FXの自動売買(リピート系)の仕組みと確認ポイント

FX(外国為替証拠金取引、foreign exchange)の自動売買のなかに、一定の値幅で売買を繰り返す、いわゆる「リピート系」と呼ばれるものがあります。名前を聞いたことはあっても、それが「何を自動化しているのか」「どういう相場で損失が膨らみやすいのか」までは整理できていない人も多いと思います。この記事では、リピート系と呼ばれる自動売買の仕組みと考え方を、公的機関が公表している情報をもとに中立に整理します。どの自動売買が優れているかを決めたり、自動売買の利用を勧めたりするものではなく、その仕組みと、利用前に確認しておきたい点を、自分で判断するための前提として確認していただくことを目的としています。

最初に、いくつか前提をお伝えします。第一に、自動売買は「自動だから手間なく儲かる」というものではありません。後述するように、金融庁はこうした勧誘文句に注意を呼びかけています。自動売買は利益を保証するものではなく、相場の状況によっては損失が生じます。第二に、本記事が扱うのは「何を自動化しているか」という売買の仕組みの側であり、自動売買のプログラム(EA)を継続的に動かすための運用環境(自宅のパソコンやVPSなど)については扱いません。運用環境の話はFX自動売買(EA)を使うなら確認したい運用環境とVPSの基礎で別に整理しています。本記事は、その手前にある「自動売買が相場に対してどう注文を出しているのか」という仕組みの側に焦点を絞ります。

まず前提:自動売買は「手間なく儲かる」ものではない

自動売買は利益を保証するものではないという前提を、損失の発生や勧誘文句への注意などの観点で整理した図

仕組みの話に入る前に、土台となる前提を確認します。自動売買は、利益を約束するものではありません。

金融庁は、令和5年(2023年)4月4日付の「『FX取引・暗号資産投資の勧誘』にご注意!!」という注意喚起のなかで、「『自動売買ソフトを使えば、なにもしなくても儲かる』などと言って、FX・バイナリーオプション・暗号資産等への投資を一方的に勧めてくるケースが以前より発生しています」と述べ、注意を呼びかけています。つまり、「自動売買ソフトを使えば、なにもしなくても儲かる」という言葉は、金融庁が名指しで注意を促している勧誘文句にあたります。

このことは、自動売買そのものを否定するものではありません。ただし、「自動だから手間がかからず、放っておいても利益が出る」という前提で理解するのは適切ではない、という点をはじめに押さえておく必要があります。自動売買も、相場の動きによっては損失が生じる取引です。以下では、この前提のもとで、リピート系と呼ばれる自動売買が何を自動化しているのかを整理します。

リピート系の自動売買は何を自動化しているのか

リピート系の自動売買が、価格帯設定・新規注文・決済注文・反復という流れで売買を繰り返す仕組みを示した図

「リピート系」「リピート注文」「トラップ系」といった呼び方は、会社や比較サイトなどで使われている通称であり、公的機関が定義した正式な用語ではありません。本記事でも、特定の会社の仕様を示す言葉としてではなく、「一定の値幅で売買を繰り返す自動売買の一類型」を指す通称として、中立に用います。

リピート系と呼ばれる自動売買は、一般に、あらかじめ決めた価格の幅(値幅)ごとに、新規の注文と決済の注文をセットで置いておき、相場の動きに応じて、その売買を自動的に繰り返していくもの、と説明されます。たとえば、ある価格帯のなかで、相場が下がったところで買い、少し上がったところで決済し、また下がったら買う、という動きを、人が都度判断するのではなく、設定したルールに従って繰り返していくイメージです。

ここで反復されている「新規注文と決済注文をセットで出しておく」という発注のかたちは、特別なものではありません。一般社団法人 金融先物取引業協会(FFAJ)は、IFD注文(イフダン)について「新規注文と決済注文を同時に出す注文方法」と説明しています。リピート系は、おおまかにいえば、このように新規と決済をセットにした注文を、決めた値幅ごとに数多く並べて、自動で繰り返していくもの、と理解するとイメージしやすいと考えられます。これはあくまで仕組みを理解するための概略であり、IFD注文と同一の仕組みだという意味ではなく、各社の実際の発注の仕様とも同じとは限りません。個々の注文(成行・指値・逆指値・IFDなど)がどのような仕組みなのかについては、FXの注文方法を確認する(成行・指値・逆指値・IFD・OCO・IFO)で整理しています。本記事は、それらの注文を「一定の値幅で自動的に繰り返す」という、上位の仕組みに焦点をあてます。

なお、こうした発注では、注文時に想定した価格と実際に約定する価格がずれることがあります。金融先物取引業協会は、このずれを「スリッページ」と呼び、「顧客が注文時に指定したレートと実際に約定するレートとの相違のこと」と説明しています。自動で売買を繰り返す場合も、一回一回の約定が「指定したとおりの価格で必ず成立する」とは限らない、という前提は変わりません。

どういう相場を想定し、どこで含み損が膨らむのか

レンジ相場と一方向相場のイメージを対比し、一方向に動き続けると未決済ポジションが積み上がり含み損が膨らむことや、証拠金不足・ロスカットの注意点を示した図

リピート系の仕組みを理解するうえで、最も大切なのが、「どういう相場を想定した考え方なのか」という点です。

一定の値幅で売買を繰り返すという考え方は、相場がある範囲のなかで上下に動く局面(いわゆるレンジ相場、range)を想定したものと整理できます。価格が一定の範囲を行き来していれば、下がったところで買い、上がったところで決済する、という売買が繰り返し成立しうるためです。

問題は、相場が想定した範囲を超えて、一方向に動き続けた場合です。たとえば、買い方向の設定(下がったところで買う)を例にとると、下落方向に相場が動き続ける場合、買いの新規注文は次々に約定する一方で、その決済の条件(少し上がったところ)には届かないため、決済されない買いポジションが積み上がっていきます。決済されないポジションが増えるほど、評価上の損失(含み損)は膨らんでいきます。

これは買い方向の設定を例にした説明です。リピート系には、反対に売りから入る売り方向の設定もあり、その場合は上昇方向に相場が動き続けると、決済されない売りポジションが積み上がって、同じように含み損が膨らみます。いずれの設定でも核心は共通で、設定した方向と反対に、想定した範囲を超えて相場が一方向へ動き続けると、決済されない未決済ポジションが積み上がっていく、という点です。

この含み損の膨らみは、自動売買に特有の現象ではなく、相場が予想と反対に動いたときの損失という、FX取引に共通するリスクの現れ方の一つです。金融先物取引業協会は、為替変動リスクについて「為替相場が予想と反対の方向に動いた場合には、評価損益がマイナスの方向に動き、大きな損失が発生する可能性があります」と説明しています。リピート系の場合、相場が一方向に動き続けると、決済されないポジションが積み上がるかたちで、この「予想と反対の方向に動いた場合の大きな損失」が現れうる、と理解しておく必要があります。

含み損が膨らむと、取引を続けるために必要な証拠金(margin、取引のための担保として預ける資金)が不足する場合があります。証拠金が不足すれば、損失の拡大を抑えるための強制的な決済(ロスカット)が行われることがあります。ここで注意したいのは、ロスカットが働いても損失が必ず証拠金の範囲に収まるとは限らない、という点です。金融先物取引業協会は、相場急変時について「ロスカット機能が十分に発動せず、場合によっては預託した証拠金以上の損失が発生することがあるので注意が必要です」と説明しています。「自動で売買を繰り返してくれるから、放っておいても大丈夫」というものではなく、一方向の相場では含み損が積み上がり、証拠金不足や、場合によっては証拠金を上回る損失につながりうる、という点は、リピート系を理解するうえで欠かせない前提です。

なお、レバレッジの仕組みやロスカット制度、顧客資産の保全といったFX取引のリスク全般については、FX取引のリスクと確認しておきたい注意点で別に整理しています。

自動売買ならではの注意点

自動売買ならではの注意点(設定ミス、システム障害・通信遅延、コスト累積、勧誘トラブル)を整理した図

相場方向に起因するリスクに加えて、自動売買という仕組みそのものに関わる注意点もあります。

第一に、設定や仕組みに起因する注意です。自動売買は、人が都度判断するのではなく、あらかじめ設定したルールに従って、システムにより自動的に注文が処理されます。金融先物取引業協会は、オンライン取引のシステムリスクについて「注文の受付から約定まで人手を介さずシステムにより自動で処理されるので、売買注文の入力を誤ってしまうと意図しない注文が約定される」可能性や、「一時的にあるいは一定期間取引ができないことや、取引処理が遅延するといったトラブルが発生する可能性があります」と説明しています。これはオンライン取引一般についての説明ですが、設定したルールに従って自動で動く以上、設定の誤りや、システム障害・通信の遅延といった要因の影響を受けうる点は、自動売買でも前提として意識しておきたいところです。

第二に、売買の回数が増えることによるコストの累積です。リピート系は値幅ごとに売買を繰り返す性質上、取引の回数が多くなりやすく、その分だけ売値と買値の差(スプレッド)や手数料といったコストが積み重なりうると考えられます。取引コストとしてのスプレッドの意味や見方については、FXのスプレッドとは何か・比較時の見方で整理しています。

第三に、自動売買をめぐる勧誘トラブルです。金融先物取引業協会は、自動売買ソフト等について「中には、自動売買ソフト等の購入から無登録の海外所在業者との取引に誘導され、トラブルになるケースもありますので、ご注意ください」と注意を促しています。前述の金融庁の注意喚起とあわせて、「自動売買ソフトを使えば儲かる」といった勧誘には慎重に向き合う姿勢が望まれます。無登録の業者への注意など、勧誘や業者をめぐる注意点の全般については、FX取引のリスクと確認しておきたい注意点で扱っています。

会社によって異なる点と、利用前に確認したいこと

会社によって異なる確認チェック項目(自動売買の可否、対応通貨ペア、設定値幅、スプレッド・手数料、約款)と確認の前提を整理した図

リピート系の自動売買は、どの会社でも同じように使えるわけではありません。

まず、自動売買そのものを扱っていない会社があります。金融先物取引業協会は、「自動売買ソフト等の利用を認めていないFX取引業者も少なくありませんので、事前に取引を行おうとするFX取引業者の約款等をお読みいただくなど、十分にご確認ください」と述べています。同協会はあわせて、システムトレードについても「取引の仕組みを理解し、取引に伴うリスクについて十分研究した上で、自己の責任において行うことが肝要です」「当該ソフト等の内容や販売者等について十分に確認することなく、安易に利用することは避けなければなりません」と注意を促しています。

加えて、店頭FXは顧客とFX会社との相対取引であり、金融先物取引業協会は「店頭FXでは、取引相手となるFX業者によって、取引可能な通貨ペア、スプレッドなどの取引条件が異なります」と説明しています。つまり、自動売買に対応しているかどうかだけでなく、サービスの呼び名、対応する通貨ペア、設定できる値幅、手数料やスプレッドといった条件も、会社によって異なります。

したがって、リピート系の自動売買を検討する際は、その会社が自動売買を認めているか、どのような仕組み・条件で提供しているか、想定外の相場でどのような扱いになるかを、最終的には各社の公式説明や取引ルール(約款等)で確認することが前提になります。本記事は、リピート系と呼ばれる自動売買の基本的な考え方を共通の言葉で整理したものであり、特定の会社のサービスや仕様を示すものではありません。

用語の整理

この記事で扱った主な用語を整理します。

よくある確認事項

リピート系の自動売買とは何ですか

一定の値幅ごとに、新規注文と決済注文をセットで置いておき、相場の動きに応じてその売買を自動的に繰り返す自動売買の一類型を指す通称です。「リピート系」「リピート注文」「トラップ系」といった呼び方は、会社や比較サイトなどで使われているもので、公的機関が定義した正式な用語ではありません。本記事では、特定の会社の仕様ではなく、こうした仕組みの一類型を指す言葉として中立に用いています。

自動売買なら、手間なく儲かりますか

そうとは限りません。むしろ「自動売買ソフトを使えば、なにもしなくても儲かる」という言葉は、金融庁が令和5年4月4日付の注意喚起で名指しして注意を呼びかけている勧誘文句です。自動売買は利益を保証するものではなく、相場の状況によっては損失が生じます。「自動だから放っておいても利益が出る」という前提で考えるのは適切ではありません。

どういう相場で損失が膨らみやすいのですか

一定の値幅で売買を繰り返すリピート系は、相場がある範囲のなかで上下に動く局面(レンジ相場)を想定した考え方です。そのため、設定した方向と反対に、相場が想定した範囲を超えて一方向に動き続けると、決済されない新規ポジションが積み上がり、含み損が膨らみやすくなります。買い方向の設定なら下落が続く局面で、売り方向の設定なら上昇が続く局面で、それぞれ含み損が膨らみやすくなります。金融先物取引業協会も、為替相場が予想と反対の方向に動いた場合には「大きな損失が発生する可能性があります」と説明しています。含み損が膨らむと証拠金が不足し、ロスカットや、場合によっては証拠金を上回る損失につながることもあります。

どのFX会社でも自動売買は使えますか

使えるとは限りません。金融先物取引業協会は「自動売買ソフト等の利用を認めていないFX取引業者も少なくありませんので、事前に取引を行おうとするFX取引業者の約款等をお読みいただくなど、十分にご確認ください」と述べています。自動売買に対応しているかどうか、どのような条件で提供しているかは会社によって異なるため、各社の公式説明や取引ルール(約款等)で確認することが前提になります。

EA・VPSとは何が違うのですか

本記事が扱う「リピート系」は、相場に対してどう注文を出すか、という売買の仕組み(何を自動化しているか)の話です。一方、EA(自動売買のプログラム)を継続的に動かすための運用環境(自宅のパソコンやVPSなど、どこで動かすか)は別の論点です。運用環境については、FX自動売買(EA)を使うなら確認したい運用環境とVPSの基礎で整理しています。

まとめ

リピート系と呼ばれる自動売買は、あらかじめ決めた値幅ごとに、新規注文と決済注文をセットで置き、相場の動きに応じて売買を自動的に繰り返す、自動売買の一類型を指す通称です。一定の範囲で相場が上下するレンジ相場を想定した考え方であり、設定した方向と反対に、相場が想定した範囲を超えて一方向に動き続けると(買い方向の設定なら下落が続く局面、売り方向の設定なら上昇が続く局面)、決済されないポジションが積み上がって含み損が膨らみ、証拠金の不足や、場合によっては証拠金を上回る損失につながりうる点が、理解しておきたい核心です。自動売買は「手間なく儲かる」ものではなく、「自動売買ソフトを使えば儲かる」という勧誘文句には金融庁が注意を呼びかけています。設定やシステムに起因する注意、売買回数の増加によるコストの累積もあわせて意識しておきたいところです。自動売買を認めているかどうかや、その仕組み・条件は会社によって異なるため、利用を検討する際は各社の公式説明や取引ルール(約款等)で確認することが前提になります。

最新の取引条件・手数料・キャンペーン等は、必ず各社公式サイトでご確認ください。本ページの情報は作成時点のものです。