- 減損後も事業を継続するか
- 同様の資産が他にも残っていないか
- 経営計画のどの前提が外れたか
減損は非現金費用である場合が多いものの、過去の投資を将来利益で回収できないことを示すため、単に「一時的な特別損失」として除外しないようにします。
無形固定資産
無形固定資産には、ソフトウェア、特許権、商標権、顧客関連資産、技術資産、契約関連資産、のれんなどが含まれます。
物理的な形がないため、帳簿価額の回収可能性を外部から確認しにくい場合があります。
ソフトウェア
自社利用ソフトウェアは、将来の収益獲得または費用削減が確実と認められる場合などに、無形固定資産として計上されることがあります。
ソフトウェア資産では、次を確認します。
- 自社利用か市場販売目的か
- 資産計上額と当期償却額
- 見込利用期間・販売期間
- 開発中ソフトウェアの金額
- システム刷新の完成時期
- 稼働遅延や追加開発費
- 旧システムの除却・減損
- 資産計上と費用処理の方針
ソフトウェア資産が急増すると、当期の費用が小さく見える一方、将来の償却費や減損リスクが増えます。研究開発費やシステム費用のうち、何を費用処理し、何を資産計上したかを確認します。
のれん
のれんは、企業・事業を買収したときの取得原価が、受け入れた識別可能な資産と引き受けた負債の純額などを上回る場合に生じます。
一般に、買収先のブランド、顧客基盤、技術、人材、シナジーなど、個別に識別して資産計上しきれない超過収益力を反映します。
日本基準では、のれんを資産計上し、20年以内の効果が及ぶ期間にわたり規則的に償却します。さらに、減損の兆候がある場合には減損判定の対象になります。
IFRSでは、のれんを規則的に償却せず、少なくとも毎年の減損テストなどを行います。この違いにより、日本基準企業とIFRS企業では、のれん残高、営業利益、減損損失の出方が異なります。
のれんを見るときは、次を確認します。
- どの買収から生じたのか
- 買収対価と取得資産・負債の内訳
- 残存償却期間
- のれん償却費
- 買収時に想定した売上・利益・シナジー
- 買収後の実績と計画の差
- 減損テストの前提
- 同じ経営者が繰り返し高値買収していないか
のれんの大きさは自己資本と比べて確認する
のれんの金額だけを見ても大きさは判断できないため、自己資本と比べて確認します。計算方法と数値例は「財務安全性を測る主要指標」の「のれん自己資本比率」で扱います。
のれんだけでなく、顧客関連資産、商標権、技術資産など買収由来の無形資産も合わせて確認します。
投資有価証券
投資その他の資産には、長期保有の株式や債券などが投資有価証券として計上されます。
上場株式を政策保有している企業では、株価上昇による評価差額が純資産を押し上げている場合があります。反対に、株価下落によって純資産が減少することもあります。
確認したい項目は次のとおりです。
- 上場株式・非上場株式・債券の内訳
- 保有目的
- 時価と帳簿価額
- 含み益・含み損
- 政策保有株式の縮減方針
- 受取配当金
- 売却益への依存
- 担保差入れの有無
- 発行体・業種への集中
政策保有株式の含み益が大きい企業では、自己資本比率が高く見えても、市場下落時にその他有価証券評価差額金が減少する可能性があります。
関係会社株式・持分法投資
連結貸借対照表では連結子会社株式は相殺されますが、非連結子会社や関連会社への投資、持分法で評価される投資が残る場合があります。
投資先の業績悪化、配当停止、減損、追加支援の必要性などを確認します。持分法投資利益が大きい企業では、貸借対照表上の投資残高と損益計算書の持分法投資損益を組み合わせて読みます。
長期貸付金・差入保証金
長期貸付金は、関係会社、取引先、役員などへの長期の貸付です。差入保証金には、店舗・事務所の賃貸借契約に伴う敷金・保証金などが含まれます。
これらは帳簿上の資産でも、現金化まで時間がかかる場合があります。相手先の信用力、返還条件、契約期間、貸倒引当金を確認します。
小売、外食、学習塾、サービス業など、賃借店舗を多く持つ企業では、差入保証金が大きくなることがあります。
繰延税金資産
繰延税金資産は、会計上の資産・負債と税務上の金額の差異や税務上の繰越欠損金などにより、将来の税負担を軽減できると見込まれる範囲で計上されます。
繰延税金資産は現金そのものではなく、将来十分な課税所得が生じることなどを前提とする資産です。
確認したい項目は次のとおりです。
- 発生原因別の内訳
- 税務上の繰越欠損金
- 評価性引当額
- 回収可能と判断した理由
- 将来課税所得の見積り
- 回収見込期間
- 前期からの増減理由
業績悪化によって将来の課税所得が不足すると判断されれば、繰延税金資産を取り崩し、法人税等調整額を通じて利益と純資産が減る場合があります。
繰延税金資産が自己資本に対して大きい企業では、その全額を現金同等の安全資産と考えないようにします。
退職給付に係る資産
年金資産が退職給付債務を上回るなど一定の場合、退職給付に係る資産が計上されることがあります。
ただし、年金資産は退職給付のために法的に分離され、原則として企業が自由に事業資金へ使える現金ではありません。
年金資産の構成、期待運用収益率、割引率、数理計算上の差異、積立状況を退職給付注記で確認します。
資産の「その他」と相殺表示を見落とさない
貸借対照表本表は重要な科目を要約して表示するため、詳細は注記にあります。
特に次の項目は、本表だけでは実態を把握しにくい場合があります。
- デリバティブ資産・負債の純額表示
- 繰延税金資産・負債の相殺
- 貸倒引当金控除後の債権
- 減価償却累計額控除後の固定資産
- 担保差入資産
- 使用制限付き預金
- 連結会社間取引の相殺
- 資産流動化後に残る関与
金額が大きい、前期から急変した、内容が曖昧という科目は、必ず注記・明細へ進みます。
負債の部の読み方
負債は、過去の取引や事象によって生じた、将来の資金・財・サービスの引渡しなどに関する義務です。
負債を見るときは、単に総額を確認するのではなく、次の4点に分けます。
- 支払時期:いつ支払う必要があるか
- 資金コスト:利息や手数料をどの程度負担するか
- 条件:固定・変動金利、通貨、担保、財務制限条項はどうなっているか
- 返済原資:営業キャッシュフロー、資産売却、借換え、増資の何で支払うか
買掛金や契約負債のように営業活動から生じる負債と、借入金・社債のような有利子負債では、経済的な意味が異なります。
支払手形・買掛金・電子記録債務
支払手形、買掛金、電子記録債務は、原材料や商品などを仕入れたものの、決算日時点でまだ支払っていない代金です。
通常は利息を明示的に支払わない営業負債であり、仕入先から支払猶予を得ているため、企業にとって運転資金の調達源になります。
仕入債務回転日数
仕入債務を平均何日で支払っているかを概算します。
仕入債務回転日数=平均仕入債務÷年間売上原価×365日
期首仕入債務110億円、期末140億円、年間売上原価720億円なら、回転日数は約63.4日です。
(110億円+140億円)÷2÷720億円×365日≒63.4日
回転日数が長くなった場合は、次の二つを区別します。
- 仕入先との交渉により有利な支払条件を得た
- 資金繰り悪化によって支払が遅れている
現金、短期借入金、営業キャッシュフロー、支払遅延の説明、仕入先との関係を確認します。
サプライヤーファイナンス
企業が金融機関を介して仕入先への支払を早期化し、自社の支払期限を延ばす仕組みを利用することがあります。
形式上は仕入債務に見えても、支払期間、金利、金融機関の関与などによっては、実質的に資金調達に近い性質を持つ場合があります。
仕入債務が急増し、営業キャッシュフローが大きく改善した場合は、支払条件の変更やサプライヤーファイナンスの有無を確認します。
未払金・未払費用
未払金は、設備購入、広告、外注など、通常の仕入取引以外で発生した未払額です。未払費用は、利息、給与、賞与、賃料など、すでに費用が発生しているもののまだ支払っていない金額です。
未払金・未払費用の増加は、事業拡大や費用計上時期による場合もあれば、支払の先送りによる場合もあります。
次を確認します。
- 何に対する未払額か
- 毎期末に同程度発生する季節項目か
- 設備投資に関する未払金か
- 人件費、賞与、広告費などの増加か
- 支払期限を過ぎていないか
- 翌期に多額の現金支出が生じるか
契約負債・前受金・前受収益
契約負債や前受金は、顧客から対価を先に受け取ったものの、決算日時点で商品・サービスの提供義務が残っている場合などに計上されます。
サブスクリプション、保守契約、ゲーム、教育、旅行、建設、不動産などでは、重要な項目になることがあります。
契約負債には、次の二面性があります。
- 顧客から先に現金を受け取るため、運転資金面では有利
- 将来、財・サービスを提供する義務が残る
契約負債が増えている場合、受注や将来売上の増加を示すことがあります。ただし、解約・返金義務、サービス提供コスト、契約期間を確認します。
契約負債を有利子負債と同じように扱う必要はありませんが、全額が自由に使える利益でもありません。
引当金
引当金は、将来の特定の費用・損失で、発生原因が当期以前にあり、発生可能性が高く、金額を合理的に見積もれる場合などに計上されます。
代表例は次のとおりです。
- 賞与引当金
- 製品保証引当金
- 返品調整・返金関連の負債
- 役員退職慰労引当金
- 工事損失引当金
- ポイント引当金
- 訴訟損失引当金
- 事業整理損失引当金
引当金を見るときは、残高の増減だけでなく、当期繰入額、取崩額、実際の支払額、見積り変更を確認します。
引当金を積み増した期は利益が減り、取り崩した期は利益が増える場合があります。利益推移を分析するときは、引当金の変動を分けて考えます。
短期借入金
短期借入金は、一般に決算日後1年以内に返済予定の借入金です。運転資金、つなぎ資金、季節資金、買収資金などに使われます。
短期借入金が多い企業では、次を確認します。
- 手元現金との比較
- 営業キャッシュフローとの比較
- 借入先の数と集中度
- コミットメントライン・当座貸越枠
- 借換え実績
- 固定金利・変動金利
- 担保・保証
- 外貨建て借入
- 使途
短期借入金が毎年同程度残っている場合、形式上は短期でも実質的に継続借入となっていることがあります。金融機関との関係が安定していても、信用環境悪化時に借換え条件が厳しくなるリスクがあります。
1年内返済予定の長期借入金・社債
長期借入金や社債のうち、決算日後1年以内に返済・償還する部分は流動負債へ振り替えられます。
この項目が急増した場合、翌期に大きな返済期限が集中している可能性があります。
確認する項目は次のとおりです。
- 満期までの月数
- 返済原資
- 借換え予定
- 借換え契約が決算日後に成立したか
- 手元流動性と未使用融資枠
- 財務制限条項への抵触可能性
- 格付け・信用スプレッド
営業キャッシュフローで返済できない場合、資産売却、借換え、増資などが必要になります。
コマーシャル・ペーパー
コマーシャル・ペーパーは、企業が短期資金を市場から調達するために発行する短期の無担保約束手形などです。
低コストで調達できる場合がありますが、市場環境が悪化すると発行しにくくなる可能性があります。銀行借入枠などの代替流動性を確認します。
長期借入金・社債
長期借入金や社債は、設備投資、M&A、事業運転資金などを長期で調達する手段です。
借入金が多いことだけで危険とはいえません。重要なのは、借入によって得た資金を資本コスト以上の収益が期待できる用途へ投じているか、返済能力があるかです。
借入条件を確認する
有価証券報告書や注記で、次を確認します。
- 返済期限・償還期限
- 返済額の年度別分布
- 平均金利
- 固定金利・変動金利
- 円建て・外貨建て
- 担保提供資産
- 保証の有無
- 劣後性
- 転換権・新株予約権の有無
- 財務制限条項
- 金利スワップなどのヘッジ
同じ1,000億円の借入でも、翌年一括返済する変動金利借入と、10年に分散した固定金利借入ではリスクが異なります。
返済期限の集中
特定年度に借入・社債の満期が集中すると、その時点の金利・信用環境に大きく左右されます。
次のような満期表を作ると理解しやすくなります。
| 返済時期 | 返済予定額 | 主な返済原資 | 確認点 |
|---|---|---|---|
| 1年以内 | 200億円 | 手元現金・営業CF | 現金不足はないか |
| 1~2年 | 150億円 | 営業CF・借換え | 借換え交渉は進んでいるか |
| 2~5年 | 300億円 | 営業CF | 大型投資と重ならないか |
| 5年超 | 350億円 | 長期CF | 固定・変動金利はどうか |
財務制限条項
借入契約には、純資産額、自己資本比率、利益水準、債務比率などに関する財務制限条項が付く場合があります。
条項へ抵触すると、期限の利益を失い、早期返済を求められる可能性があります。ただし、金融機関から権利放棄を得る場合など、契約ごとに扱いは異なります。
財務指標が条項へ近づいている企業では、弱気シナリオで抵触しないかを確認します。
リース負債
リース負債は、リース契約に基づく将来の支払義務を現在価値などで計上する負債です。
IFRS採用企業では、原則としてオペレーティング・リースを含む借手のリースについて使用権資産とリース負債を計上しています。そのため、店舗、航空機、車両、倉庫、データセンターなどを多く賃借する企業では、リース負債が大きくなることがあります。
2027年4月から日本基準のリース会計が変わる
日本基準では、企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」が、2027年4月1日以後に開始する連結会計年度・事業年度の期首から適用されます。2025年4月1日以後に開始する年度から早期適用も可能です。
新基準では、借手は原則としてオペレーティング・リースを含むリースについて、使用権資産とリース負債を計上します。短期リースや少額リースなどには簡便的な取扱いがあります。
適用によって、店舗・事務所・倉庫・車両などを多く借りる日本基準企業では、次の変化が起こりえます。
- 総資産が増える
- 有利子負債に近いリース負債が増える
- 自己資本比率が低下する場合がある
- D/Eレシオが上昇する場合がある
- 従来の賃借料が減価償却費と利息費用へ置き換わる
- EBITDAが増える場合がある
- 営業CFと財務CFの表示が変わる場合がある
会計基準の適用で事業の実態そのものが突然悪化するわけではありません。新旧基準の数値を比較するときは、会計方針変更の影響を分けて考えます。
退職給付に係る負債
確定給付型の退職給付制度では、従業員への将来給付見込のうち当期までに発生した部分を割り引いた退職給付債務と、制度のために積み立てた年金資産などとの差額が、退職給付に係る負債または資産として計上されます。
確認する項目は次のとおりです。
- 退職給付債務
- 年金資産
- 積立状況
- 割引率
- 期待運用収益率
- 数理計算上の差異
- 退職給付費用
- 翌期の拠出予定額
金利低下で割引率が下がると退職給付債務が増える場合があります。年金資産の市場価値が下落すれば、積立不足が拡大する可能性があります。
退職給付負債は通常の銀行借入とは異なりますが、将来の現金拠出を必要とする可能性があるため、長期的な支払義務として確認します。
資産除去債務
資産除去債務は、有形固定資産の取得、建設、開発、通常使用によって生じた、将来の撤去・原状回復などに関する法令・契約上の義務です。
代表例には、店舗・事務所の原状回復、設備の解体、土壌汚染への対応などがあります。
資産除去債務を見るときは、次を確認します。
- 対象資産
- 除去時期
- 割引前将来キャッシュフローの見積額
- 割引率
- 見積り変更
- 実際の除去支出
- 賃貸借契約の更新・解約方針
店舗閉鎖や設備撤去が増える局面では、見積額が変更され、損益へ影響することがあります。
繰延税金負債
繰延税金負債は、会計上と税務上の資産・負債の金額差などにより、将来の税負担が増えると見込まれる場合に計上されます。
投資有価証券の含み益、企業結合による資産評価差額、海外子会社利益などから生じることがあります。
同一納税主体の繰延税金資産と繰延税金負債は、会計基準に従い相殺表示される場合があります。そのため、貸借対照表本表の純額だけでなく、税効果会計注記の総額・発生原因を確認します。
偶発債務・保証・コミットメント
貸借対照表に負債として計上されていなくても、将来支払が生じる可能性のある項目があります。
代表例は次のとおりです。
- 関係会社・取引先の借入に対する債務保証
- 訴訟・税務紛争
- 購入契約・設備投資契約
- 未使用融資枠
- 買取保証
- 受注契約の違約金
- 環境・原状回復義務
- デリバティブ契約
- 共同事業への追加出資義務
これらは注記、事業等のリスク、重要な契約、偶発債務などで確認します。
貸借対照表上の負債が少なくても、保証や契約上の支払義務が大きければ、実質的な財務リスクは高くなる可能性があります。
純資産の部の読み方
純資産は、資産合計から負債合計を差し引いた残額です。
純資産=資産-負債
純資産が厚いほど損失吸収力が高い傾向がありますが、純資産の構成や資産の質を確認せず、金額や比率だけで安全性を判断することはできません。
純資産・株主資本・自己資本の違い
これらは似た言葉ですが、同じではありません。
| 用語 | 一般的な内容 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 純資産 | 資産と負債の差額。株主資本以外の項目も含む | 貸借対照表の区分 |
| 株主資本 | 資本金+資本剰余金+利益剰余金-自己株式 | 株主からの払込と留保利益の把握 |
| 自己資本 | 純資産から株式引受権・新株予約権・非支配株主持分を除いた金額 | 自己資本比率、ROEなど |
東証の日本基準の決算短信作成要領では、自己資本を次のように計算します。
自己資本=純資産合計-株式引受権-新株予約権-非支配株主持分
自己資本には、株主資本だけでなく、親会社株主に帰属するその他の包括利益累計額も含まれます。
資本金
資本金は、株主から払い込まれた金額のうち会社法や会計処理に基づいて資本金へ組み入れた部分です。
資本金が大きいこと自体は、現在の収益力や現金保有額を示しません。過去に調達した資金が事業投資や損失補填に使われている場合があります。
減資によって資本金が減っても、同額を資本剰余金へ振り替えるだけなら、純資産合計は変わらない場合があります。減資の目的、欠損填補、税務・法務上の影響を確認します。
資本剰余金
資本剰余金は、株主から払い込まれた資本のうち資本金に組み入れなかった部分や、自己株式の処分、支配を維持した子会社株式取引などから生じます。
増資や子会社持分の売買によって増減することがあるため、株主資本等変動計算書で変動理由を確認します。
利益剰余金
利益剰余金は、企業が過去に獲得した利益のうち、配当などで社外へ流出せず、社内に留保された累積額を中心とする項目です。
利益剰余金は現金の積立額ではない
利益剰余金が1,000億円あっても、現金が1,000億円あるとは限りません。
獲得した利益は、次のような資産へ変わっている場合があります。
- 売掛金
- 在庫
- 工場・設備
- ソフトウェア
- 子会社・関連会社への投資
- M&Aによるのれん
- 投資有価証券
利益剰余金は純資産の構成項目であり、特定の現金口座ではありません。
また、連結利益剰余金が大きくても、親会社単体の分配可能額や現金が不足していれば、同額を配当できるわけではありません。
利益剰余金が減る理由
利益剰余金は、赤字だけでなく次の理由でも減ります。
- 配当
- 自己株式の消却・処分に関連する処理
- 会計方針変更の遡及適用
- 子会社持分取引
- 組織再編
株主資本等変動計算書で当期の変動を確認します。
自己株式
企業が自社株を取得すると、取得原価を純資産の株主資本から控除する形で自己株式を表示します。
自己株式取得では、現金と株主資本が減少します。取得しただけでは発行済株式総数は減らず、消却して初めて減ります。それでも、1株当たり利益や1株当たり純資産の分母は発行済株式数から自己株式数を控除して計算するため、これらの指標が上昇する場合があります。
なお「流通株式数」は、東京証券取引所が上場維持基準などで用いる別の概念で、1株当たり指標の分母ではありません。
ただし、自社株買いが企業価値を必ず高めるわけではありません。
確認する項目は次のとおりです。
- 取得価格は企業価値に対して妥当か
- 借入で自社株買いを行っていないか
- 成長投資や財務余力を損なっていないか
- 取得した株式を消却するか、報酬・M&Aへ再利用するか
- 発表した上限まで実際に取得したか
- 1株当たり指標改善だけを目的にしていないか
その他の包括利益累計額
その他の包括利益累計額には、損益計算書の当期純利益を直接経由せず、純資産へ計上される評価差額などが含まれます。
連結財務諸表規則は、この区分の内訳として少なくとも次の項目を定めています。
- その他有価証券評価差額金
- 繰延ヘッジ損益
- 土地再評価差額金
- 為替換算調整勘定
- 退職給付に係る調整累計額
なお、ここまでは連結貸借対照表の区分です。個別貸借対照表では、純資産の部の同じ位置にあたる区分の名称が「評価・換算差額等」となり、財務諸表等規則が定める内訳はその他有価証券評価差額金、繰延ヘッジ損益、土地再評価差額金の3項目です。為替換算調整勘定と退職給付に係る調整累計額は連結財務諸表規則が内訳として定める項目であり、個別貸借対照表のこの区分には含まれません。以下では、連結貸借対照表の内訳を順に見ます。
その他有価証券評価差額金
政策保有株式などの時価上昇による含み益が、税効果を調整したうえで純資産へ計上される場合があります。
株式市場が下落すれば評価差額が縮小し、自己資本比率が低下する可能性があります。自己資本のうち、事業利益の蓄積と市場価格による評価差額を分けて確認します。
為替換算調整勘定
海外子会社の資産・負債などを円換算する際に生じる差額が累積されます。
円安で海外子会社の純資産の円換算額が増え、為替換算調整勘定がプラス方向へ動く場合があります。反対に円高では減少する可能性があります。
これは必ずしも当期の現金収入や事業利益を意味しません。
退職給付に係る調整累計額
退職給付債務と年金資産に関する数理計算上の差異などの未認識部分が、連結貸借対照表の純資産へ反映されます。
金利や年金資産の市場価格変動によって大きく動くことがあります。
株式引受権・新株予約権
株式引受権や新株予約権は、現時点の普通株主に帰属する株主資本とは区別して純資産へ表示されます。
新株予約権が行使されると株式数が増え、1株当たり利益や既存株主の持分が希薄化する可能性があります。
貸借対照表上の残高だけでなく、潜在株式数、行使価格、権利確定条件、行使期間を確認します。
非支配株主持分
非支配株主持分は、連結子会社の純資産のうち親会社以外の株主に帰属する部分です。
連結貸借対照表では純資産に含まれますが、親会社株主に帰属する自己資本ではありません。
非支配株主持分が大きい企業では、次を確認します。
- どの子会社に外部株主がいるか
- 子会社利益のうち親会社へ帰属する割合
- 子会社から親会社への配当制約
- 少数株主との利益相反
- 将来の完全子会社化に必要な資金
連結利益が増えても、非支配株主に帰属する利益が大きければ、親会社株主に帰属する利益の増加は小さくなる場合があります。
債務超過
負債が資産を上回ると、純資産がマイナスとなる債務超過の状態になります。
資産<負債
債務超過は財務リスクが高い状態ですが、直ちに倒産を意味するわけではありません。営業キャッシュフロー、資金調達、親会社支援、資産売却、増資、事業再建などによって継続できる場合があります。
一方、債務超過では損失吸収余力が小さく、借入条件、上場維持、継続企業の前提などに影響する可能性があります。
債務超過または自己資本が薄い企業では、次を確認します。
- 現金残高と資金繰り
- 営業キャッシュフロー
- 借入返済期限
- 財務制限条項
- 増資・債務免除・資産売却計画
- 継続企業の前提に関する注記
- 監査報告書
- 上場維持基準への適合状況
財務安全性を測る主要指標
貸借対照表には多数の金額が並ぶため、企業間や時系列で比較するときは比率へ置き換えると変化を把握しやすくなります。
本記事で取り上げる財務比率・回転日数・倍率の類は、いずれも会計基準や開示規則が定める表示科目ではありません。算式が資料によって異なるものと、決算短信のように算式が定められているものがあります。会計基準と財務諸表等規則・連結財務諸表規則が定めているのは、貸借対照表に表示する科目と区分です。そのため、同じ名称の指標でも算式が異なる場合があり、比較するときは算式と使った科目をそろえます。
また、比率は企業の財務状態を一つの数字で判定する合否基準ではありません。小売業、製造業、建設業、SaaS、銀行では、資産・負債の構成も資金回収の速度も異なります。
財務指標は、次の条件をそろえて比較します。
- 同じ計算式を使う
- 連結・個別の範囲をそろえる
- 決算期や会計基準を確認する
- 一時点だけでなく複数年の推移を見る
- 同業他社と比較する
- 返済期限と営業キャッシュフローを合わせて確認する
- M&A、増資、事業売却などの特殊要因を分ける
運転資本
貸借対照表全体から短期的な支払余力を概観する最も基本的な指標が、流動資産と流動負債の差額です。
運転資本=流動資産-流動負債
たとえば、流動資産500億円、流動負債370億円なら、運転資本は130億円です。
500億円-370億円=130億円
運転資本がプラスであれば、帳簿上は流動資産が流動負債を上回っています。しかし、流動資産の大半が売れにくい在庫や回収の遅れた債権であれば、支払資金として十分とは限りません。
反対に、運転資本がマイナスでも、顧客から代金を先に受け取り、仕入先への支払いを後に行う事業では、安定した資金循環が成立している場合があります。
運転資本は、正負だけでなく内訳とビジネスモデルを確認します。
流動比率
流動比率は、流動負債に対してどの程度の流動資産を持つかを示します。
流動比率=流動資産÷流動負債×100
流動資産500億円、流動負債370億円なら、流動比率は約135.1%です。
500億円÷370億円×100=約135.1%
流動比率が上昇した場合、短期支払余力が改善した可能性があります。ただし、次の理由でも上昇します。
- 売掛金の回収が遅れた
- 不良在庫が増えた
- 短期借入金を長期借入金へ借り換えた
- 増資で現金が増えた
- 大型投資を先送りした
反対に、流動比率が低下しても、在庫回転の改善や代金の前受けが原因なら、必ずしも財務悪化ではありません。
「100%以上なら安全」「200%以上なら理想」といった固定基準ではなく、流動資産の換金性、流動負債の支払時期、融資枠、季節性、過去推移を確認します。
当座比率
当座比率は、流動資産から棚卸資産などを除き、比較的換金しやすい資産で流動負債をどの程度賄えるかを見る指標です。
本記事では、簡便的に次の式を使います。
当座比率=(現金及び預金+売上債権+短期保有の市場性有価証券)÷流動負債×100
現金120億円、売上債権150億円、流動負債370億円で、短期保有の市場性有価証券がない場合、当座比率は約73.0%です。
(120億円+150億円)÷370億円×100=約73.0%
当座資産の定義は、分析資料によって異なります。受取手形、電子記録債権、契約資産、短期貸付金などを含めるかどうかを確認し、比較時には式を統一します。
また、売上債権は現金ではありません。顧客の信用力や回収条件によって換金性が異なるため、貸倒引当金と回転日数も確認します。
現金比率
現金比率は、現金及び預金など、最も流動性の高い資産と流動負債を比較します。
現金比率=現金及び現金同等物など÷流動負債×100
現金120億円、流動負債370億円なら、単純な現金比率は約32.4%です。
120億円÷370億円×100=約32.4%
現金比率が低いから直ちに支払不能になるわけではありません。日々の売上入金、未使用の融資枠、資産売却余地なども資金繰りに影響します。
一方、決算日に一時的な借入で現金を増やすと、見かけ上の現金比率は改善します。期末残高だけでなく、借入金の増減、平均残高、キャッシュ・フロー計算書を確認します。
自己資本比率
自己資本比率は、総資産のうち、親会社株主に帰属する自己資本で賄われている割合を示します。
決算短信で一般に使われる自己資本は、純資産合計から株式引受権、新株予約権、非支配株主持分を控除した金額です。
自己資本=純資産合計-株式引受権-新株予約権-非支配株主持分
自己資本比率=自己資本÷総資産×100
純資産400億円、新株予約権2億円、非支配株主持分18億円、総資産1,070億円なら、自己資本は380億円、自己資本比率は約35.5%です。
自己資本=400億円-2億円-18億円=380億円
自己資本比率=380億円÷1,070億円×100=約35.5%
自己資本比率が高いほど、一般には借入などへの依存度が低く、損失吸収余力が大きいと考えられます。ただし、高ければ高いほど企業価値が高いとは限りません。
- 資本を使わず成長投資を行っていない
- 余剰現金を長期間積み上げている
- 収益性の低い資産を保有している
- 資本効率が低下している
といった可能性もあります。
また、銀行や保険会社では預金・保険負債などが事業構造の中心であり、一般事業会社の自己資本比率をそのまま当てはめられません。規制資本や健全性指標を別途確認します。
D/Eレシオ
D/Eレシオは、有利子負債が自己資本の何倍あるかを示します。
D/Eレシオ=有利子負債÷自己資本
有利子負債420億円、自己資本380億円なら、D/Eレシオは約1.11倍です。
420億円÷380億円=約1.11倍
有利子負債に何を含めるかは、企業や情報提供者によって異なります。一般には次の項目を検討します。
- 短期借入金
- コマーシャル・ペーパー
- 1年内返済予定の長期借入金
- 1年内償還予定の社債
- 長期借入金
- 社債
- リース負債
リース負債を含めるか、債権流動化やサプライヤーファイナンスを実質的な金融負債として調整するかによって、数値は変わります。
D/Eレシオが上昇した場合は、借入で何を取得したかを確認します。収益性の高い設備や事業の取得なら将来利益につながる可能性がありますが、赤字補填や過大な買収のための借入ならリスクが高まります。
ネットD/Eレシオ
ネットD/Eレシオは、現金などを有利子負債から差し引いたネットデットと自己資本を比較します。
ネットデット=有利子負債-現金及び現金同等物など
ネットD/Eレシオ=ネットデット÷自己資本
有利子負債420億円、現金120億円、自己資本380億円なら、ネットデットは300億円、ネットD/Eレシオは約0.79倍です。
ネットデット=420億円-120億円=300億円
300億円÷380億円=約0.79倍
ネットD/Eレシオは、現金で負債を返済できると仮定した見方です。ただし、現金のすべてを自由に返済へ回せるとは限りません。
- 海外子会社にある現金
- 事業運営に必要な最低現金
- 顧客から預かっている資金
- 規制上拘束されている資金
- 担保や契約で使用が制限されている預金
などを除いて考える必要がある場合があります。
固定比率
固定比率は、固定資産を自己資本でどの程度賄っているかを見る指標です。
固定比率=固定資産÷自己資本×100
固定資産570億円、自己資本380億円なら、固定比率は150%です。
570億円÷380億円×100=150%
固定資産は短期間で現金化しにくいため、返済期限のない自己資本で賄う方が財務上安定しやすいという考え方に基づきます。
ただし、設備を多く必要とする業種では固定比率が高くなりやすく、固定資産を長期借入金で調達することも合理的です。そのため、固定長期適合率も合わせて確認します。
固定長期適合率
固定長期適合率は、固定資産を自己資本と固定負債の合計でどの程度賄っているかを示します。
固定長期適合率=固定資産÷(自己資本+固定負債)×100
固定資産570億円、自己資本380億円、固定負債300億円なら、固定長期適合率は約83.8%です。
570億円÷(380億円+300億円)×100=約83.8%
100%を超える場合、固定資産の一部を流動負債で賄っている構造が示唆されます。ただし、式に使う自己資本や固定負債の定義、事業の資金循環によって解釈が変わります。
のれん自己資本比率
買収を多く行う企業では、のれんが自己資本に対してどの程度あるかを確認します。
のれん自己資本比率=のれん÷自己資本×100
のれん120億円、自己資本380億円なら約31.6%です。
120億円÷380億円×100=約31.6%
のれん自体が悪いわけではありません。買収先が計画どおりに利益やキャッシュフローを生み出せば、企業価値の増加につながる可能性があります。
一方、買収先の収益性が低下し、多額の減損損失が発生すると、利益と自己資本が同時に減少する可能性があります。買収の対価、資金調達方法、買収後の実績、減損テストの前提を確認します。
インタレスト・カバレッジ・レシオ
借入金の残高だけでは、利息を支払えるかは分かりません。利払能力を見るには、損益計算書やキャッシュ・フロー計算書を使います。
代表的な式の一例は次のとおりです。
インタレスト・カバレッジ・レシオ=営業利益÷支払利息
営業利益90億円、支払利息15億円なら6倍です。
90億円÷15億円=6倍
ただし、EBIT、EBITDA、営業キャッシュフローなどを分子に使う計算もあります。比較するときは定義をそろえます。
営業利益が十分でも、多額の元本返済が近づいていれば資金繰りは厳しくなる可能性があります。利払能力と返済能力は分けて確認します。
ネットデット/EBITDA倍率
ネットデットをEBITDAで何年分に相当するかを見る指標もあります。
ネットデット/EBITDA倍率=ネットデット÷EBITDA
この指標は、借入負担を事業の収益力と比較するために使われますが、EBITDAは設備投資、運転資本増加、税金、利息の支払いを控除していません。
設備更新に多額の資金が必要な企業では、EBITDAが大きくても自由に返済へ回せる現金が少ない場合があります。営業キャッシュフローとフリーキャッシュフローを必ず確認します。
運転資本とキャッシュ・コンバージョン・サイクル
貸借対照表は、売上が現金へ変わるまでの資金循環を読むためにも使えます。
商品を仕入れ、在庫として保有し、販売後に代金を回収するまでには時間がかかります。その間、企業は運転資金を負担します。
営業運転資本
一般的な事業会社では、簡便的に次の式で営業運転資本を考えられます。
営業運転資本=売上債権+棚卸資産-仕入債務
契約資産・契約負債が重要な企業では、次のように調整します。
調整後営業運転資本=売上債権+契約資産+棚卸資産-仕入債務-契約負債
当期の売上債権150億円、契約資産30億円、棚卸資産180億円、仕入債務140億円、契約負債50億円なら、調整後営業運転資本は170億円です。
150億円+30億円+180億円-140億円-50億円=170億円
前期が120億円だった場合、営業運転資本は50億円増えています。利益が増えていても、この50億円が現金を拘束し、営業キャッシュフローを押し下げる可能性があります。
売上が伸びるほど資金が必要になる場合がある
成長企業では、売上増加に先行して在庫を増やしたり、販売後の代金回収を待ったりするため、運転資金需要が拡大することがあります。
たとえば、売上高が20%増えても、売上債権が25%、棚卸資産が約38.5%増え、仕入債務が約27%しか増えていなければ、成長に伴う資金負担は大きくなります。
売上成長自体は好材料でも、資金調達能力が弱ければ、次の問題が生じる可能性があります。
- 現金残高の減少
- 短期借入金の増加
- 増資による希薄化
- 仕入先への支払遅延
- 在庫の陳腐化
- 売上債権の回収不能
「黒字倒産」は、会計上の利益が出ていても支払に必要な現金が不足する状態を指します。損益計算書だけでなく、運転資本と返済期限を確認する必要があります。
キャッシュ・コンバージョン・サイクル
キャッシュ・コンバージョン・サイクルは、仕入への支払いから販売代金の回収まで、運転資金が拘束される日数を概算する指標です。
CCC=売上債権回転日数+棚卸資産回転日数-仕入債務回転日数
各回転日数は、平均残高を使って計算します。
売上債権回転日数=平均売上債権÷売上高×365
棚卸資産回転日数=平均棚卸資産÷売上原価×365
仕入債務回転日数=平均仕入債務÷売上原価など×365
厳密には、仕入債務回転日数の分母には年間仕入高を使う方が対応関係は明確です。しかし、仕入高が開示されていない場合には、売上原価を代用することがあります。その場合、製造原価や在庫増減の影響を受けるため概算値です。
架空企業について、前期末と当期末の平均残高を使い、次の数値を仮定します。
- 売上高:1,200億円
- 売上原価:720億円
- 平均売上債権:135億円
- 平均棚卸資産:155億円
- 平均仕入債務:125億円
売上債権回転日数は約41.1日です。
135億円÷1,200億円×365=約41.1日
棚卸資産回転日数は約78.6日です。
155億円÷720億円×365=約78.6日
仕入債務回転日数は約63.4日です。
125億円÷720億円×365=約63.4日
したがって、CCCは約56.3日です。
41.1日+78.6日-63.4日=約56.3日
CCCが長期化した場合、債権回収の遅れ、在庫積み増し、仕入先への支払早期化などを確認します。
CCCが短いほど常に良いとは限らない
CCCが短い企業は、一般に資金回収が速く、少ない運転資金で事業を運営しやすいと考えられます。顧客から先に代金を受け取り、仕入先へ後から支払う事業では、CCCがマイナスになる場合もあります。
ただし、CCCの短縮には注意が必要です。
- 在庫を削減しすぎて欠品が増えた
- 顧客に厳しい回収条件を課して売上が減った
- 仕入先への支払いを過度に遅らせた
- 売上債権を売却して見かけ上短縮した
- 売上原価の変動で計算値が変わった
回転日数は、顧客満足、供給安定性、仕入先との関係を犠牲にして改善していないかも確認します。
貸借対照表を損益計算書・キャッシュ・フロー計算書とつなげる
貸借対照表は一時点の残高を示すため、それだけでは増減の原因を十分に説明できません。損益計算書とキャッシュ・フロー計算書を合わせると、企業活動が三つの財務諸表へどのように表れるかを理解できます。
| 取引・出来事 | 貸借対照表への主な影響 | 損益計算書への主な影響 | キャッシュ・フローへの主な影響 |
|---|---|---|---|
| 商品を掛けで販売 | 売掛金が増える、利益を通じて純資産が増える | 売上・利益を計上 | 回収までは現金が増えない |
| 商品を掛けで仕入れる | 棚卸資産と買掛金が増える | 販売されるまで原則として費用化されない | 支払までは現金が減らない |
| 借入で設備を購入 | 有形固定資産と借入金が増える | 将来、減価償却費や利息が発生 | 財務CFで借入、投資CFで設備支出 |
| 減価償却を計上 | 固定資産の帳簿価額と純資産が減る | 減価償却費が利益を減らす | 計上時に直接の現金支出はない |
| 配当を支払う | 現金と利益剰余金が減る | 原則として当期費用にならない | 財務CFの支出 |
| 自己株式を取得 | 現金が減り、自己株式の控除額が増える | 原則として当期損益に影響しない | 財務CFの支出 |
| 株式を発行する | 現金と資本金・資本剰余金などが増える | 原則として収益にならない | 財務CFの収入 |
| 現金で企業を買収 | 現金が減り、取得資産・負債・のれんなどが増える | 買収後の利益や取得関連費用などに影響 | 投資CFの支出 |
| 借入金を返済する | 現金と借入金が減る | 元本返済は費用にならない | 財務CFの支出 |
| 固定資産を減損する | 固定資産と純資産が減る | 減損損失を計上 | 損失計上自体に直接の現金支出はない |
| 外貨建て子会社を換算する | 資産・負債と為替換算調整勘定が変動 | 換算差額の一部は当期利益を通らない | 換算差額は実際の現金収支とは異なる |
利益が増えても現金が減る場合
売上と利益が増えているのに現金が減る主な理由には、次があります。
- 売掛金の増加
- 棚卸資産の増加
- 設備投資
- M&A
- 借入金の返済
- 配当・自社株買い
- 税金の支払い
利益の増加と現金の減少が同時に起きた場合、成長投資のための一時的な減少なのか、債権・在庫の滞留による悪化なのかを分けます。
現金が増えても企業価値が高まったとは限らない
現金は次の理由でも増えます。
- 借入金の増加
- 社債発行
- 増資
- 資産売却
- 事業売却
- 投資の先送り
営業キャッシュフローではなく借入や増資で現金が増えている場合、返済負担や希薄化を確認します。
純資産が増えても株主価値が増えたとは限らない
純資産は利益の蓄積以外にも、増資、株価・為替の変動、非支配株主持分の増加などで変化します。
増資によって純資産が増えても、株式数が大幅に増えれば、1株当たり純資産や1株当たり利益が低下する場合があります。
次の両方を確認します。
- 純資産・自己資本の総額
- 1株当たり純資産と発行済株式数
数値例で貸借対照表を分析する
以下は、製造業を営む架空の「TMG工業」の連結貸借対照表です。単位は億円とします。
資産の部
| 項目 | 前期末 | 当期末 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 現金及び預金 | 150 | 120 | -30 |
| 売上債権 | 120 | 150 | +30 |
| 契約資産 | 20 | 30 | +10 |
| 棚卸資産 | 130 | 180 | +50 |
| その他の流動資産 | 30 | 20 | -10 |
| 流動資産合計 | 450 | 500 | +50 |
| 有形固定資産 | 260 | 300 | +40 |
| のれん | 40 | 120 | +80 |
| その他の無形固定資産 | 30 | 40 | +10 |
| 投資有価証券等 | 55 | 90 | +35 |
| 繰延税金資産 | 15 | 20 | +5 |
| 固定資産合計 | 400 | 570 | +170 |
| 資産合計 | 850 | 1,070 | +220 |
負債・純資産の部
| 項目 | 前期末 | 当期末 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 仕入債務 | 110 | 140 | +30 |
| 契約負債 | 40 | 50 | +10 |
| 短期借入金 | 40 | 100 | +60 |
| 1年内返済予定の長期借入金 | 50 | 60 | +10 |
| その他の流動負債 | 40 | 20 | -20 |
| 流動負債合計 | 280 | 370 | +90 |
| 長期借入金 | 160 | 220 | +60 |
| リース負債 | 20 | 40 | +20 |
| 退職給付に係る負債 | 25 | 25 | 0 |
| その他の固定負債 | 15 | 15 | 0 |
| 固定負債合計 | 220 | 300 | +80 |
| 負債合計 | 500 | 670 | +170 |
| 株主資本 | 342 | 390 | +48 |
| その他の包括利益累計額 | -8 | -10 | -2 |
| 新株予約権 | 2 | 2 | 0 |
| 非支配株主持分 | 14 | 18 | +4 |
| 純資産合計 | 350 | 400 | +50 |
| 負債純資産合計 | 850 | 1,070 | +220 |
当期の売上高を1,200億円、売上原価を720億円、営業利益を90億円、営業キャッシュフローを30億円とします。前期は売上高1,000億円、売上原価600億円、営業利益80億円、営業キャッシュフロー100億円でした。
ステップ1 総資産が増えた理由を確認する
総資産は850億円から1,070億円へ220億円増えています。主な増加項目は次のとおりです。
- 棚卸資産:+50億円
- 有形固定資産:+40億円
- のれん:+80億円
- 投資有価証券等:+35億円
現金は30億円減少しています。総資産の増加だけを見て「会社が成長した」と判断するのではなく、在庫、設備、買収資産へ資金が移ったことを確認します。
のれんが80億円増えているため、企業買収が行われた可能性があります。取得対価、買収資金、買収先の業績、のれんの回収可能性を注記と適時開示で確認します。
ステップ2 資金をどこから調達したか確認する
総資産の増加220億円に対し、負債は170億円、純資産は50億円増えています。
有利子負債は、リース負債を含めて次のように増えています。
| 有利子負債 | 前期末 | 当期末 |
|---|---|---|
| 短期借入金 | 40 | 100 |
| 1年内返済予定の長期借入金 | 50 | 60 |
| 長期借入金 | 160 | 220 |
| リース負債 | 20 | 40 |
| 合計 | 270 | 420 |
有利子負債は150億円増加しました。資産増加の多くを借入で賄っていることが分かります。
次に確認するのは、借入の金利、固定・変動、返済期限、通貨、担保、財務制限条項です。
ステップ3 短期支払余力を確認する
流動比率は、約160.7%から約135.1%へ低下しています。
前期:450億円÷280億円×100=約160.7%
当期:500億円÷370億円×100=約135.1%
運転資本は170億円から130億円へ減少しました。
前期:450億円-280億円=170億円
当期:500億円-370億円=130億円
流動資産は増えていますが、流動負債がより大きく増えています。しかも、流動資産の増加は主に売上債権と在庫であり、現金は減っています。
当座比率も約96.4%から約73.0%へ低下しました。
前期:(150億円+120億円)÷280億円×100=約96.4%
当期:(120億円+150億円)÷370億円×100=約73.0%
短期的な支払余力が見かけ以上に弱まっていないか、月次の資金繰りと融資枠を確認する必要があります。
ステップ4 売上債権と在庫の増加を確認する
売上高は20%増加しました。
(1,200億円-1,000億円)÷1,000億円×100=20%
一方、売上債権は25%増加しています。
(150億円-120億円)÷120億円×100=25%
棚卸資産は約38.5%増加しています。
(180億円-130億円)÷130億円×100=約38.5%
売上高以上の速度で在庫が増えているため、需要に備えた戦略在庫なのか、販売不振や生産過多による滞留なのかを確認します。
営業運転資本は120億円から170億円へ50億円増えました。この増加が、営業利益90億円に対して営業キャッシュフローが30億円にとどまる一因と考えられます。
ステップ5 自己資本と借入負担を確認する
自己資本は、純資産から新株予約権と非支配株主持分を控除します。
前期:350億円-2億円-14億円=334億円
当期:400億円-2億円-18億円=380億円
自己資本は増えましたが、総資産と負債の増加がより大きいため、自己資本比率は約39.3%から約35.5%へ低下しています。
前期:334億円÷850億円×100=約39.3%
当期:380億円÷1,070億円×100=約35.5%
D/Eレシオは約0.81倍から約1.11倍へ上昇しました。
前期:270億円÷334億円=約0.81倍
当期:420億円÷380億円=約1.11倍
ネットD/Eレシオも約0.36倍から約0.79倍へ上昇しています。
前期:(270億円-150億円)÷334億円=約0.36倍
当期:(420億円-120億円)÷380億円=約0.79倍
借入負担が高まっているため、買収後の利益とキャッシュフローが計画どおり生まれるかが重要です。
ステップ6 のれんと固定資産の負担を確認する
のれん自己資本比率は約12.0%から約31.6%へ上昇しました。
前期:40億円÷334億円×100=約12.0%
当期:120億円÷380億円×100=約31.6%
買収先の業績が悪化してのれんの減損が生じると、利益と自己資本が減少します。買収時の事業計画、売上成長率、利益率、割引率などの前提を確認します。
固定比率は約119.8%から150%へ上昇しました。
前期:400億円÷334億円×100=約119.8%
当期:570億円÷380億円×100=150%
固定長期適合率は約72.2%から約83.8%へ上昇しています。
前期:400億円÷(334億円+220億円)×100=約72.2%
当期:570億円÷(380億円+300億円)×100=約83.8%
固定資産は自己資本だけでは賄えていませんが、自己資本と固定負債の範囲には収まっています。ただし、余裕は縮小しています。
ステップ7 総合判断を行う
架空のTMG工業は、売上高が20%、営業利益が12.5%増えています。損益計算書だけなら成長企業に見えます。
しかし、貸借対照表とキャッシュ・フロー計算書を合わせると、次の変化があります。
前向きに評価できる可能性がある点
- 売上と営業利益が増加した
- 生産能力を高める設備投資を行った可能性がある
- 買収によって事業基盤を拡大した可能性がある
- 自己資本の金額は増加した
注意が必要な点
- 現金が減少した
- 売上以上の速度で在庫が増加した
- 営業運転資本が50億円増加した
- 営業キャッシュフローが100億円から30億円へ減少した
- 短期借入金を含む有利子負債が大幅に増加した
- 自己資本比率が低下した
- のれんが自己資本に対して大きくなった
- 短期支払余力を示す比率が低下した
したがって、「増収増益だから買い」「借入金が増えたから危険」と一つの数値だけで結論を出すのではなく、次の四半期以降に確認すべき条件を設定します。
- 棚卸資産回転日数が改善するか
- 売上債権を予定どおり回収できるか
- 買収先が利益と営業キャッシュフローへ寄与するか
- 有利子負債を返済できるフリーキャッシュフローが生まれるか
- 財務制限条項に抵触する可能性がないか
- のれんの減損兆候がないか
- 短期借入を長期・安定的な資金へ借り換えられるか
貸借対照表分析では、現在の状態を確認するだけでなく、次に何を確認すれば財務改善・悪化を判定できるかまで決めることが重要です。
貸借対照表で見落としたくない危険信号
貸借対照表の危険信号は、一つ見つかっただけで直ちに投資不適格を意味するものではありません。成長投資、M&A、季節性、会計方針の変更など、合理的な理由がある場合もあります。
重要なのは、変化の原因が開示され、その後の利益とキャッシュフローによって回収できるかを確認することです。
1.現金が減る一方で短期借入金が増えている
現金不足を短期借入で補っている可能性があります。季節的な運転資金なのか、恒常的な赤字や返済資金不足なのかを確認します。
特に次の組み合わせには注意が必要です。
- 営業キャッシュフローがマイナス
- 短期借入金が増加
- 1年内返済予定の長期借入金が増加
- 現金が減少
- 未使用融資枠が小さい
2.売上高より売上債権が速く増えている
販売増加に伴う正常な増加の場合もありますが、回収期間の長期化、販売条件の緩和、顧客の支払能力低下、売上計上の前倒しなどを確認します。
売上債権回転日数、貸倒引当金、債権年齢表、主要顧客への集中を確認します。
3.契約資産が急増している
契約資産は、収益を認識していても請求権がまだ無条件になっていない金額です。工事進捗や履行義務の充足に基づいて増える場合があります。
契約資産の急増時には、次を確認します。
- どの契約で増えたか
- 請求・回収までの条件
- 見積総原価の妥当性
- 工事損失引当金の有無
- 契約変更や顧客検収の遅れ
4.棚卸資産が売上高・売上原価以上の速度で増えている
需要増加に備えた在庫や、供給途絶を避けるための戦略在庫であれば合理性があります。しかし、販売不振、生産過多、旧製品の滞留、原材料価格の下落が原因なら、評価損や値下げ販売につながる可能性があります。
数量と単価を分け、商品・製品・仕掛品・原材料のどこで増えたかを確認します。
5.棚卸資産評価損が繰り返し発生している
毎期のように在庫評価損や廃棄損が発生する場合、需要予測、生産計画、商品ライフサイクル管理に構造的な問題がある可能性があります。
評価損を売上原価に含める企業と、特別損失などで区分する企業があるため、注記と会計方針を確認します。
6.貸倒引当金率が低下しているのに回収期間が延びている
債権回収が遅れているにもかかわらず引当率が低下していれば、貸倒見積りが楽観的でないか確認します。
顧客構成の改善など合理的な理由がある場合もありますが、過去の貸倒実績、債権年齢、個別引当の基準を確認します。
7.「その他の流動資産」や「その他の固定資産」が大きく増えている
集約表示された科目の中に、前渡金、未収入金、長期前払費用、貸付金、デリバティブ資産などが含まれる場合があります。
総資産や自己資本に対して重要な金額なら、有価証券報告書の附属明細表や注記で内訳を確認します。
8.建設仮勘定が長期間増え続けている
建設仮勘定は建設中の設備などを示します。大型プロジェクトで一時的に増えるのは自然ですが、完成が遅れれば投資回収も遅れます。
- 完成予定日
- 総投資額
- 追加費用
- 稼働開始時期
- 受注・需要見通し
- 減損兆候
を確認します。
9.有形固定資産が増えても売上・利益が伸びていない
設備投資は稼働前には利益へ寄与しません。しかし、稼働後も売上や利益が伸びず、設備稼働率が低い状態が続けば、投資効率低下や減損リスクが高まります。
設備投資額、減価償却費、固定資産回転率、セグメント利益率を時系列で確認します。
10.のれん・無形固定資産が自己資本に対して大きい
買収や知的財産への投資が成長を生む場合もありますが、計画未達による減損が自己資本へ大きな影響を与える可能性があります。
特に、借入で大型買収を行い、のれんと有利子負債が同時に増えている場合は、買収先のキャッシュフローを重点的に確認します。
11.繰延税金資産が増える一方で利益が悪化している
繰延税金資産は、将来の課税所得が見込まれる範囲で回収可能性を評価します。赤字が続けば、将来利用できないと判断され、取り崩しによって税金費用が増える場合があります。
繰越欠損金の期限、収益計画、評価性引当額、回収可能性の区分を確認します。
12.関係会社・役員・主要株主への貸付金が増えている
グループ内資金管理として合理的な場合もありますが、回収条件が不透明な貸付や、支配株主・役員との取引は利益相反につながる可能性があります。
金利、担保、返済期限、回収実績、関連当事者注記、取締役会の承認手続きを確認します。
13.固定資産を短期借入金で賄っている
長期間使用する設備や買収資産を短期借入で調達すると、資産から利益を回収する前に借換えや返済が必要になります。
流動比率、固定長期適合率、借換実績、コミットメントライン、金融機関との関係を確認します。
14.返済期限が特定年度へ集中している
総借入額が同じでも、返済期限が分散している企業と、一年に集中している企業では借換リスクが異なります。
金利上昇や信用力低下の局面では、借換条件が悪化する可能性があります。年限別返済予定、固定・変動金利、社債償還予定を確認します。
15.変動金利負債や外貨建て負債が大きい
変動金利借入は、市場金利の上昇によって支払利息が増える可能性があります。外貨建て負債は、収益通貨と一致していなければ為替変動の影響を受けます。
- 固定・変動金利の構成
- 通貨別借入残高
- 金利・為替感応度
- デリバティブによるヘッジ
- ヘッジ期間と元本の対応
を確認します。
16.財務制限条項への余裕が小さい
借入契約には、純資産、利益、自己資本比率、ネットデット/EBITDA倍率などを一定水準に維持する条件が付くことがあります。
抵触すれば、期限前返済の請求、金利条件の変更、追加担保などが生じる可能性があります。実際には金融機関から権利行使の猶予を得られる場合もありますが、継続的に依存する状態は注意が必要です。
17.仕入債務が急増し、営業キャッシュフローだけが改善している
仕入先への支払いを遅らせれば、当期の営業キャッシュフローは一時的に改善します。しかし、翌期以降の支払負担が増え、仕入先との関係が悪化する可能性があります。
仕入債務回転日数、支払条件、サプライヤーファイナンス、期末後の支払状況を確認します。
18.引当金や偶発債務の説明が拡大している
訴訟、製品保証、事業撤退、環境対策、課徴金などの不確実な支出が増えている可能性があります。
引当金として計上された金額だけでなく、合理的な見積りが困難として計上されていない偶発債務も確認します。
19.自己資本の増加が利益ではなく増資に依存している
自己資本が増えていても、営業で稼いだ利益の蓄積ではなく、公募増資や第三者割当増資による場合があります。
増資が成長投資へ有効に使われれば企業価値へつながる可能性がありますが、赤字補填を繰り返す場合は、1株当たり価値の希薄化に注意します。
発行済株式数、EPS、BPS、資金使途、過去の調達資金の成果を確認します。
20.自己資本が増えても1株当たり純資産が伸びていない
増資、新株予約権の行使、株式報酬、転換社債の転換などで株式数が増えると、自己資本総額が増えてもBPSが伸びない場合があります。
BPS=普通株式に係る期末の純資産額÷(期末の普通株式の発行済株式数-自己株式数)
分子の「普通株式に係る期末の純資産額」は、純資産合計から普通株主に帰属しない部分を除いた金額です。本記事で用いる自己資本(純資産合計-株式引受権-新株予約権-非支配株主持分)は、これらを既に控除しています。優先株式を発行している場合は、それに対応する部分もさらに除きます。連結では、子会社・関連会社が保有する親会社等の普通株式のうち、親会社等の持分に相当する株式数も、控除する自己株式数に含めます。
企業規模の拡大だけでなく、既存株主1株当たりの価値が増えているかを確認します。
21.自己株式取得後に借入金が大きく増えている
余剰資金による自己株式取得は株主還元の一手段ですが、借入で大規模な取得を行うと財務余力が低下します。
EPSやROEが上昇しても、事業利益率が改善したとは限りません。取得資金、取得後の自己資本比率、返済能力を確認します。
22.四半期末だけ現金が多く、借入金が少なく見える
決算日前後に短期借入の返済、債権売却、支払延期などを行うと、期末時点の貸借対照表が通常時より良く見える場合があります。
平均借入残高、支払利息、四半期ごとの残高、期末後の資金調達を確認し、一時点の写真だけで判断しないことが重要です。
業種によって貸借対照表の重点項目は異なる
財務指標の適正水準は、事業モデルによって大きく変わります。同業他社と比べる前に、どの資産と負債が利益を生むために必要なのかを理解します。
製造業
製造業では、原材料、仕掛品、製品、工場設備が重要です。
主な確認項目は次のとおりです。
- 原材料・仕掛品・製品の増減
- 在庫回転日数と評価損
- 設備投資額と減価償却費
- 建設仮勘定
- 工場稼働率
- 環境対策・資産除去債務
- 原材料・エネルギー価格の影響
- 海外工場に伴う為替換算差額
設備投資が大きい企業では、借入の返済期間と設備の耐用期間・投資回収期間が対応しているかを確認します。
小売業・外食業
小売業や外食業では、店舗、在庫、敷金・保証金、リース負債、前受金が重要です。
- 商品在庫の回転
- 季節商品・流行商品の評価損
- 店舗設備と減損
- 不採算店舗の閉鎖費用
- 差入保証金の回収可能性
- テナント契約とリース負債
- ポイント・商品券に関する契約負債や引当
現金販売が多く、仕入代金を後払いする企業では、運転資本がマイナスでも安定的な資金循環を持つ場合があります。
SaaS・サブスクリプション企業
SaaS企業では、有形固定資産より、契約負債、ソフトウェア、人件費、顧客獲得に関連する資産などが重要になります。
年間契約を先に受け取ると、現金と契約負債が増えます。契約負債は返済目的の借入ではありませんが、将来サービスを提供する義務です。
- 契約負債の増減
- 売上債権と回収条件
- ソフトウェア資産
- 開発費の会計処理
- のれんと買収した顧客関連資産
- 株式報酬に伴う希薄化
- 解約率と前受契約の継続性
契約負債が増えて営業キャッシュフローが改善していても、解約増加や更新率低下が起きていないかKPIを確認します。
建設業・プラント・受注産業
長期工事を扱う企業では、契約資産、契約負債、未成工事支出金、工事損失引当金が重要です。
- 受注残高
- 契約資産の回収条件
- 顧客検収の進捗
- 原価見積りの変更
- 契約負債と前受金
- 工事損失引当金
- 保証債務・履行保証
- 大型案件への集中
工事進捗に基づく収益認識は見積りを含むため、原価上昇や工期遅延が利益と資産評価へ影響します。
不動産業
不動産会社では、販売用不動産、仕掛販売用不動産、賃貸不動産、借入金が大きくなりやすい特徴があります。
- 販売用不動産の地域・用途・取得時期
- 開発中物件の完成・販売予定
- 賃貸不動産の時価・稼働率
- 担保設定
- 物件と借入の満期対応
- 変動金利比率
- 金利上昇時の採算
- 含み損・評価減
在庫に分類される販売用不動産は金額が大きく、売却まで数年かかる場合があります。一般的な製造業の流動比率と単純比較できません。
総合商社・卸売業
商社では、売上債権、棚卸資産、事業投資、持分法投資、有利子負債、保証債務が重要です。
- 商品市況に伴う在庫価値
- 投資先企業の業績
- 持分法投資の減損
- 資源権益・大型プロジェクト
- 取引先への与信
- 保証・コミットメント
- 通貨・金利・商品デリバティブ
総資産が大きく、借入金も多い場合があるため、ネットデットだけでなく、投資先から得る配当・キャッシュフローを確認します。
医薬品・バイオ企業
医薬品企業では、研究開発、特許・販売権、仕掛研究開発、のれん、棚卸資産、提携契約が重要です。
- 特許権・販売権などの無形資産
- M&Aで計上したのれん
- 開発品の中止による減損
- マイルストーン支払義務
- 条件付取得対価
- 医薬品在庫の使用期限・廃棄
- 製造設備と品質問題
- 訴訟・製造物責任・薬害関連の偶発債務
- 繰延税金資産の回収可能性
研究開発型バイオ企業では、利益が出ていない段階も多いため、自己資本比率だけでなく、現金残高と年間の資金流出額から資金余力を確認します。
現金ランウェイの概算=利用可能な現金÷年間の資金消費額
分母の資金消費額には、新規の借入や増資による入金を含めません。調達によって現金の減少が小さく見えても、事業が使っている資金が減ったわけではないためです。
ただし、臨床試験の段階、承認申請、マイルストーン、増資計画によって支出は大きく変わるため、単純な過去実績だけでは判断できません。
航空・鉄道・ホテル・通信・電力
大型インフラを保有する事業では、有形固定資産と借入・リース負債が大きくなります。
- 設備の更新周期
- 維持更新投資
- 減価償却費
- 稼働率・利用率
- 固定金利と変動金利
- 資産除去債務
- 規制料金・長期契約
- 災害・事故関連の引当と保険
高い固定比率だけで危険と判断せず、安定した営業キャッシュフロー、資産の耐用年数、長期資金の調達条件を確認します。
銀行
銀行にとって、貸出金や有価証券は主要な収益資産であり、預金は主要な資金調達手段です。一般事業会社で使う流動比率、固定比率、売上債権回転日数は適しません。
主な確認項目は次のとおりです。
- 貸出金の業種・地域・債務者区分
- 不良債権と貸倒引当金
- 有価証券の評価損益
- 預貸率
- 金利感応度
- 外貨流動性
- 普通株式等Tier1比率
金融機関は規制開示資料や統合報告書も確認します。
保険会社
保険会社では、保険契約負債、責任準備金、有価証券、金利・株価感応度が重要です。
- 保険契約負債の測定
- 保有債券のデュレーション
- 金利変動の影響
- 株式保有リスク
- 再保険
- ソルベンシー関連指標
- 自然災害・大規模事故への備え
一般企業より負債比率が高く見えても、それ自体で財務不安とは判断できません。
日本基準とIFRSで貸借対照表を比較するときの注意点
日本株には、日本基準、IFRS、米国基準を採用する企業があります。同じ事業でも、認識・測定・表示の違いによって貸借対照表の金額や科目が異なる場合があります。
名称と表示区分
日本基準では「貸借対照表」、IFRSでは一般に「財政状態計算書」と呼ばれます。
日本基準の一般的な事業会社では、資産を流動資産・固定資産など、負債を流動負債・固定負債に区分します。IFRSでも通常は流動・非流動に区分しますが、金融機関などでは流動性の順に表示する方が適切な場合があります。
科目名が違っても、経済的な内容を確認して比較します。
のれん
日本基準では、のれんは原則として資産計上し、20年以内の効果が及ぶ期間にわたり規則的に償却したうえで、減損の対象とします。
IFRSでは、のれんを規則的に償却せず、毎年および減損兆候がある場合に減損テストを行います。
そのため、同じ買収でも、IFRS企業は日本基準企業よりのれん残高が長く残りやすく、償却費が計上されない分だけ利益が高く見える場合があります。一方、減損時には多額の損失が一度に生じる可能性があります。
利益率、ROA、自己資本比率を比較するときは、のれん償却と残高の違いを考慮します。
研究開発・開発費
日本基準では研究開発費は原則として発生時に費用処理しますが、販売目的・自社利用のソフトウェアなどは一定の条件で資産計上されます。
IFRSでは研究局面の支出は費用処理し、開発局面の支出は技術的実現可能性などの要件を満たす場合に無形資産として認識します。
開発費を資産計上する企業は、当期利益が高く、無形資産が大きく見える場合があります。資産計上額、償却期間、減損、将来の費用負担を確認します。
リース
IFRSでは、借手は一部の例外を除き、リースから生じる使用権資産とリース負債を認識します。
日本基準でも、企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」により、2027年4月1日以後に開始する連結会計年度・事業年度の期首から、借手は原則として使用権資産とリース負債を計上する仕組みへ移行します。2025年4月1日以後に開始する年度から早期適用も可能です。
適用前後では、次の数値が変化する可能性があります。
- 総資産
- 有利子負債または負債総額
- 自己資本比率
- D/Eレシオ
- 総資産回転率
- 営業利益・EBITDA
- 営業キャッシュフローと財務キャッシュフローの区分
実際の事業が急変していなくても、会計基準変更で比率が変わるため、適用影響額と比較情報を確認します。
その他の包括利益と評価差額
株式・債券、海外子会社、退職給付などに関する評価差額や換算差額は、当期純利益を経由せず純資産へ反映される場合があります。
日本基準とIFRSでは分類・再分類の方法が異なることがあるため、純資産の増減を当期利益だけで説明しないようにします。
比較では会計数値を機械的にそろえない
会計基準の違いを調整する場合でも、すべてを完全に同じ基準へ置き換えることは容易ではありません。
実務では、次の順番で比較します。
- 採用会計基準を確認する
- 重要な会計方針を確認する
- のれん、開発費、リースなど差が大きい項目を特定する
- 会社が開示する基準変更影響を確認する
- 調整前後の両方を記録する
- 一つの比率ではなくキャッシュフローも比較する
貸借対照表を分析する実務手順
貸借対照表を読むときは、最新年度の数字だけを眺めるのではなく、比較可能な形へ整えてから変化を追います。
1.最新の決算短信で全体を確認する
最初に最新の決算短信を開き、次を確認します。
- 連結か個別か
- 日本基準・IFRS・米国基準のいずれか
- 決算日
- 前期末との比較
- 総資産、負債、純資産、自己資本比率
- 現金、有利子負債、売上債権、棚卸資産
- 当期中のM&A、増資、事業売却
決算短信の貸借対照表は全体像を速く把握するのに適していますが、科目がまとめられている場合があります。重要な増減があれば、有価証券報告書・半期報告書や財務諸表注記へ進みます。
2.少なくとも3~5期分を並べる
一時的な増減と構造的な変化を区別するため、複数年を並べます。
例として、次の項目を表計算ソフトへ転記します。
- 現金及び預金
- 売上債権
- 契約資産
- 棚卸資産
- 有形固定資産
- のれん・無形固定資産
- 投資有価証券
- 繰延税金資産
- 仕入債務
- 契約負債
- 短期・長期の有利子負債
- 引当金
- 純資産・自己資本
- 自己株式
- 非支配株主持分
会計方針変更、企業結合、事業分離、決算期変更があれば、単純な前年比較ができない場合があります。
3.増減額と増減率を計算する
金額の増減だけでなく、増減率も確認します。
増減額=当期末残高-前期末残高
増減率=増減額÷前期末残高×100
前期残高が小さい科目では、増減率が極端に大きくなるため、金額の重要性も確認します。
4.共通サイズ貸借対照表を作る
各科目を総資産で割ると、企業規模の違いや構成変化を比較しやすくなります。
総資産構成比=各資産科目÷総資産×100
負債・純資産構成比=各負債・純資産科目÷総資産×100
たとえば、のれんが40億円から60億円へ増えても、総資産が400億円から1,000億円へ増えていれば構成比は低下します。反対に、金額の増加が小さくても総資産に占める比率が急上昇していれば重要です。
共通サイズ分析では、次の変化を確認します。
- 現金比率が低下していないか
- 売上債権・棚卸資産への資金拘束が増えていないか
- のれん・無形資産への依存が高まっていないか
- 短期負債の比率が上昇していないか
- 自己資本比率が低下していないか
5.売上高・売上原価との関係を計算する
売上債権、棚卸資産、仕入債務は、損益計算書と結び付けて回転日数を計算します。
残高が増えていても、売上規模の拡大に見合う範囲なら問題が小さい場合があります。逆に、売上が横ばいなのに残高が増え続ければ、回収や在庫に問題がある可能性があります。
6.有利子負債の満期表を作る
有利子負債を短期・長期に分けるだけでなく、可能であれば返済年ごとに並べます。
| 返済・償還時期 | 借入金 | 社債 | リース負債 | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 1年以内 | ||||
| 1年超2年以内 | ||||
| 2年超3年以内 | ||||
| 3年超4年以内 | ||||
| 4年超5年以内 | ||||
| 5年超 |
返済予定額を、次の資金源と比較します。
- 現金及び現金同等物
- 営業キャッシュフロー
- フリーキャッシュフロー
- 未使用コミットメントライン
- 売却可能資産
- 借換能力
返済資金を新たな借入だけに依存している企業は、信用市場が悪化したときの影響を受けやすくなります。
7.重要な注記を確認する
貸借対照表本表の科目だけでは、資産の質や負債条件を判断できません。重要度に応じ、次の注記を確認します。
- 金融商品の時価・信用リスク・流動性リスク
- 有価証券
- 棚卸資産
- 固定資産・減損
- のれん・企業結合
- リース
- 退職給付
- 税効果会計
- 引当金
- 担保資産
- 偶発債務・保証債務
- 関連当事者取引
- 後発事象
PDF内検索では、「担保」「財務制限条項」「減損」「のれん」「契約資産」「貸倒」「保証」「コミットメント」「後発事象」などの語句が役立ちます。
8.決算日後の変化を確認する
貸借対照表は決算日時点の写真です。決算日から発表日まで、または発表後に、次の取引が行われていないか確認します。
- 増資・新株予約権発行
- 社債・借入による資金調達
- M&A・事業売却
- 大型設備投資
- 自己株式取得
- 配当決議
- 災害・事故
- 訴訟・行政処分
- 債務超過解消策
後発事象として注記される場合もあれば、別の適時開示だけで公表される場合もあります。
9.同業他社と比較する
同業比較では、単純に自己資本比率や流動比率を並べるのではなく、次の条件をそろえます。
- 会計基準
- 決算月
- 連結範囲
- リース負債の扱い
- 有利子負債の定義
- M&Aの有無
- 事業構成
- 海外売上比率
- 季節性
複数事業を持つ企業は、全社比率だけでは比較しにくい場合があります。セグメント別資産と利益も確認します。
10.分析結果を投資メモへ落とし込む
分析後は、「安全・危険」という一語ではなく、次の形式で記録します。
財務上の強み:現金が有利子負債を上回り、営業キャッシュフローも安定している。売上債権と棚卸資産の回転日数は過去3年で改善している。
財務上の弱み:大型買収によってのれんが自己資本の45%へ上昇した。2年後に社債償還が集中し、変動金利借入の比率も高い。
確認すべき条件:買収先の営業利益とキャッシュフロー、のれん減損の前提、借換計画、ネットD/Eレシオの推移を四半期ごとに確認する。
強み、弱み、今後の確認条件を分けると、株価変動ではなく事実に基づいて投資仮説を更新しやすくなります。
貸借対照表の確認チェックリスト
資料の前提
- 連結貸借対照表を確認した
- 決算日を確認した
- 日本基準・IFRS・米国基準のいずれか確認した
- 前期末と比較した
- 少なくとも3~5期の推移を確認した
- 会計方針変更・決算期変更の有無を確認した
- M&A・事業売却・組織再編の影響を確認した
- 決算日後の適時開示を確認した
流動資産
- 現金及び預金の増減理由を確認した
- 現金増加が営業活動によるものか確認した
- 使用制限のある預金がないか確認した
- 売上債権の増加率を売上高と比較した
- 売上債権回転日数を確認した
- 貸倒引当金と引当率を確認した
- 契約資産の増加理由と請求条件を確認した
- 棚卸資産の内訳を確認した
- 棚卸資産回転日数を確認した
- 在庫評価損・廃棄損を確認した
- 短期貸付金・前渡金・その他流動資産の内訳を確認した
固定資産
- 有形固定資産の増減を設備投資・減価償却と照合した
- 建設仮勘定と稼働予定を確認した
- 固定資産回転率を確認した
- 減損損失と減損兆候を確認した
- 土地・賃貸等不動産の含み損益を確認した
- ソフトウェアなど無形資産の資産計上方針を確認した
- のれんの発生原因と残高を確認した
- 買収先の実績を買収時計画と比較した
- 投資有価証券の時価・含み損益を確認した
- 政策保有株式の保有目的を確認した
- 関係会社投資・長期貸付金の回収可能性を確認した
- 繰延税金資産の回収可能性を確認した
流動負債
- 仕入債務の増加率を売上原価と比較した
- 仕入債務回転日数を確認した
- サプライヤーファイナンスの有無を確認した
- 未払金・未払費用の内訳を確認した
- 契約負債・前受金の履行義務を確認した
- 短期借入金の増加理由を確認した
- 1年内返済予定の借入金・社債を確認した
- 流動負債の支払時期と利用可能な現金を比較した
固定負債
- 長期借入金・社債の返済予定を確認した
- 固定金利・変動金利の構成を確認した
- 通貨別の借入残高を確認した
- 担保・保証を確認した
- 財務制限条項と余裕度を確認した
- リース負債を有利子負債へ含めるか確認した
- 退職給付債務と年金資産を確認した
- 資産除去債務を確認した
- 引当金の増減理由を確認した
- 偶発債務・訴訟・保証債務を確認した
純資産
- 純資産と自己資本を区別した
- 資本金・資本剰余金の増減を確認した
- 利益剰余金の増減を利益・配当と照合した
- 自己株式の取得・処分・消却を確認した
- その他有価証券評価差額金を確認した
- 為替換算調整勘定を確認した
- 退職給付に係る調整累計額を確認した
- 新株予約権・転換社債などの潜在株式を確認した
- 非支配株主持分を確認した
- BPSと株式数の変化を確認した
財務指標・キャッシュフロー
- 運転資本を計算した
- 流動比率を計算した
- 当座比率を計算した
- 自己資本比率を計算した
- 有利子負債を定義して集計した
- ネットキャッシュまたはネットデットを計算した
- D/Eレシオ・ネットD/Eレシオを計算した
- 固定比率・固定長期適合率を確認した
- のれんを自己資本と比較した
- 売上債権・棚卸資産・仕入債務の回転日数を確認した
- キャッシュ・コンバージョン・サイクルを確認した
- 営業キャッシュフローと利益を比較した
- 借入返済額とフリーキャッシュフローを比較した
- 同業他社と同じ定義で比較した
すべての項目を毎回同じ深さで調べる必要はありません。最初の15分で重要な増減を抽出し、その企業に特有の資産・負債へ調査時間を配分します。
貸借対照表に関するよくある質問
総資産が大きい会社ほど安全ですか
安全とは限りません。
総資産の中身が、現金、回収可能性の高い債権、収益性のある設備で構成されている場合と、滞留在庫、回収困難な貸付金、減損リスクの高いのれんで構成されている場合では、質が異なります。
総資産の規模ではなく、資産の換金性・収益性と、負債の返済条件を確認します。
現金が多い会社なら安心ですか
現金が多いことは財務余力を示す場合がありますが、現金の出所と用途を確認する必要があります。
借入や増資直後で一時的に現金が多い場合、返済負担や希薄化が残ります。また、現金を長期間有効活用できなければ資本効率が低下します。
営業キャッシュフロー、有利子負債、投資計画、株主還元方針と合わせて確認します。
現金と有利子負債は相殺して見てもよいですか
ネットキャッシュ・ネットデットは有用ですが、総額も残します。
有利子負債100億円、現金100億円ならネットデットはゼロですが、現金が海外子会社に拘束され、借入が国内で直ちに返済必要なら、実際の流動性リスクは残ります。
総有利子負債、現金の利用可能性、返済期限を別々に確認します。
借入金が多い企業は財務が悪いということですか
借入金の多さだけでは判断できません。
借入によって収益性の高い設備や事業を取得し、安定したキャッシュフローで返済できるなら、資本を効率的に使える場合があります。
問題は、借入額だけではなく、資金使途、金利、返済期限、通貨、担保、財務制限条項、返済原資です。
流動比率は何%あれば安全ですか
すべての企業に共通する安全水準はありません。
流動比率が高くても在庫や回収困難な債権が多ければ支払余力は弱く、低くても現金販売と前受金を中心とする事業なら安定している場合があります。
同業他社、過去推移、当座比率、現金、営業キャッシュフロー、返済期限を確認します。
自己資本比率は何%なら優良ですか
一律の基準はありません。
設備投資の少ない企業と、大型インフラを長期借入で整備する企業では適正な資本構成が異なります。銀行・保険会社には一般企業の自己資本比率をそのまま使えません。
同業比較、利益の安定性、有利子負債、資金調達能力、資本効率を組み合わせます。
純資産と自己資本は同じですか
同じとは限りません。
連結決算の自己資本は一般に、純資産合計から株式引受権、新株予約権、非支配株主持分を控除した、親会社株主に帰属する部分を指します。
自己資本比率やBPSを計算するときは、決算短信の定義を確認します。
利益剰余金は会社が貯めた現金ですか
違います。
利益剰余金は、過去の利益から配当などを差し引いた会計上の累積額です。その資金は、現金だけでなく在庫、設備、子会社株式などへ使われています。
利益剰余金が大きくても現金が少ない企業はあります。
利益剰余金がマイナスなら倒産しますか
直ちに倒産するわけではありません。創業期の累積赤字、事業再編、過去の大型損失などでマイナスになる場合があります。
ただし、自己資本が薄く、現金流出が続き、借入返済や資金調達が難しい場合はリスクが高まります。現金ランウェイ、営業キャッシュフロー、資金調達計画を確認します。
自己株式は資産ですか
貸借対照表では資産として扱わず、純資産の株主資本から控除表示されます。
会社が自社株を取得すると現金が減り、自己株式の控除額が増えます。消却すれば発行済株式総数などが変わりますが、取得時点で支出した現金が戻るわけではありません。
のれんが多い会社は危険ですか
のれんが多いだけで危険とは判断できません。買収先が安定した利益とキャッシュフローを生み、買収価格を回収できれば問題が小さい場合があります。
ただし、のれんが自己資本に対して大きい、借入で買収した、買収先が計画未達という条件が重なると、減損と返済負担の両方に注意が必要です。
PBR1倍未満なら資産価値より株価が安いのですか
PBR1倍未満は、株価が帳簿上の1株当たり純資産を下回ることを示しますが、清算すればBPSを受け取れるという意味ではありません。
資産の売却価値、税金、清算費用、簿外債務、事業継続価値は帳簿価額と異なります。また、将来赤字が続けば純資産自体が減少します。
繰延税金資産は現金化できる資産ですか
通常の売却可能な資産ではありません。将来の課税所得と相殺することで、将来の税負担を軽減する効果を表します。
将来利益を確保できなければ回収できないため、赤字企業や業績変動の大きい企業では回収可能性を重点的に確認します。
棚卸資産が増えるのは悪いことですか
必ずしも悪くありません。需要増、繁忙期、供給制約への備え、新製品発売前の在庫など、合理的な理由があります。
売上以上の速度で増えていないか、回転日数が長期化していないか、旧製品や期限切れのリスクがないかを確認します。
売掛金が増えるのは売上成長の証拠ですか
売上増加に伴う場合もありますが、それだけでは判断できません。回収条件の緩和、顧客の支払遅延、売上計上時期の変化などでも増えます。
売上高との増加率比較、回転日数、貸倒引当金、期末後の回収を確認します。
契約負債が多いのは借金が多いということですか
契約負債は一般に、顧客から対価を受け取った後も、商品やサービスを提供する履行義務が残っている状態を示します。金融機関へ元利金を返済する借入金とは性質が異なります。
ただし、将来サービスを提供するための費用は必要であり、解約・返金条件がある場合もあります。契約内容と履行コストを確認します。
債務超過なら必ず上場廃止になりますか
債務超過は重大な財務問題ですが、直ちに必ず上場廃止となるわけではありません。市場区分や状況に応じた上場維持基準、改善期間などが関係します。
投資判断では、上場維持だけでなく、資金繰り、再建計画、増資による希薄化、監査意見、継続企業の前提を確認します。
四半期ごとに貸借対照表を比較すべきですか
比較する価値があります。ただし、季節性を考慮します。
賞与、納税、繁忙期在庫、配当、工事検収などにより、特定四半期の残高が毎年偏る企業があります。直前四半期だけでなく前年同期とも比較します。
貸借対照表だけで倒産リスクを判断できますか
できません。
貸借対照表から現金、負債、資産の質は確認できますが、将来の資金流入は営業キャッシュフロー、収益性、融資枠、事業環境に左右されます。
損益計算書、キャッシュ・フロー計算書、借入契約、継続企業の前提、監査報告書を合わせて確認します。
新しいリース会計で企業の財務が悪化したことになりますか
会計基準の適用によって使用権資産とリース負債が新たに計上され、総資産や負債が増え、自己資本比率が低下して見える場合があります。
契約そのものが新たに発生したわけではないため、会計上の表示変化と実際の事業悪化を区別します。一方、従来貸借対照表に十分表れていなかった支払義務が可視化される点は、リスク分析に有用です。
銀行や保険会社も同じ指標で分析できますか
一般事業会社と同じ指標だけでは分析できません。
銀行では貸出金、預金、不良債権、規制資本、保険会社では保険契約負債、運用資産、ソルベンシー関連指標などが重要です。業種別の財務諸表と規制開示を確認します。
まとめ
貸借対照表は、資産・負債・純資産の金額を確認するだけの資料ではありません。企業が調達した資金をどの資産へ配分し、その資産から利益と現金を生み、負債を返済できるかを分析するための資料です。
基本的な確認順は次のとおりです。
- 決算日、連結範囲、会計基準を確認する
- 総資産の増減要因を確認する
- 現金と流動負債を比較する
- 売上債権・契約資産・棚卸資産の回転を確認する
- 有形固定資産、無形固定資産、のれんの回収可能性を考える
- 短期・長期の有利子負債と返済期限を確認する
- 引当金、偶発債務、担保、財務制限条項を確認する
- 純資産と親会社株主に帰属する自己資本を区別する
- 流動比率、自己資本比率、D/Eレシオなどを計算する
- 損益計算書・キャッシュ・フロー計算書・注記と照合する
特に注意したいのは、次の点です。
- 現金が多くても、その出所が借入や増資なら返済負担や希薄化が残る
- 売上と利益が増えても、債権・在庫が膨らめば現金が不足することがある
- 借入金は金額だけでなく、資金使途、金利、通貨、返済期限が重要である
- のれんや無形資産は将来収益を生む可能性がある一方、減損リスクを持つ
- 利益剰余金は現金の積立額ではない
- 純資産には非支配株主持分などが含まれ、自己資本と一致しない場合がある
- 財務比率にすべての業種へ共通する絶対的な安全基準はない
- 貸借対照表は一時点の写真であり、決算日後の変化も確認する必要がある
貸借対照表を読む目的は、自己資本比率や流動比率が何%かを確認して終わることではありません。資産の質、負債の条件、資金回収の速度、損失吸収余力をつなげ、将来の利益とキャッシュフローによって現在の財務負担を支えられるかを説明できる状態にすることです。
毎期同じ順番で増減を追い、同業他社と比較し、財務注記まで確認すれば、総資産や現金残高といった表面的な数字だけに左右されにくくなります。
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貸借対照表の読み方を確認したうえで、決算書の残り2表もあわせてご覧ください。
使い方と免責
この記事は、日本基準を採用する一般的な事業会社の連結貸借対照表の読み方を、企業会計審議会・企業会計基準委員会が公表している会計基準と、財務諸表等規則・連結財務諸表規則などの法令および取引所ルールにもとづいて整理したものです。記載内容は、作成・確認した時点の公式情報にもとづいています。会計基準や開示制度の変更により、実際の内容と異なる場合があります。
本記事で用いた流動比率、自己資本比率、D/Eレシオ、キャッシュ・コンバージョン・サイクルなどの財務比率は、会計基準や開示規則が定める表示科目ではありません。同じ名称でも算式が異なる場合があるため、他の資料の数値と比べるときは算式を確認してください。
また、純資産の区分の名称と内訳は、連結貸借対照表と個別貸借対照表で異なります。本記事は連結貸借対照表を中心に扱っています。
本記事は一般的な説明であって、投資の助言ではありません。特定の企業、銘柄、業種または取引を推奨するものではなく、将来の株価や業績を示すものでもありません。会計処理や表示方法は、採用する会計基準、業種、契約条件、重要性などによって異なります。最終的な投資判断は、読者ご自身が最新の決算短信、有価証券報告書、財務諸表注記、適時開示などの公式情報を確認したうえで行ってください。
参照した公式情報
会計基準の発行主体は、企業会計審議会と企業会計基準委員会で異なります。会計基準のURLは、企業会計基準委員会の会計基準検索システムに掲載されているページです。
- 企業会計審議会「企業会計原則・同注解」(企業会計原則:昭和24年7月9日制定、昭和57年4月20日最終改正/注解:昭和29年7月14日制定、昭和57年4月20日最終改正。掲載:https://www.asb-j.jp/jp/accounting_standards_system/details.html?topics_id=81 )
- 企業会計審議会「外貨建取引等会計処理基準」(掲載:https://www.asb-j.jp/jp/accounting_standards_system/details.html?topics_id=80 )
- 企業会計審議会「研究開発費等に係る会計基準」(掲載:https://www.asb-j.jp/jp/accounting_standards_system/details.html?topics_id=82 )
- 企業会計審議会「固定資産の減損に係る会計基準」(平成14年8月9日。掲載:https://www.asb-j.jp/jp/accounting_standards_system/details.html?topics_id=83 )
- 企業会計審議会「連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準」(掲載:https://www.asb-j.jp/jp/accounting_standards_system/details.html?topics_id=85 )
- 企業会計基準委員会「企業会計基準第1号 自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準」(https://www.asb-j.jp/jp/accounting_standards_system/details.html?topics_id=28 )
- 企業会計基準委員会「企業会計基準第2号 1株当たり当期純利益に関する会計基準」(https://www.asb-j.jp/jp/accounting_standards_system/details.html?topics_id=29 )
- 企業会計基準委員会「企業会計基準適用指針第4号 1株当たり当期純利益に関する会計基準の適用指針」(https://www.asb-j.jp/jp/accounting_standards_system/details.html?topics_id=97 )
- 日本取引所グループ「上場維持基準の詳細 流通株式」(https://www.jpx.co.jp/equities/listing/continue/details/02.html )
- 企業会計基準委員会「企業会計基準第5号 貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準」(https://www.asb-j.jp/jp/accounting_standards_system/details.html?topics_id=31 )
- 企業会計基準委員会「企業会計基準第6号 株主資本等変動計算書に関する会計基準」(https://www.asb-j.jp/jp/accounting_standards_system/details.html?topics_id=32 )
- 企業会計基準委員会「企業会計基準第9号 棚卸資産の評価に関する会計基準」(https://www.asb-j.jp/jp/accounting_standards_system/details.html?topics_id=24 )
- 企業会計基準委員会「企業会計基準第10号 金融商品に関する会計基準」(https://www.asb-j.jp/jp/accounting_standards_system/details.html?topics_id=109 )
- 企業会計基準委員会「企業会計基準第11号 関連当事者の開示に関する会計基準」(https://www.asb-j.jp/jp/accounting_standards_system/details.html?topics_id=35 )
- 企業会計基準委員会「企業会計基準第13号 リース取引に関する会計基準」(https://www.asb-j.jp/jp/accounting_standards_system/details.html?topics_id=36 )
- 企業会計基準委員会「企業会計基準第16号 持分法に関する会計基準」(https://www.asb-j.jp/jp/accounting_standards_system/details.html?topics_id=37 )
- 企業会計基準委員会「企業会計基準第17号 セグメント情報等の開示に関する会計基準」(https://www.asb-j.jp/jp/accounting_standards_system/details.html?topics_id=38 )
- 企業会計基準委員会「企業会計基準第18号 資産除去債務に関する会計基準」(https://www.asb-j.jp/jp/accounting_standards_system/details.html?topics_id=72 )
- 企業会計基準委員会「企業会計基準第20号 賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準」(https://www.asb-j.jp/jp/accounting_standards_system/details.html?topics_id=73 )
- 企業会計基準委員会「企業会計基準第21号 企業結合に関する会計基準」(https://www.asb-j.jp/jp/accounting_standards_system/details.html?topics_id=123 )
- 企業会計基準委員会「企業会計基準第22号 連結財務諸表に関する会計基準」(https://www.asb-j.jp/jp/accounting_standards_system/details.html?topics_id=111 )
- 企業会計基準委員会「企業会計基準第23号『研究開発費等に係る会計基準』の一部改正」(https://www.asb-j.jp/jp/accounting_standards_system/details.html?topics_id=112 )
- 企業会計基準委員会「企業会計基準第25号 包括利益の表示に関する会計基準」(https://www.asb-j.jp/jp/accounting_standards_system/details.html?topics_id=22 )
- 企業会計基準委員会「企業会計基準第26号 退職給付に関する会計基準」(https://www.asb-j.jp/jp/accounting_standards_system/details.html?topics_id=113 )
- 企業会計基準委員会「企業会計基準第28号『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(https://www.asb-j.jp/jp/accounting_standards_system/details.html?topics_id=114 )
- 企業会計基準委員会「企業会計基準第29号 収益認識に関する会計基準」(https://www.asb-j.jp/jp/accounting_standards_system/details.html?topics_id=13 )
- 企業会計基準委員会「企業会計基準第34号 リースに関する会計基準」(https://www.asb-j.jp/jp/accounting_standards_system/details.html?topics_id=157 )
- 企業会計基準委員会「企業会計基準第35号『固定資産の減損に係る会計基準』の一部改正」(https://www.asb-j.jp/jp/accounting_standards_system/details.html?topics_id=158 )
- 企業会計基準委員会「企業会計基準適用指針第26号 繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」(https://www.asb-j.jp/jp/accounting_standards_system/details.html?topics_id=54 )
- 企業会計基準委員会「実務対応報告第19号 繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い」(https://www.asb-j.jp/jp/accounting_standards_system/details.html?topics_id=59 )
- 企業会計基準委員会「実務対応報告第41号 取締役の報酬等として株式を無償交付する取引に関する取扱い」(https://www.asb-j.jp/jp/accounting_standards_system/details.html?topics_id=67 )
- 株式会社東京証券取引所「決算短信・四半期決算短信 作成要領等」(日本取引所グループのサイトに掲載。https://www.jpx.co.jp/equities/listed-co/format/summary/ )
- e-Gov法令検索「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和三十八年大蔵省令第五十九号。https://laws.e-gov.go.jp/law/338M50000040059 )
- e-Gov法令検索「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和五十一年大蔵省令第二十八号。https://laws.e-gov.go.jp/law/351M50000040028 )
- 金融庁「EDINET」(https://disclosure2.edinet-fsa.go.jp/ )
- IFRS Foundation「IFRS 3 Business Combinations」(https://www.ifrs.org/issued-standards/list-of-standards/ifrs-3-business-combinations/ )
- IFRS Foundation「IFRS 16 Leases」(https://www.ifrs.org/issued-standards/list-of-standards/ifrs-16-leases/ )
- IFRS Foundation「IAS 1 Presentation of Financial Statements」(https://www.ifrs.org/issued-standards/list-of-standards/ias-1-presentation-of-financial-statements/ )
- IFRS Foundation「IAS 36 Impairment of Assets」(https://www.ifrs.org/issued-standards/list-of-standards/ias-36-impairment-of-assets/ )
- IFRS Foundation「IAS 38 Intangible Assets」(https://www.ifrs.org/issued-standards/list-of-standards/ias-38-intangible-assets/ )
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