米国株(外国株式)を始める前に確認したい基本
米国株をはじめとする外国株式に関心を持ったとき、最初に気になるのは「どの銘柄を買うか」かもしれません。けれども、その前に確認しておきたいのは、外国株式が日本株とどこが違い、何を自分で確認すべきかという点です。為替や税金、取引時間など、日本株にはない論点がいくつかあるためです。
この記事では、米国株(外国株式)を始める前に一般に確認される基本項目を、公式情報ベースで整理します。「日本株と何が違い、何を見て自分で判断するか」を確認するための見取り図として読んでいただくことを想定しています。具体的な手数料・税率の細目・取扱内容は、各社や国税庁などの公式情報でご確認ください。
なお、証券口座やNISAの基本的な仕組みは、証券会社を選ぶ前に確認したい基本項目やNISAを始める前に確認したいポイントで整理しています。本記事は、これらをふまえたうえで「外国株式に固有の差分」に絞って確認します。
米国株(外国株式)は日本株と何が違うか
米国株を含む外国株式には、日本株にはない確認ポイントがいくつかあります。大きく整理すると、次のようになります。
- 為替(円換算)の影響を受ける(株価の変動に円相場の変動が重なる)
- 税金の扱いに、現地(外国)での課税という論点が加わる
- 取引できる時間帯が、日本の夜間から早朝にあたる
- 取扱う国・銘柄・通貨・最低単位が、会社によって異なる
- 決済の通貨や、円と外貨を両替する際の為替手数料がかかる
- 資産が保護される枠組みに、現地での保管という構造が関わる
以下では、それぞれの観点について順に整理します。いずれの項目も、詳細は会社や時点によって異なるため、最終的には各社や公式機関の公式情報で確認することを前提としています。
為替(円換算)の影響を確認する
外国株式を考えるうえで、日本株ともっとも大きく異なるのが為替の影響です。
外国株式は、現地の通貨(米国株であれば米ドル)建てで取引されます。そのため、円で考えたときの損益は、「現地通貨建ての株価が動いたかどうか」に加えて、「円相場(為替レート)が動いたかどうか」という二つの要因が重なって決まります。これは、日本株にはない二重の変動要因といえます。
たとえば、現地通貨建てで株価が上がっていても、その間に円高が進めば、円に換算した損益は目減りすることがあります。逆に、円安が進めば、円換算の損益が膨らむこともあります。為替は、円換算の損益にとって有利にも不利にも働きうるもので、どちらか一方の方向に決まっているわけではありません。
外国株式を始める前には、株価そのものの動きだけでなく、こうした為替の変動も損益に影響する、という前提を理解しておくことが基本になります。
税金の扱いを確認する
外国株式の税金は、日本株と共通する部分と、外国株固有の部分があります。ここでは仕組みの枠組みを整理し、具体的な税率や手続きの細目は国税庁の公式情報で確認する前提とします。
配当にかかる税金(現地と日本の二重課税)
外国株式の配当には、日本側の課税に加えて、現地(外国)でも税金が源泉徴収される場合があります。同じ配当に対して、現地と日本の双方で課税されうるという点が、日本株にはない論点です。
このように国際的に二重で課税される状態を調整するための制度として、「外国税額控除」があります。これは、外国で納めた税額を、一定の範囲で日本の所得税額から差し引くことができる制度です。国税庁の説明では、控除できる金額には限度額が定められており、その限度を超えて控除しきれなかった分については、一定の年内に繰り越せる場合があるとされています。
ここで確認しておきたいのは、外国税額控除は自動的に戻ってくるものではなく、原則として確定申告で申請する制度だという点です。控除できる金額にも限度があります。具体的な計算方法や申請の手続きは、国税庁の公式情報(「No.1240 居住者に係る外国税額控除」「No.1330 配当金を受け取ったとき(配当所得)」)で確認することが望まれます。
譲渡益(売却益)にかかる税金
株式を売却して得た利益(譲渡益)に対する課税の枠組みは、上場株式等であれば、外国株式でも日本株と共通する申告分離課税が基本となります。
外国株式に固有の差分は、取得した価格や売却した価格が外国通貨建ての場合、円に換算して損益を計算する必要があるという点です。為替レートをどの時点でどう用いるかを含め、計算方法の詳細は国税庁の公式情報(「No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)」)で確認することが基本になります。
NISAで外国株式を持つ場合
NISA口座を使って外国株式を保有する場合にも、外国株固有の注意点があります。
NISAは、一定の範囲で得られた利益が日本国内で課税されない、日本の非課税制度です。ただし、NISAが及ぶのはあくまで日本側の課税であり、外国の課税権には及びません。そのため、NISA口座で外国株式を保有していても、現地(外国)で源泉徴収される税金は、原則としてかかると考えられます。
また、前述の外国税額控除は、「日本側で課される税額から外国の税額を差し引く」仕組みです。NISA口座内の利益は日本側で非課税のため、差し引く対象となる日本側の税額がそもそも生じません。このため、NISA口座で生じた外国株式の配当については、外国税額控除という日本側の調整は使えないと考えられます。
NISAの投資枠や限度額といった制度の詳細は、NISAを始める前に確認したいポイントで整理しています。外国株式とNISAを組み合わせる際の税の取扱いは、国税庁や金融庁の公式情報、および利用する証券会社の案内でご確認ください。
取引できる時間帯を確認する
外国株式は、現地の市場の取引時間に合わせて売買されます。米国株式の場合、現地の取引時間は、日本時間ではおおむね夜間から翌朝の早朝にあたります。
また、米国には一定の期間、時計を一時間進めるサマータイム(夏時間)という制度があります。このため、日本時間で見たときの取引時間帯は、夏時間が実施されている期間とそうでない期間とで、一時間ほどずれることになります。
具体的な取引時間や、注文を受け付ける時間帯(通常の取引時間の前後に行われる時間外取引を含む)は、取引所や証券会社によって扱いが異なります。サマータイムの期間を含め、制度や時間帯は変わることがあるため、実際の取引時間は各取引所や各証券会社の公式情報で確認することが基本です。
取扱いは会社によって異なる
どの国・どの市場の株式を、どの範囲で取引できるかは、証券会社によって異なります。取扱う国や市場、銘柄数、取扱う通貨、最低限の取引単位などに幅があります。
入門者にとって日本株との違いとして分かりやすいのは、取引の単位です。日本株は、多くの銘柄が単元株という単位(一般に100株単位)で取引されますが、米国株は原則として1株単位で売買できるのが一般的です。これは取引のしやすさに関わる商慣行上の違いですが、最低限必要な金額や具体的な取扱いは会社によって異なります。
取扱う国・銘柄・通貨・取引単位は会社ごとに異なるため、自分が取引したいと考えている市場や銘柄が取り扱われているか、最低単位はどうかを、各社の公式情報で確認することが基本となります。
決済の通貨と為替手数料を確認する
外国株式は外貨建てで取引されるため、円と外貨をどのように扱うかという論点があります。
外国株式を売買する際の決済には、一般に「円貨決済」と「外貨決済」という考え方があります。円貨決済は、円で発注し、証券会社が円と外貨の両替を行う方法です。外貨決済は、あらかじめ外貨に両替しておき、その外貨で売買する方法です。どちらを提供しているか、またその方法は会社によって異なります。
いずれの場合も、円と外貨を両替する際には為替手数料がかかります。この為替手数料は、売値と買値の差として示される「為替スプレッド」のかたちで反映されることが一般的で、株式の売買手数料とは別に生じる、実質的な取引コストの一部になります。日本株にはない、外国株固有のコスト要因といえます。
なお、ここでいうスプレッドは、あくまで外国株式を売買するために円と外貨を両替する際のコストの話です。「FX(外国為替証拠金取引)で米国株を取引する」という意味ではありません。スプレッドという概念そのものについては、FXのスプレッドとは何か・比較時の見方で整理していますので、用語の参考としてご覧ください。
為替コストも取引コストの一部として、株式の売買手数料とあわせて、各社の公式情報で確認する観点があると考えられます。
資産が保護される枠組み(簡潔に)
日本の証券会社(金融商品取引業者)を通じて外国株式を買う場合も、日本の証券会社における顧客資産の保護の枠組みの中で扱われるのが一般的です。証券会社には、顧客から預かった資産を自社の資産と分けて管理する分別管理の義務があり、投資者保護基金という制度もあります。これらの仕組みの詳細は、証券会社を選ぶ前に確認したい基本項目で整理しています。
外国株式に固有の点として、現地での株式の保管は、外国の保管機関などを経由する構造になることがあります。こうした保管の構造や、保護の枠組みがどこまで及ぶかの具体は、利用する証券会社によって扱いが異なるため、各社の公式情報で確認することが基本です。
用語整理
この記事で扱った用語のうち、初めての方が確認しておきたいものを整理します。
- 外国株式:日本以外の国・市場で取引される株式の総称。米国株もこれに含まれます。
- 外国税額控除:外国で納めた税額を、一定の範囲で日本の所得税額から差し引くことができる制度。原則として確定申告で申請します(国税庁「No.1240 居住者に係る外国税額控除」)。
- 申告分離課税:他の所得と分けて、一定の方式で税額を計算する課税方式。上場株式等の譲渡益などに用いられます。
- 円貨決済/外貨決済:外国株式の決済方法の区分。円で発注して証券会社が両替する方法と、あらかじめ外貨に両替しておく方法があります。
- 為替スプレッド:円と外貨を両替する際の、売値と買値の差として生じるコスト。外国株式の実質的な取引コストの一部になります。
- サマータイム(夏時間):一定期間、時計を一時間進める制度。米国の取引時間を日本時間で見たときに、期間によって一時間ほどずれる要因になります。
よくある確認事項
米国株は1株から買えますか
米国株は、原則として1株単位で売買できるのが一般的です。日本株の多くが単元株という単位(一般に100株単位)で取引されるのに対し、取引単位が小さいことが入門者にとっての違いの一つです。ただし、最低限必要な金額や具体的な取扱いは会社によって異なるため、各社の公式情報で確認してください。
NISAで米国株を持てば、税金はかかりませんか
NISAは日本の非課税制度であり、日本側の課税については一定の範囲で非課税になります。ただし、NISAは外国の課税権には及ばないため、現地(外国)で源泉徴収される税金は、原則としてかかると考えられます。また、日本側が非課税であることに伴い、外国税額控除という日本側の調整は使えないと考えられます。具体的な取扱いは、国税庁・金融庁の公式情報や、利用する証券会社の案内で確認してください。
外国株の配当は二重課税されるのですか
外国株式の配当は、現地(外国)と日本の双方で課税されうるため、結果として二重に課税される状態が生じることがあります。この国際的な二重課税を調整する制度として外国税額控除があり、外国で納めた税額を一定の範囲で日本の所得税額から差し引ける場合があります。原則として確定申告での申請が必要です。詳細は国税庁の公式情報(「No.1240 居住者に係る外国税額控除」)で確認することが望まれます。
米国株はいつ取引できますか
米国株は現地の市場の取引時間に合わせて取引され、日本時間ではおおむね夜間から翌朝の早朝にあたります。米国のサマータイム(夏時間)の有無によって、日本時間で見た時間帯は一時間ほどずれます。具体的な取引時間や注文受付の時間帯は取引所・証券会社によって異なるため、各社・各取引所の公式情報で確認してください。
為替手数料はどこの会社が一番安いですか
為替手数料の体系は会社によって異なり、決済方法(円貨決済/外貨決済)や時点によっても変わります。このため、この記事では「どこが一番安いか」を断定することはしません。比較する際は、株式の売買手数料とあわせて、同じ条件で各社の公式情報を確認することが望まれます。
まとめ
この記事では、米国株(外国株式)を始める前に一般に確認される基本項目を、日本株との違いという軸で整理しました。為替(円換算)の影響、税金の扱い(現地源泉税と外国税額控除)、取引時間、取扱いの会社差、決済通貨と為替手数料は、いずれも外国株式で新たに加わる、あるいは日本株より影響が大きくなる確認ポイントです。これらを、自分が取引したい市場や銘柄を確認するための見取り図として使っていただければと思います。
次に読む記事
外国株式の確認を進める際の参考として、次の記事もあわせてご覧ください。
- 証券会社を選ぶ前に確認したい基本項目
- NISAを始める前に確認したいポイント
- FXのスプレッドとは何か・比較時の見方(為替コストの「スプレッド」という概念の参考として)
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