フィボナッチ・ピボット・6ゾーン型FZの違い|基準データと更新方法

チャートに水平の価格水準を表示する方法として、フィボナッチ描画、ピボット、6ゾーン型フィボナッチゾーンの3つは、しばしば並べて語られます。どれも画面上には似た見え方をします。しかし、この3つは同じものの別名ではありません。

読み終えると、画面に並んだ2本の線が、同じ入力に同じ式を当てただけの1本なのか、入力だけを共有する別の2本なのか、系統ごと別のものなのかを、表示名ではなく入力と式から見分けられるようになります。

本記事は、どの方法が優れているかを答えません。代わりにできるのは、自分がいま何本の独立した情報を見ているのかを正しく数えられる状態にすることです。3つを重ねて表示したとき、増えているのが根拠なのか名前だけなのかが分かります。

どの方法が優れているかという評価と、特定の相場に対する見通しは扱いません。同じ方式名でも実装によって値が割れる原因は、「ピボットの値が方式で違う理由」が扱います。

以下の価格はすべて説明のために作った合成値であり、実在の通貨ペアや現在の相場を指しません。ここで扱う水準は観察の候補であって、価格の方向を決めるものでも、反発や到達を保証するものでもありません。最終的な判断は、読者ご自身で行ってください。

フィボナッチ描画・ピボット・6ゾーン型は、何が違うのか

まず、それぞれを1文で定義します。長い説明の前に、この1文の違いを押さえておくと、後の対照表が読みやすくなります。

フィボナッチ描画

フィボナッチ描画は、分析者が選んだ2点(または3点)の値幅に比率を掛け、水準を出す方法です。

ここで重要なのは、起点となる2点を選ぶのが分析者だという点です。どの上昇を測るのか、どの時間足の高値と安値を使うのか、ヒゲを使うのか終値を使うのか。これらが決まってはじめて、値幅が決まり、比率を掛けた水準が決まります。入力が分析者の選択に依存する、という構造がこの方法の出発点です。

ピボット

ピボットは、前期間の高値・安値・終値から、方式ごとの計算式で機械的に水準を出す方法です。

前日、前週、前月といった基準期間を1つ決めれば、その期間が確定した時点で入力が確定します。あとは方式ごとの式に代入するだけで、中心となる水準と、その上下に並ぶ複数の水準が出ます。分析者が波を選ぶ余地はありません。

6ゾーン型フィボナッチゾーン

6ゾーン型フィボナッチゾーンは、前期間の高値・安値・終値から5本の境界を作り、6つの区間として扱う方法です。

入力はピボットと同じ前期間の高値・安値・終値です。異なるのは出力です。ピボットが個々の線として水準を示すのに対し、6ゾーン型は境界で挟まれた範囲、つまり区間を分析の単位にします。価格が「どの線に触れたか」ではなく「今どの区間にいるか」を見る構成になっています。なお、フィボナッチゾーンという語は複数の意味で使われるため、本記事では前期間データから6つの区間を作る型に限定して扱います。

この3つを見分けるとき、名前は手がかりになりません。インジケーターの表示名には「フィボナッチ」という語がいずれにも入りうるからです。見分ける軸は、どのデータを入力しているか、そして出力が線なのか区間なのか、この2点です。次節ではこれを含む5つの軸で整理します。

5つの軸で並べると、どこが分かれるのか

3つの方法を、入力データ、対象、更新の時点、裁量が入る箇所、出力の形の5軸で並べます。

フィボナッチ描画ピボット6ゾーン型フィボナッチゾーン
入力データ分析者が選んだ高値・安値(3点式では追加の1点)前期間の高値・安値・終値(方式により始値も)前期間の高値・安値・終値
対象区間
更新の時点描き直したとき基準期間が切り替わるたびに自動基準期間が切り替わるたびに自動
裁量が入る箇所どのスイングを選ぶか方式と基準期間の選択基準期間の選択
出力の形選んだ値幅を比率で区切った複数の水平線中心水準とその上下に並ぶ複数の水平線5本の境界と、それが区切る6つの区間

この表から読み取れることを3点補足します。

1つ目は、入力の出どころです。ピボットと6ゾーン型は同じ前期間データを共有しています。フィボナッチ描画だけが別の出どころ、つまり分析者が選んだスイングを使います。後半で扱う重なりの問題は、ここに根があります。同じ入力を共有する2つの方法の間では、重なりが偶然ではなく構造として生じます。

2つ目は、更新の時点です。ピボットと6ゾーン型は、基準期間が切り替われば自動的に値が入れ替わります。当日の途中で高値が更新されても、通常その日の水準は動きません。一方、フィボナッチ描画に決まった更新時刻はありません。測る対象の波が変わったと分析者が判断し、描き直したときに変わります。「いつ変わるか」が人の判断に紐づいている、という点でここも性質が異なります。

3つ目は、再現性です。条件を揃えたときに他人と同じ値を再現できるかどうかは、次のように分かれます。

裁量が入らないことは、優れていることではない

ここで1つ限定を置きます。以上の対照は、性質の違いを示したものであって、優劣を示したものではありません。

「裁量が入らない」「再現できる」という性質は、検証や共有のうえでは扱いやすさにつながります。手順を書き下せるため、同じ条件を他人が再現でき、過去データでの挙動も定義しやすくなります。しかし、再現できることと、その水準が実際に機能することは別の問題です。誰が計算しても同じ値になる水準が、価格の反応しやすい場所であるとは限りません。逆に、分析者の判断が入る描画が、そのぶん劣るということでもありません。

再現性は、検証の前提条件を整える性質であって、有効性の証明ではない。この区別を持たないまま「客観的だから信頼できる」と読み替えると、検証していないものを検証済みとして扱うことになります。有効性そのものをどう確かめるかは、検証設計を主題とする別の記事の範囲です。

フィボナッチ描画・ピボット・6ゾーン型を入力・更新・裁量・出力で比較
裁量の有無だけで優劣は決まらず、再現条件をそろえる必要があります。画像を拡大して表示(原寸 1672×941)

同じ価格に重なるのは、偶然か構造か

ここからが本記事の中心です。3つの方法の間には、条件を揃えると必ず同じ値になる箇所があります。これは偶然の一致ではなく、式が同じであることによる一致です。

検証に使う共通入力

以下はすべて、説明のための合成値です。通貨ペアや実際の相場を指すものではありません。表示は小数第4位までとします。

項目
前期間の高値 H1.3120
前期間の安値 L1.2980
前期間の終値 C1.3080
前期間のレンジ(H − L)0.0140

ピボットの P と、6ゾーン型のバランスポイントは同じ式である

Traditional 方式のピボットの中心水準 P と、6ゾーン型フィボナッチゾーンの中心にあたるバランスポイント(BP)は、次のように定義されます。

Traditional ピボット   P  = (H + L + C) ÷ 3
6ゾーン型              BP = (H + L + C) ÷ 3

2つは同一の式です。したがって、同じ前期間データを入力すれば、差は原理的に 0 になります。上の共通入力で計算すると、次のとおりです。

水準
Traditional ピボット P1.3060
6ゾーン型 バランスポイント BP1.3060
0.0000

チャート上では、この2つは別々のインジケーターとして、別々の名前で、別々の色で表示されることがあります。片方には P、もう片方には BP あるいはバランスポイントというラベルが付きます。しかし、表示されている価格は同じ1つの値です。丸め方や小数表示の桁が違えば見た目上わずかにずれることはありますが、それは表示の問題であり、計算の問題ではありません。

言い換えると、この2本は独立した2つの根拠ではありません。同じ入力に同じ式を当てただけの、1つの水準です。これを2本と数えると、根拠の数を水増しすることになります。

比率の数字が同じでも、掛ける対象が違えば別の水準になる

一方で、名前や数字が似ていても同じにはならない例もあります。対照的な例として、次の2つを並べます。

水準掛ける比率起点向き
Fibonacci 方式ピボットの R20.618中心水準 1.3060上へ1.3147
フィボナッチ描画の 61.8%0.618高値 1.3120下へ1.3033

ここでは、フィボナッチ描画の起点として、たまたま前期間と同じ高値 1.3120 と安値 1.2980 を選んだと仮定しています。したがって両者は、同じ 0.0140 という値幅に、同じ 0.618 を掛けています。掛ける比率も、掛ける相手も同一です。

それでも値は一致しません。違うのは、どこを起点に測るかと、どちらへ向けて測るかの2点だけです。中心水準から上へ測れば 1.3147、高値から下へ測れば 1.3033 になり、両者は 0.0114 離れます。

つまり、比率の数字が同じであっても、それだけでは同じ水準にはなりません。何に対する比率か、どこを起点に、どちらへ測るかまで揃ってはじめて一致します。見た目が近いことと、同じものであることは別です。ピボット各方式の比率と式そのものはピボットポイント完全ガイドで扱い、方式の違いが値のどこに出るのかは、方式差の原因を扱う記事で扱います。

重なりを3種類に分ける

以上をまとめると、複数の方法が近い価格を示す状況は、次の3種類に分けられます。

1つ目は、構造的な一致です。入力が同じで、式も同じ場合、値は常に一致します。P と BP はこれにあたります。条件を変えても一致し続けるため、確認するまでもなく1つの水準です。

2つ目は、入力の共有です。入力は同じで式だけが違う場合、値は一致しませんが、入力が変われば両方が同時に動きます。ピボットの水準と6ゾーン型の境界の関係はこれにあたります。どちらも前期間の高値・安値・終値だけから出ているため、片方が動くときはもう片方も必ず動きます。

ここで扱いを間違えやすいので、分けて書きます。値が違う以上、この2本は別の価格です。片方を消したり、1本の価格にまとめたりはしません。誤りは価格の側にはなく、数え方の側にあります。入力を共有している以上、独立した2つの根拠が得られたとは数えられません。記録には、共有している入力が何かを注記し、依存ありと表示します。

倍率まで一致していれば、この2つ目は1つ目に変わります。実際、同じ前期間データを入力すると、6ゾーン型の九本のうち五本は、フィボナッチ方式ピボットの水準と厳密に同じ価格になります。名前が違うだけで、同じ線です。

3つ目は、条件依存の近接です。入力そのものが異なる場合、たまたま近い値になることはあっても、常に一致するわけではありません。前期間レンジを使う水準と、分析者が選んだスイングに基づく水準の関係はこれにあたります。今日は近くても、翌日は離れます。

ただし、入力が違うというだけで、2本が統計的に独立だと決まるわけではありません。同じ市場の同じ期間から作られている以上、値動きを通じて連動しうるからです。ここで言えるのは、計算の系統が別だということまでです。独立性そのものは、別に確かめる必要があります。

構造的一致・入力共有・偶然の近さの3種類を数値例で比較
価格が近いことと、同じ根拠から出たことは別です。画像を拡大して表示(原寸 1672×941)

この3種類を混ぜて「重なった」と扱うと、話が崩れます。扱いは3つとも違い、1つ目は価格として2つ表示すること自体が誤り、2つ目は価格は2つのままで数え方だけが誤り、3つ目は計算の系統が別であるため別々に記録します。

分析者が選ぶ2点を入力とするフィボナッチ描画と、前期間の高値安値終値を入力とするピボットおよび6ゾーン型を、入力・出力・更新の3点で対比し、重なりの3種類を並べた図。
同じ画面の線でも出どころが違う。重なりは3種類あり、扱いも違う。

2本の線は、独立した2つの根拠なのか

重なりの3分類を、画面を見るときの手順に落とします。

判定は、表示名ではなく系統をたどる

2本の線が同じ価格帯に並んでいるとき、確認する順序は次のとおりです。

  1. その線は、どのデータを入力にしているか。分析者が選んだスイングか、前期間の高値・安値・終値か
  2. 入力が同じだった場合、式は同じか。同じなら、それは1本です
  3. 式が違う場合、何に比率を掛けているか。起点と掛ける対象が違えば、今回は近くても常に一致するわけではありません
  4. 表示名やラベルは、この判定の材料になりません

前期間データを共有する方法どうし、つまりピボットと6ゾーン型の間では、この確認が特に必要になります。同じ入力を使っている以上、一致する箇所があるのは例外ではなく既定の状態だからです。

近いが同一ではない場合の扱い

構造的に一致しない2本が、近い価格に並ぶこともあります。この場合は、少なくとも別の入力から来た2つの水準です。ただし、ここでも注意点が2つあります。

1つは、どこまでを「近い」とみなすかを、価格が動く前に決めておく必要があることです。事後に幅を広げれば、どんな2本でも重なったことにできます。もう1つは、近接それ自体が反応を意味しないことです。近い水準が並んでいることは、観察する場所を絞る材料にはなっても、そこで価格が止まる根拠にはなりません。

3つを重ねて表示すると、情報は増えるのか

同じ1つの水準を2本と数えると、その価格に対する見え方が変わります。「2つの指標が一致している場所」と表現された瞬間、その水準は独立した確認が取れた場所のように見えます。実際には確認は1回しか行われていません。

さらに、表示する方法を増やすほどこの効果は強まります。前期間データを使う方法を3種類、4種類と重ねれば、一致する水準の数も増えます。増えているのは、根拠ではなく名前です。

この数え方の誤りは、後からの説明にも影響します。価格が動いた後で「あの水準では複数の根拠が重なっていた」と振り返るとき、その複数が実は1つだったのなら、振り返りの前提が崩れています。

何本重なったかは、反応を保証しない

最後に境界を置きます。ここまで述べたのは、根拠の数え方の話であって、反応の起きやすさの話ではありません。

重複を取り除いて正しく1本と数えたとしても、その水準で価格が反発するとは限りません。到達しないこともあります。抜けたあとに戻ることも、そのまま離れていくこともあります。本記事で扱った水準はいずれも、観察の候補となる場所であり、方向を決めるものではありません。単一の水準や、水準の重なり具合だけで売買を決められるものでもありません。

重複を排除する意味は、勝てる場所を見つけることではなく、自分が何本の独立した情報を見ているのかを正しく把握することにあります。数を正しく数えることは、有効性を確かめる作業の前提であって、有効性そのものではありません。

同じ価格を指す3本を根拠数として二重計上しない表示例
表示本数をそのまま独立根拠の数にしません。画像を拡大して表示(原寸 1672×941)

記録にどう残すか

判定の結果をどう書き残すかは、本文の各所で触れたとおりです。新しい書式を足すものではありません。

この判定を手順として組む方法、つまり許容幅を事前に決め、各線の計算系統を対応づけ、同じ系統のものを1つにまとめる作業は、重なりの測り方を主題とする記事で扱います。

次に読む記事

本記事では、3つの方法の分類と違いを整理しました。各方法の計算式の全文と、引き方の具体的な手順は扱っていません。それぞれの計算と手順は、以下の記事を参照してください。目的に応じて進んでください。

使う前に確認しておくこと

本記事は、テクニカル分析に関する一般的な情報を提供するものであり、特定の商品、通貨ペア、売買方法を推奨するものではありません。記載した価格はすべて説明のための合成値です。ここで扱った水準は観察の候補であり、価格の方向を決めるものでも、反発や到達を保証するものでもありません。実際の判断は、ご自身の責任において行ってください。

参照した情報

本記事は、3つの方法の分類と対照を目的としているため、計算式の出典は再掲していません。各方法の式と出典は、「次に読む記事」に挙げた各記事で確認できます。

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