FX取引のリスクと確認しておきたい注意点
FX(外国為替証拠金取引、foreign exchange)を始める前、あるいは始めた後に、どのようなリスクがあり、何に注意しておけばよいのでしょうか。この記事では、FXに関わる主なリスクと注意点を、公的機関や自主規制機関が公表している情報をもとに整理します。取引の前提となる事実を正確に確認していただくことを目的としています。
最初に、FXの取引の前提を一つお伝えします。金融庁は、FXについて「証拠金以上の損失が生じるおそれがあり、元本も利益も保証されない取引」「差し入れた証拠金以上の多額の損失が生じるおそれのある非常にリスクの高い商品」と説明しています。以下では、この前提のもとで、確認しておきたい注意点を順に整理します。
レバレッジと証拠金の仕組み
FXは、取引したい金額(想定元本)の全額ではなく、その一部を証拠金として差し入れることで取引ができる仕組みです。金融庁・金融先物取引業協会(FFAJ、一般社団法人 金融先物取引業協会)の情報によると、個人が店頭FX取引を行う場合、通貨ペアの種類を問わず、取引金額に対して4%以上の証拠金を差し入れ、維持する必要があります。これはレバレッジ(leverage、てこの原理)に換算すると25倍以下にあたります(2011年8月1日以降の規制)。
ここで注意したいのは、レバレッジは損益のいずれの変動も大きくする、という点です。少額の証拠金で大きな金額を取引できる反面、相場が不利に動いた場合には損失も大きくなります。金融庁は、差し入れた証拠金以上の損失が生じるおそれがある、と説明しています。「少ない資金で大きく取引できる」という一面だけでなく、損失も拡大しうるという両面で理解しておく必要があると考えられます。
元本も利益も保証されない
前述のとおり、金融庁はFXを「元本も利益も保証されない取引」と説明しています。FXには、主に次のようなリスクが伴います。
- 為替変動リスク:為替レートが変動することで、損益が変わります。相場が不利に動けば損失が生じます。
- 金利変動リスク:各国の金利情勢の変化が、スワップポイント(金利差から生じる調整額)などに影響します。
- 流動性リスク:市場の状況によっては、希望する価格やタイミングで取引が成立しにくくなる場合があります。
損益は、相場の動きと、自分が持っているポジションの方向(買い/売り)によって変わります。上昇すれば必ず利益が出る、というものではなく、どの方向のポジションを持っているかによって結果が変わる点を前提にする必要があります。
ロスカットの仕組みとその限界
ロスカットとは、損失が一定の水準に達した際に、業者が建玉(保有しているポジション)を強制的に決済する仕組みのことです。金融先物取引業協会の情報によると、個人顧客とFX取引を行うすべての業者には、ロスカット・ルールの整備と遵守が義務付けられています(2010年2月1日施行)。これは、損失が際限なく拡大することを一定程度抑えるための仕組みです。
ただし、ここが重要な注意点ですが、ロスカットは損失を完全に防ぐものではありません。金融先物取引業協会は、ロスカット取引について「必ず約束した損失の額で限定するというものではありません」「実際の損失はロスカット水準より大きくなる場合が考えられます」「相場の状況によっては顧客から預かった証拠金以上の損失の額が生じることがあります」と説明しています。金融庁も「相場が急激に変動したときは、ロスカットルールが適用されても、証拠金の額を上回る損失が生じることがあります」と明記しています。
たとえば、週末をはさんで週明けに価格が大きく飛ぶ場面(窓開け)や、注文した価格と実際に成立した価格にずれが生じる場面(スリッページ、slippage)では、ロスカットが想定した水準よりも大きな損失が出る可能性があります。「ロスカットがあるから損失は一定額で止まる」と考えるのは適切ではなく、相場の状況によっては証拠金を上回る損失が生じうる、という前提で理解しておく必要があります。
顧客資産の保全(区分管理・信託)
国内で金融商品取引業の登録を受けたFX業者には、顧客から預かった証拠金などの資産を、自社の資産と区分して管理し、信託銀行などへの信託に一本化する仕組みが求められています(金融先物取引業協会、2010年2月1日施行)。
ここで、概念を分けて理解することが大切です。これは、業者が破綻した場合などに顧客の資産を保全するための制度的な枠組みであり、取引で生じた損失(相場変動による損失)を補うものではありません。「信託保全があるから損をしない」という関係ではない点に注意が必要です。資産の保全に関する制度と、相場変動による投資の損益とは、別のものとして整理してください。
また、この仕組みは顧客資産の保全を目的としたものですが、計算する時点と追加で信託する期限とのあいだに時間差があるなどの理由から、いかなる状況でも必ず全額が返還されることを保証するものとして受け取ることは適切ではありません。実際の保全の方法や信託先などは各社が開示しているため、利用前の確認項目の一つになります。
無登録業者への注意
日本に居住する人に対してFX取引を業として行うには、金融商品取引法上の登録が必要です。海外で金融商品取引のライセンスを持つ業者であっても、日本で登録を受けずに日本居住者へ業として取引を行うことはできません。
金融庁や消費者庁、財務局、金融先物取引業協会は、無登録の業者(とくに海外に所在する業者)とのあいだで、トラブルが多く寄せられていると注意を呼びかけています。たとえば、利益が出たはずなのに出金できない、返金されない、連絡が取れなくなる、といった事例が紹介されています。金融庁は、無登録業者については、投資者保護のための態勢が確保されているか当局では確認できず、登録を受けている業者と同等の態勢が整っていない可能性が高い、と説明しています。
確認の観点として、利用を検討している業者が国内で登録を受けているかどうかは、金融庁が公表している登録業者の一覧や、無登録業者に関する情報などで確認できます。なお、海外に所在する業者を一律に「詐欺」や「危険」と決めつけるのではなく、登録の有無を確認し、金融庁などの注意喚起をふまえて判断することが望ましいと考えられます。無登録業者の名称等の情報は継続的に更新される性質のものであるため、最新の状況は金融庁の公式情報で確認してください。
用語の整理
ここまで登場した主な用語を整理します。
- レバレッジ(leverage、てこの原理):少額の証拠金で、より大きな金額の取引を行えること。損益のいずれの変動も大きくします。
- 証拠金:取引のために差し入れ、維持する資金。個人の店頭FXでは取引金額の4%以上が必要です(レバレッジ25倍以下)。
- ロスカット:損失が一定の水準に達した際に、業者が建玉を強制的に決済する仕組み。損失を完全に防ぐものではありません。
- 区分管理・信託保全:顧客の資産を業者の資産と分けて管理し、信託に一本化する仕組み。業者破綻時などの資産保全のための制度であり、取引損失を補うものではありません。
確認のポイント
最後に、FXのリスクを確認するときに意識したい点をまとめます。
- FXは証拠金以上の損失が生じるおそれがあり、元本も利益も保証されない取引である(金融庁)。
- レバレッジは損益のいずれの変動も大きくする。少額で大きく取引できる一面だけで見ない。
- ロスカットがあっても損失を完全には防げず、証拠金を上回る損失が生じることがある。
- 顧客資産の保全(区分管理・信託)は資産保全の制度であり、取引損失を補うものではない。
- 国内での登録の有無を確認する。無登録業者に関する注意喚起は金融庁などの公式情報で確認する。
よくある確認事項
ロスカットがあれば、損失は一定の金額で止まりますか
いいえ。ロスカットは損失が際限なく拡大することを一定程度抑える仕組みですが、損失を完全に防ぐものではありません。金融先物取引業協会は「必ず約束した損失の額で限定するというものではありません」「相場の状況によっては顧客から預かった証拠金以上の損失の額が生じることがあります」と説明しています。週明けの価格の飛び(窓開け)や、注文価格と約定価格のずれ(スリッページ)により、想定より大きな損失が出る可能性があります。
信託保全があれば、取引で損をしても資産は守られますか
信託保全(区分管理)は、業者が破綻した場合などに顧客の資産を保全するための制度であり、取引で生じた損失(相場変動による損失)を補うものではありません。資産の保全に関する制度と、投資の損益とは別のものとして整理してください。また、計算時点と追加信託の期限に時間差があるなどの理由から、いかなる状況でも必ず全額が返還されることを保証するものとして受け取ることは適切ではありません。
レバレッジは何倍まで使えますか
個人が店頭FX取引を行う場合、取引金額に対して4%以上の証拠金を差し入れ・維持する必要があり、これはレバレッジに換算すると25倍以下にあたります(2011年8月1日以降の規制、金融庁・金融先物取引業協会)。レバレッジは損益のいずれの変動も大きくするため、損失も拡大しうる点をあわせて理解しておく必要があります。
海外のFX業者は使っても大丈夫ですか
日本に居住する人へFX取引を業として行うには、金融商品取引法上の登録が必要です。金融庁は、無登録業者については投資者保護の態勢が確認できない可能性が高いとして注意を呼びかけており、無登録の海外業者とのトラブル事例も報告されています。一律に「危険」と決めつけるのではなく、利用を検討する業者が国内で登録を受けているかを確認し、金融庁などの注意喚起をふまえて判断することが望ましいと考えられます。
結局、FXはどのくらいリスクがありますか
金融庁は、FXを「証拠金以上の損失が生じるおそれがあり、元本も利益も保証されない取引」「差し入れた証拠金以上の多額の損失が生じるおそれのある非常にリスクの高い商品」と説明しています。為替変動・金利変動・流動性などのリスクがあり、損益は相場の動きとポジションの方向によって変わります。取引を検討する際は、これらのリスクを前提としたうえで、公式情報を確認して判断することが前提になります。
さいごに
FXには、レバレッジによる損失の拡大、ロスカットの限界、無登録業者をめぐる注意点など、確認しておきたいリスクがあります。本記事は、それらを公的情報に沿って整理したものであり、特定の取引を勧めたり、避けるよう勧めたりするものではありません。
各リスクの詳細や最新の制度・注意喚起は、金融庁・金融先物取引業協会・消費者庁などの公的機関の公表情報や、各社の公式情報で確認していただくことを前提としています。最終的な口座開設や取引の判断は、読者ご自身が公式情報を確認したうえで行ってください。
FXの取引条件や、口座を開く前に確認したい項目については、次の記事も参考になります。
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