債券(国債・社債)投資の基礎を確認する
債券に関心を持ったとき、よく耳にするのが「債券は株式より安全」という言い回しかもしれません。けれども、その前に確認しておきたいのは、債券とはそもそもどのような仕組みの商品で、どのようなリスクを伴うのかという点です。「安全」という印象だけで理解すると、見落としやすい論点がいくつかあるためです。
この記事では、債券投資を始める前に一般に確認される基本項目を、公式情報ベースで整理します。額面・利率・償還・利回りといった基本の仕組み、国債と社債の違い、金利と価格の関係、そして信用リスクや価格変動リスクといった点を、「どの債券を買うか」ではなく「債券とは何か、何を見て自分で確認するか」を確認するための見取り図として読んでいただくことを想定しています。具体的な利率や利回り、格付けは、銘柄や時点によって異なるため、各商品の公式情報や目論見書でご確認ください。
なお、株式・投資信託・債券に共通する証券取引のリスクは、証券取引のリスクを確認するで、投資信託という商品そのものの基本は投資信託を始める前に確認したい基本で整理しています。本記事は、これらをふまえたうえで「債券という商品の基本」に絞って確認します。
債券とはどのような商品か
債券とは、国や会社などが資金を借り入れるときに発行する、一種の借入証書(借りたことを証明する書面)にあたるものです。J-FLEC(金融経済教育推進機構)が運営する情報では、債券は「いつ返済するか」「利子はどれくらいか」といった条件があらかじめ決められて発行されると説明されています。このうち、会社が発行した債券が社債です。
投資家は債券を購入すると、原則として定期的に利子を受け取り、満期(償還)の日に額面金額を償還金として受け取れる仕組みです。株式と違い、利率(クーポン)や満期日があらかじめ決められて発行される点が、債券の基本的な特徴とされています。ただし、これは発行体が予定どおり支払いを行うことが前提であり、後述するように、その前提が崩れる可能性(信用リスク)がある点には注意が必要です。
額面金額・利率(クーポン)・償還(満期)
債券を理解するうえで、最初に押さえておきたいのが次の三つの言葉です。
- 額面金額:債券に記載された金額で、満期(償還)時に払い戻される金額の基準になるものです。
- 利率(クーポン):額面金額に対して、毎年支払われる利子の割合を指します。
- 償還(満期):あらかじめ決められた満期の日に、発行体が額面金額を払い戻すことをいいます。
これらの条件が発行のときに決められている点が、株式との大きな違いとして説明されます。
利回りとは何か(利率との違い)
入門者が混同しやすいのが、利率(クーポン)と利回りの違いです。利率は、額面金額に対して毎年支払われる利子の割合を指します。これに対して利回りは、その債券を購入してから満期まで保有した場合などに、得られると見込まれる一年あたりの総合的な収益率を、購入価格に対して示したものです。
両者は同じではありません。たとえば、債券を額面より安い価格で購入できた場合、満期に額面で償還されれば、利子に加えてその差額も収益になりうるため、利回りは利率と異なる値になります。利率と利回りは別の概念である、という点を整理しておくことが基本になります。なお、具体的な利率や利回りの数値は、銘柄や購入時点によって異なるため、各商品の公式情報で確認することになります。
国債と社債の違いを確認する
債券は、誰が発行するかによって呼び方が分かれます。代表的なものが、国が発行する国債と、会社が発行する社債です。
国債について、金融広報中央委員会(知るぽると)の情報では、債券の中で相対的に信用度が高いとされ、流通量も多いことから換金性にも優れていると説明されています。ここで注意しておきたいのは、これはあくまで他の債券と比べたときの相対的な位置づけであって、「国債だから安全」「絶対に損をしない」という意味ではない、という点です。国債であっても、市場で売買する場合には価格が変動し、途中で売却すれば損失が生じることがあります。
一方の社債は、企業が設備投資などの事業資金を調達するために発行する債券です。日本証券業協会の情報によると、機関投資家向けの社債は最低購入単位が大きい一方、個人が購入できるよう最低購入単位を小口化したものが「個人向け社債」と呼ばれます。国債と社債では、後述する信用リスクの程度が一般に異なる、という点も確認しておきたい違いです。
個人向け国債の三つの商品
国が個人を対象に発行している国債として、財務省が扱う「個人向け国債」があります。財務省の情報によると、個人向け国債には次の三つの商品があるとされています。
- 変動10年:適用される利率が半年ごとに見直される変動金利で、満期は10年です。
- 固定5年:発行時に決まった利率が満期まで変わらない固定金利で、満期は5年です。
- 固定3年:固定5年と同じく固定金利で、満期は3年です。
これら三つに共通する条件として、財務省の情報では、最低金利として年0.05%(年率)が設定されているとされています。また、中途換金については、原則として発行から一定期間は換金できず、その期間の経過後はいつでも換金できると説明されています。中途換金の際には、直前の一定回数分の利子相当額などが差し引かれる扱いになっているとされ、その一方で国が額面金額で買い取るため、中途換金時にも元本が確保される設計と説明されています。
ここで重要なのは、こうした最低金利や中途換金時の元本確保といった条件は、あくまで個人向け国債に固有のものであり、社債や、市場で売買する一般の国債には当てはまらない、という点です。「債券なら元本が確保される」と一般化することはできません。最低金利の水準、中途換金の具体的な条件(換金できない期間や差し引かれる金額の計算方法など)は時点や商品によって扱いが定められているため、必ず財務省(個人向け国債)の公式情報で確認してください。
債券価格と金利の関係
債券を理解するうえで欠かせないのが、債券の価格と金利の関係です。日本証券業協会の情報によると、一般に、金利が上昇すると債券の市場価格は下がり、金利が低下すると債券の市場価格は上がる、という関係にあるとされています。両者は逆の方向に動く(逆相関の)関係にある、と整理されます。
この関係があるため、債券を満期まで保有せず途中で売却する場合には、その時点の市場価格、すなわち時価での売却となります。日本証券業協会の情報でも、債券は原則として満期(償還)まで保有すれば額面が返ってくる一方、中途換金は時価での売却となるため、値下がりしていれば損をすることがあると説明されています。「債券は満期まで持てば額面が戻る」という性質と、「途中で売れば価格変動の影響を受ける」という性質は、分けて理解しておく必要があります。
債券のリスクを確認する
債券にも、確認しておきたい代表的なリスクがいくつかあります。「債券は安全」という一般的な印象とは別に、次のようなリスクがある点を前提に理解しておくことが基本になります。
信用リスク(発行体リスク)
信用リスクは、発行体リスクとも呼ばれます。日本証券業協会の情報によると、社債を発行した企業などが倒産した場合には、元本や利子の支払いが行われないことがある、とされています。債券は満期に額面が償還される仕組みですが、それは発行体が予定どおり支払いを行えることが前提であり、その前提が崩れる可能性があるということです。
こうした発行体の信用度を評価するために、第三者である格付機関が「格付け」を付与し、発行者が利子や元本を予定どおり支払えるかどうかを評価しているとされています。なお、具体的な格付けの記号や水準は、銘柄や時点によって異なり、その意味するところも一律ではないため、この記事では特定の格付けには触れません。社債の重要な情報は、目論見書や有価証券報告書、発行会社の開示資料などで確認することになります。
価格変動リスク(途中売却)
すでに見たとおり、債券の市場価格は金利の動きなどによって変動します。日本証券業協会の情報によると、こうした市場価格が変動するリスクを価格変動リスクと呼びます。満期まで保有する場合とは異なり、中途換金する場合には、その時点の時価で売却することになるため、値下がりしていれば購入時の金額を下回り、損失が生じることがあります。
流動性リスク
流動性リスクとは、必要なときに希望どおりに換金・売却できない可能性を指します。日本証券業協会の情報によると、社債は中途換金が可能とされる一方で、市場環境や発行体の信用リスクの状況によっては換金性が低くなることがあり、買い手が見つかりにくく、証券会社も買い取りに応じにくくなる場面があるとされています。その場合、「購入した社債が売りたいときに売れない」という事態も生じうる、と説明されています。
また、社債の売買は投資家と証券会社との相対の取引で行われることが多く、実際の取引価格の水準を把握することは容易でないとされています。日本証券業協会は、参考となる情報として「個人向け社債等の店頭気配情報」を公表していますが、これはあくまで参考値である点に留意が必要です。
「元本保証」をどう理解するか
ここまで見てきた内容をふまえて、債券と「元本保証」の関係を整理しておきます。債券は、満期まで保有すれば原則として額面が償還される仕組みですが、これは発行体が倒産しないことが前提です。信用リスクがある以上、すべての債券について「元本保証」と一律に言えるものではありません。
個人向け国債のように、中途換金時にも国が額面で買い取り、元本が確保される設計と説明されている商品もあります。ただし、繰り返しになりますが、これは個人向け国債に固有の条件であり、社債や、市場で売買する一般の国債には当てはまりません。「債券は安全」「債券なら元本が守られる」と一般化することは適切ではない、という点が、債券を理解するうえで最も重要な前提になります。
各商品が元本についてどのような扱いになっているか、中途換金にどのような条件があるかは、商品ごとに異なります。社債であれば目論見書や発行会社の開示資料、個人向け国債であれば財務省の公式情報といったかたちで、必ず一次情報で確認することが基本になります。
用語整理
この記事で扱った用語のうち、初めての方が確認しておきたいものを整理します。
- 債券:国や会社などが資金を借り入れるときに発行する、借入証書にあたる金融商品。利率や満期があらかじめ決められて発行されます。
- 額面金額:債券に記載された金額で、満期(償還)時に払い戻される金額の基準になるもの。
- 利率(クーポン):額面金額に対して毎年支払われる利子の割合。
- 利回り:購入してから満期まで保有した場合などに見込まれる、購入価格に対する一年あたりの総合的な収益率。利率とは異なる概念です。
- 償還(満期):あらかじめ決められた満期の日に、発行体が額面金額を払い戻すこと。
- 国債/社債:国が発行する債券が国債、会社が発行する債券が社債。
- 信用リスク(発行体リスク):発行体の経営悪化や倒産により、元本や利子の支払いが行われない可能性。
- 価格変動リスク:金利の動きなどにより債券の市場価格が変動し、中途換金時に損失が生じる可能性。
- 流動性リスク:必要なときに希望どおりに換金・売却できない可能性。
- 格付け:格付機関が、発行者の利子・元本の支払い能力(信用度)を評価したもの。
よくある確認事項
債券は安全な商品ですか
「債券=安全」と一律に言うことはできません。債券には、発行体の倒産により元本や利子が支払われない信用リスク、金利の動きで市場価格が変動する価格変動リスク、希望どおりに売れない流動性リスクがあります。満期まで保有すれば原則として額面が償還される仕組みですが、それは発行体が倒産しないことが前提です。「株式より値動きが小さいと説明されることがある」ことと「安全である」ことは別であり、債券にも相応のリスクがある点を前提に確認する必要があります。
金利が上がると債券はどうなりますか
一般に、金利が上昇すると債券の市場価格は下がり、金利が低下すると市場価格は上がる、という逆の関係にあるとされています。そのため、満期まで保有せず途中で売却する場合には、その時点の市場価格(時価)での売却となり、値下がりしていれば損失が生じることがあります。一方で、満期まで保有すれば、発行体が倒産しない限り原則として額面が償還されます。途中で売る場合と満期まで持つ場合とで、価格変動の影響の受け方が異なる点に注意が必要です。
個人向け国債は元本保証ですか
財務省の情報では、個人向け国債は中途換金の際にも国が額面で買い取るため、元本が確保される設計と説明されています。ただし、これは個人向け国債に固有の条件であり、社債や市場で売買する一般の国債には当てはまりません。「債券なら元本が確保される」と一般化することはできない点に注意が必要です。最低金利や中途換金の具体的な条件は、財務省(個人向け国債)の公式情報で確認してください。
国債と社債はどう違いますか
国債は国が、社債は会社が発行する債券です。国債は、債券の中では相対的に信用度が高いとされ、流通量も多いことから換金性にも優れているとされますが、これは他の債券と比べたときの相対的な位置づけです。社債は発行する企業ごとに信用度が異なり、企業が倒産した場合には元本や利子が支払われないことがあります。どちらも市場で売買する場合には価格が変動するため、信用リスクや価格変動リスクの程度を、商品ごとに確認することが基本になります。
利率と利回りは同じものですか
同じではありません。利率(クーポン)は、額面金額に対して毎年支払われる利子の割合です。利回りは、その債券を購入してから満期まで保有した場合などに見込まれる、購入価格に対する一年あたりの総合的な収益率です。たとえば額面より安く購入できれば、利子に加えてその差額も収益になりうるため、利回りは利率と異なる値になります。具体的な数値は銘柄や購入時点によって異なるため、各商品の公式情報で確認することになります。
まとめ
この記事では、債券投資を始める前に一般に確認される基本項目を整理しました。債券は、国や会社が資金を借り入れるときに発行する借入証書にあたるもので、額面金額・利率(クーポン)・償還(満期)といった条件があらかじめ決められて発行されます。利率と利回りは異なる概念であり、金利が上昇すると債券の市場価格は下がるという逆の関係がある点も、確認しておきたい基本です。
そして最も重要なのは、「債券=安全」「債券なら元本が守られる」と一律に言えるものではない、という点です。債券には、信用リスク・価格変動リスク・流動性リスクがあり、満期まで保有すれば額面が償還されるのも、発行体が倒産しないことが前提です。個人向け国債のように元本が確保される設計と説明される商品もありますが、それは個人向け国債に固有の条件であって、他の債券に一般化することはできません。各商品の利率や元本・中途換金の条件は、財務省(個人向け国債)や発行会社の開示資料、目論見書といった公式の一次情報で確認するのが基本となります。自分が気になる債券を確認するための見取り図として使っていただければと思います。
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