投資信託を始める前に確認したい基本
投資信託に関心を持ったとき、最初に気になるのは「どのファンドを選ぶか」かもしれません。けれども、その前に確認しておきたいのは、投資信託とはそもそもどのような仕組みで、自分で何を確認すべきかという点です。コストや分配金の扱いには、入門者が誤解しやすい論点がいくつかあるためです。
この記事では、投資信託を始める前に一般に確認される基本項目を、公式情報ベースで整理します。「投資信託とは何か、何を見て自分で判断するか」を確認するための見取り図として読んでいただくことを想定しています。具体的なコストの料率や税率、対象となる商品は、ファンドや会社、時点によって異なるため、目論見書や各社・公式機関の公式情報でご確認ください。
なお、証券口座やNISAの基本的な仕組みは、証券会社を選ぶ前に確認したい基本項目やNISAを始める前に確認したいポイントで整理しています。本記事は、これらをふまえたうえで「投資信託という商品そのものの基本」に絞って確認します。
投資信託とはどのような仕組みか
投資信託(ファンド)とは、複数の投資家から集めた資金を一つにまとめ、運用の専門家(運用会社)が株式や債券などに分散して投資・運用し、その成果を投資家に分配・帰属させる仕組みの金融商品です。一人ひとりは少額からでも、まとまった資金として幅広い対象に分散して投資できる点が特徴とされています。
ここで前提として確認しておきたいのは、専門家が運用するからといって、必ず利益が出るわけではないという点です。投資信託は預金とは異なり、元本が保証されていません。運用の成果は市場の状況によって変わり、購入時より値下がりすれば、投資した金額を下回ること(元本割れ)が生じうるものです。「専門家が運用する=安全」「分散しているから損をしない」という受け取り方をしないよう、仕組みを正しく理解しておくことが基本になります。
投資信託にかかるコストを確認する
投資信託には、購入するとき・保有している間・解約(換金)するときの、それぞれの段階でコストがかかる場合があります。大きく整理すると、次の三つです。
- 購入時手数料:購入(申込)時にかかる手数料。販売する会社によって異なり、購入時手数料がかからないもの(ノーロードと呼ばれます)もあります。
- 信託報酬(運用管理費用):投資信託を保有している間、継続的に信託財産から差し引かれる費用。運用や管理の対価にあたります。
- 信託財産留保額:解約(換金)時に差し引かれる場合がある費用。差し引かれない商品もあります。
これらのコストの有無や水準は、ファンドや会社によって異なります。同じ「コスト」でも、購入時だけにかかるものと、保有している間ずっとかかり続けるものがある点に注意が必要です。具体的な料率は商品ごとに異なり、目論見書で確認できます。
なお、保有中にかかる信託報酬を含む口座やコストの全体像については、証券会社を選ぶ前に確認したい基本項目でも整理しています。
基準価額とは何か
基準価額とは、投資信託の「値段」にあたるものです。ファンドが保有する資産などから算出される純資産総額を、受益権の総口数で割って計算され、通常は一万口あたりの金額で表示されることが一般的です。
入門者が確認しておきたいのは、基準価額が原則として一日に一回算出されるという点です。株式のように取引時間中にリアルタイムで動くものではなく、その日の取引が締まったあとに、組み入れている資産の評価額などをもとに計算・公表されます。そのため、注文した時点では、実際にいくらの基準価額で取引が成立するかは確定していない、という性質があります。
分配金の2種類を確認する(普通分配金と元本払戻金)
投資信託では、運用の状況に応じて分配金が支払われることがあります。ここで入門者が誤解しやすいのが、「分配金が出る=それだけ儲かっている」とは限らない、という点です。分配金には、性質の異なる二つの種類があります。
- 普通分配金:運用によって生じた収益(値上がり益や利子・配当など)から支払われる部分です。利益の分配にあたるため、課税の対象になります。
- 元本払戻金(特別分配金):投資した元本の一部が払い戻されたものとみなされる部分です。「特別分配金」とも呼ばれます。利益ではないため、課税の対象にはなりません。
二つの区分は、分配金が支払われたあとの基準価額が、その投資家の個別元本(その人にとっての取得価額にあたる金額)を下回るかどうかで決まります。下回る部分が元本払戻金(特別分配金)にあたります。
ここで正確に理解しておきたいのは、元本払戻金(特別分配金)は「非課税だからお得」というものではない、という点です。これは利益の分配ではなく、自分が出した元本の一部が戻ってきたものです。元本払戻金を受け取ると、その分だけ個別元本(取得価額)が引き下げられます。つまり、手元のファンドの評価額がその分だけ減っていることになります。分配金の額が大きいことだけを見て、利益が出ていると判断できるわけではない、という点に注意が必要です。
なお、分配金にかかる課税の具体的な扱いは、国税庁の公式情報で確認できます。
インデックス型とアクティブ型の違い
投資信託は、運用の方針によって、大きくインデックス型とアクティブ型に分けて説明されることがあります。これは、目指す方向やコストの考え方が異なる区分です。
- インデックス型(インデックス運用):特定の指数(日経平均株価、TOPIX、S&P500など)に連動する成果を目指す運用です。連動の対象となる指数が、運用方針として明示されます。
- アクティブ型(アクティブ運用):指数を上回る成果などを目指して、運用会社が銘柄の選択などを積極的に行う運用です。
一般に、運用にかかる手間の違いから、コスト(信託報酬)の水準が異なる傾向があるとされますが、これも商品ごとに異なります。また、インデックス型であっても指数そのものが値動きするため、価格変動のリスクがなくなるわけではありません。「指数に連動するから安全」という受け取り方は適切ではない、という点にも注意が必要です。どちらの考え方が自分に合うかは、目論見書で運用方針を確認したうえで判断する観点があります。
目論見書・運用報告書で確認する
投資信託のコスト・リスク・運用方針といった重要な情報は、公式の資料で確認できます。代表的なものが、目論見書と運用報告書です。
- 目論見書(投資信託説明書):購入する前に確認する資料です。投資の方針、想定されるリスク、購入時手数料や信託報酬などの費用、投資の対象などが記載されています。
- 運用報告書:保有している間や運用後に交付される資料で、ファンドの運用状況や実績、費用などが報告されます。
ここまで見てきたコストの料率や、どのリスクを負うか、どのような運用方針かといった点は、いずれも最終的にはこれらの資料で確認することになります。気になるファンドがあるときは、まず目論見書で運用方針と費用を確認する、というのが基本の流れになります。
NISAとの関係(簡潔に)
投資信託は、NISA(つみたて投資枠・成長投資枠)を使って保有することもできます。ただし、どの投資信託でもNISAの対象になるわけではなく、対象となる商品には一定の条件があります。
NISAの投資枠や非課税の限度額といった制度の詳細、対象商品の条件については、NISAを始める前に確認したいポイントで整理しています。投資信託とNISAを組み合わせて考える際は、あわせてご確認ください。
投資信託のリスクを確認する
すでに触れたとおり、投資信託は預金とは異なり、元本が保証されていません。基準価額は値動きし、購入時より下がれば元本割れが生じうるものです。
どのようなリスクを負うかは、そのファンドが何に投資しているかによって異なります。主なリスク要因の例としては、次のようなものがあります。
- 価格変動リスク:組み入れている株式や債券などの価格が変動するリスク。
- 為替変動リスク:外貨建ての資産を組み入れる場合に、円相場の変動によって円換算の損益が変わるリスク。
- 信用リスク:組み入れている債券などの発行体の信用状況が悪化するリスク。
- 金利変動リスク:金利の変動によって、組み入れている資産の価格が影響を受けるリスク。
どのリスクをどの程度負うかはファンドによって異なるため、これらも目論見書で確認することが基本になります。「分散しているから損をしない」わけではなく、分散によって和らげられるリスクと、そうでないリスクがある、という前提を理解しておくことが大切です。
用語整理
この記事で扱った用語のうち、初めての方が確認しておきたいものを整理します。
- 投資信託(ファンド):複数の投資家から集めた資金をまとめ、運用の専門家が株式や債券などに分散して投資・運用する金融商品。元本は保証されません。
- 基準価額:投資信託の値段にあたるもの。純資産総額を受益権の総口数で割って算出され、原則として一日に一回計算されます。
- 信託報酬(運用管理費用):投資信託を保有している間、継続的に差し引かれる費用。
- 信託財産留保額:解約(換金)時に差し引かれる場合がある費用(かからない商品もあります)。
- 普通分配金/元本払戻金(特別分配金):分配金の区分。普通分配金は運用の収益から支払われ課税の対象、元本払戻金(特別分配金)は元本の払い戻しにあたり課税の対象になりません。
- 個別元本:その投資家にとっての取得価額にあたる金額。元本払戻金を受け取ると引き下げられます。
- 目論見書/運用報告書:購入前に確認する資料と、保有中・運用後に交付される資料。運用方針・リスク・費用などが記載されます。
- インデックス型/アクティブ型:運用方針の区分。指数への連動を目指すものと、指数を上回る成果などを目指すもの。優劣を表すものではありません。
よくある確認事項
分配金が多い投資信託ほどお得ですか
分配金の額が大きいことだけで、お得とは判断できません。分配金には、運用の収益から支払われる普通分配金(課税の対象)と、自分の元本の払い戻しにあたる元本払戻金(特別分配金。課税の対象外)の二種類があります。元本払戻金を受け取ると、その分だけ個別元本(取得価額)が引き下げられ、手元のファンドの評価額もその分減ります。分配金が出ること自体は、必ずしも利益が出ていることを意味しないため、運用の状況とあわせて見る必要があります。
インデックス型とアクティブ型はどちらが良いですか
両者は、連動を目指す対象や、運用にかかるコストの考え方が異なる区分です。インデックス型であっても価格変動のリスクはあり、アクティブ型が必ず指数を上回るわけでもありません。どちらの考え方が自分に合うかは、目論見書で運用方針と費用を確認したうえで判断することが基本になります。
基準価額はいつ決まりますか
基準価額は、原則として一日に一回算出されます。株式のように取引時間中にリアルタイムで動くものではなく、その日の取引が締まったあとに、組み入れている資産の評価額などをもとに計算・公表されます。注文した時点では、実際にいくらの基準価額で取引が成立するかは確定していない点に注意が必要です。
投資信託は元本保証がありますか
投資信託は預金とは異なり、元本は保証されていません。基準価額は値動きし、購入時より下がれば元本割れ(投資した金額を下回ること)が生じうるものです。専門家が運用することや、分散して投資することは、リスクを和らげる工夫ではありますが、元本を保証するものではありません。
コストはどこで確認できますか
購入時手数料・信託報酬(運用管理費用)・信託財産留保額といったコストは、ファンドごとに異なります。具体的な料率は、購入前に交付される目論見書で確認できます。コストの有無や水準は商品によって幅があるため、気になるファンドがあるときは、まず目論見書で費用と運用方針を確認することが基本になります。
まとめ
この記事では、投資信託を始める前に一般に確認される基本項目を整理しました。投資信託は、複数の投資家から集めた資金を専門家が分散して運用する仕組みで、元本は保証されません。確認したい基本は、購入時・保有中・解約時の三つのコスト、一日に一回算出される基準価額の見方、分配金の二種類(運用益からの普通分配金と、元本の払い戻しにあたる元本払戻金)の違い、そしてインデックス型とアクティブ型という運用方針の区分です。これらの料率やリスク、運用方針は、いずれも目論見書や運用報告書といった公式の資料で確認するのが基本となります。自分が気になるファンドを確認するための見取り図として使っていただければと思います。
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