フィボナッチとピボットの重なりを測る方法|二重計上を避ける

チャートに複数の分析方法を同時に表示すると、別々の計算から出た水準が近い価格に並ぶことがあります。この状態はコンフルエンスと呼ばれ、多くの場合「複数の根拠が重なった場所」として語られます。この重なりを、根拠が二つ揃った状態として扱う説明もありますが、本記事はその当否を判定しません。判定する前に確かめておくことがあるからです。

しかし、線が近くに並んでいるという観察と、独立した複数の根拠がそこに集まっているという評価は、別のことです。近さは画面から読み取れますが、独立しているかどうかは、その線を出した式と入力までさかのぼらないと分かりません。読み終えると、画面に並んだ線について、価格としては何本あり、独立した根拠としては何本ぶんなのかを、自分で数え直せるようになります。

本記事は、コンフルエンスのある場所が他の場所より優位かどうかを答えません。代わりにできるのは、同じものを二度数えないための記録の作り方を固定することです。測る対象と許容距離を観察前に決め、各線を計算の系統に対応づけ、全ペアの距離を測ってから、同じ系統から出た線を1つに畳む。ここまでが範囲です。重なりに優位性があるかどうかは、記録の取り方ではなく検証設計の問題です。

本記事は、スイングの起点と終点の決め方、および Traditional ピボットの計算式そのものを、それぞれを主題とする記事で確認済みの読者を想定しています。以下ではこれらを繰り返しません。以下に出てくる価格はすべて、説明のために作った合成値です。実在の通貨ペアや現在の相場を指すものではありません。ここで扱う水準はいずれも観察の候補であり、価格の方向を決めるものでも、反発や到達を保証するものでもありません。最終的な判断は、読者ご自身で行ってください。

重なった2本は、根拠2つと数えてよいのか

先に結論を書きます。式が違っても入力が同じなら、独立した2つの根拠にはなりません。

もっとも分かりやすいのは中心の水準です。Traditional ピボットの P と6ゾーン型のバランスポイント BP は、どちらも (H + L + C) ÷ 3 で定義されます。同じ入力を与えれば差は 0.0000 であり、これは「近い」のではなく「同じ」です。名前も色も違う2本が画面に並んでいても、そこにある情報は1本分です。

もう一段ゆるい関係もあります。式は違うが、入力が同じという状態です。Traditional ピボットの R1 と6ゾーン型の境界 D は、値そのものは一致しません。しかし、どちらも前期間の高値・安値・終値から計算されています。入力が入れ替われば両方が同時に動くため、条件を変えても構造的に連動します。これも独立した2回の確認ではありません。

ただし、畳むのは根拠の数であって、価格ではありません。表示から片方を消したり、平均して1本の線にしたりはしません。両方を価格として残したうえで、独立した根拠としては1と数えます。この区別を落とすと、今度は情報のほうが消えます。

ここから先は、この数え方を記録として成立させる手順です。観察を始める前に決めておくことと、観察の後に行うことを分けて進めます。距離を測る前に畳んでしまうと、どのペアが近かったかという事実が記録から消えるため、この順序は入れ替えません。

重なった2本を入力と式の系統から同じ根拠か別根拠か判定する流れ
画面の本数ではなく、入力と計算系統で根拠数を判断します。画像を拡大して表示(原寸 1672×941)

観察を始める前に、何を書き出しておくのか

事前登録とは、観察を始める前に、何をどの条件で測るのかを書き出して固定することです。手順の最初にこれを置く理由は単純です。観察を始めてから測定対象を選べるなら、価格が止まった場所に合うスイングや方式を後から選ぶことができてしまい、その記録は後で検証に使えなくなります。

登録する項目

登録するのは、次の項目です。1つでも空欄があると、後から同じ画面を再現できません。

項目登録する内容
スイング起点と終点の価格、選んだ時間足、ヒゲと終値のどちらを使ったか
ピボット方式方式名と、そこで使う式の出どころ
ピボット期間デイリー、ウィークリーなどの基準期間
セッション境界日足の開始・終了時刻、タイムゾーン、夏時間の扱い、週の区切り
価格系列Bid、Ask、Mid、Last のいずれか、およびデータ提供元
表示水準実際に観察対象とする水準の一覧
表示桁と丸め規則何桁で表示し、丸め前の値をどこに保持するか

スイングの選び方そのものは、フィボナッチリトレースメントの起点と終点の決め方で扱います。ここで必要なのは、選び方の良し悪しではなく、選んだ結果を観察前に固定して記録に残すことです。

本記事で使う登録内容

以下はすべて、説明のための合成値です。表示は小数第4位までとし、途中計算では丸めません。

項目
前期間の高値 H1.3120
前期間の安値 L1.2980
前期間の終値 C1.3080
前期間のレンジ(H − L)0.0140
スイング分析者が上記と同じ H と L を選んだ場合

この例では、分析者が測ろうと決めたスイングの高値と安値が、たまたま前期間の高値と安値と同じでした。これは意図的に置いた設定です。フィボナッチ側とピボット側が、どの程度まで同じデータを共有しているかが、後の畳み込みで効いてきます。

観察対象として登録した線は、次の4本です。

ラベル生成の手順入力
F-6181.3033フィボナッチ描画 61.8%分析者が選んだスイング H = 1.3120 / L = 1.2980
F-5001.3050フィボナッチ描画 50%同じスイング
P-R11.3140Traditional ピボットの R1前期間 H / L / C
K-D1.31306ゾーン型の境界 D前期間 H / L / C

説明を簡潔にするため、候補は4本に限定しています。実際には同じ2方式を表示すれば中心の水準どうしも並びますが、その組は値が常に一致するため、「重なった2本は、根拠2つと数えてよいのか」で示したとおり1本として扱います。

登録を先に置くと何が変わるか

事前登録があると、記録に「何を見なかったか」が残ります。表示していた水準の一覧が固定されているため、後から別の水準を持ち出して説明することができません。逆に、登録がなければ、画面に出ていた線のうち都合のよいものだけを事後に選んで並べることができ、その記録からは何も確かめられなくなります。

線の種類・式と入力・時間足・許容幅・反応定義を観察前に記録するチェックリスト
事前登録は後付け判断を減らし、再現可能な比較を支えます。画像を拡大して表示(原寸 1672×941)

どこまで近ければ「同じ観察点」なのか

許容距離とは、2本の水準を「同じ1つの観察点として扱ってよいほど近い」と判定する上限の距離です。ここで決めるのは3つあります。距離の単位、その値、そして境界の等号をどう扱うかです。

単位と値

距離の単位には、絶対的な価格差、pips、ボラティリティに対する比などが使えます。どれを選ぶかで、同じ市場でも判定の結果が変わります。ボラティリティ比を使う場合は、比の分母に使う指標と、その計算期間まで観察前に固定する必要があります。

本記事の例では、単位を絶対的な価格差とし、値を 0.0010 とします。この値が適正かどうかは、本記事では決めません。許容距離を広げるほど、重なりとして判定される事例は増え、狭めるほど減ります。どの値でどれだけ該当数が変わるかを比べる作業は、記録の取り方ではなく検証設計の側の問題です。

境界の等号を先に決める

許容距離を決めるとき、実務でつまずくのは値の大小ではなく境界です。距離がちょうど許容値と等しいとき、それを含めるのか外すのかを、観察の前に決めておく必要があります。

本記事では「許容距離以下(等号を含む)」を採用したものとして進めます。ただし、これは含める側が正しいという主張ではありません。外す側の規則でも構いません。要件は、どちらかを先に決めて固定することです。

この点が形式的な注意で済まないことは、「距離を測ってから、何をどう畳むのか」の距離の表で分かります。本記事の例では、許容距離 0.0010 に対して距離がちょうど 0.0010 という組が実際に現れます。等号の扱いを観察の後で決めるなら、この組は含めることも外すこともでき、判定は結果の説明になってしまいます。

丸めは表示だけに使う

距離の比較は、表示桁に丸めた値ではなく、丸める前の値で行います。たとえば本記事の F-618 は、表示上は 1.3033 ですが、計算上の値は 1.303348 です。境界付近では、表示値どうしで引き算をした結果と、丸め前の値で引き算をした結果が、許容距離をまたいで食い違うことがあります。

本記事の例では、丸めの有無で判定は変わりません。それでも規則としては、丸めは表示のためだけに使い、判定は丸め前の値で行うと決めておきます。判定規則が表示設定に依存すると、表示桁を変えただけで過去の記録の意味が変わります。

線のラベル・式・入力・系統をたどって根拠を記録する図
表示名ではなく、式と入力までたどって根拠を数えます。画像を拡大して表示(原寸 1672×941)

その線は、どの式とどの入力から出たのか

系統とは、その線を出した式と、その式に入れた入力の組み合わせです。距離を測る前に、登録した4本すべてについて系統を書き出します。

ラベル式の系統入力値が入れ替わる時点
F-6181.3033フィボナッチ描画の 61.8%分析者が選んだスイングの H と L分析者が描き直したとき
F-5001.3050フィボナッチ描画の 50%同じスイングの H と L分析者が描き直したとき
P-R11.3140Traditional ピボットの R1前期間の H / L / C基準期間の切り替わり
K-D1.31306ゾーン型の境界 D前期間の H / L / C基準期間の切り替わり

P-R1 の値は、まず中心水準を (H + L + C) ÷ 3 = 3.9180 ÷ 3 = 1.3060 と求め、R1 = 2 × 1.3060 − 1.2980 = 1.3140 として得ています。1.3060 は表示対象ではありませんが、R1 を出すための中間値として記録に残します。中間値を残さないと、後で値が合わなくなったときに、入力が違ったのか式が違ったのかを切り分けられません。この式の全文と、日足の区切りによって前期間の H / L / C 自体がどう変わるかは、デイリーピボットの計算式と日足の区切りで扱います。

入力の書き方の粒度

入力欄に「前期間」とだけ書くのは不十分です。前期間は、セッション境界の定義によって別の期間を指します。区切り時刻とタイムゾーンが違えば、同じ日付でも H / L / C が変わり、そこから出る水準もすべて変わります。価格系列が Bid か Mid かでも同様です。入力欄には、事前登録したセッション境界と価格系列の識別まで含めて書きます。

ラベルの付け方

画面上のラベルを R1 とだけ表示していると、系統をたどる作業が毎回やり直しになります。方式、期間、系統が読み取れる書き方に統一しておくと、記録の照合が速くなります。本記事で F-618、P-R1、K-D のように書いているのは、この規約の一例です。

系統を書けない線は候補にしない

配布されたインジケーターの出力など、手元で式を再現できない線は、系統欄を埋められません。この場合、その線は候補から外すか、手計算で同じ値を再現できるまで保留にします。系統が不明な線は、独立した根拠かどうかを判定できないため、次の畳み込みの手順に乗せられません。

距離を測ってから、何をどう畳むのか

作業は2段階に分かれます。先に全ペアの距離を測り、次に系統をたどって畳みます。順序を逆にしないでください。距離を測る前に畳んでしまうと、どのペアが近かったかという事実そのものが記録から消えます。

全ペアの距離を測る

登録した4本から作れる組は6つです。距離は丸め前の値で計算し、表示のみ小数第4位に丸めています。

距離許容距離 0.0010 に対する判定
P-R1 と K-D0.0010該当(ちょうど許容値。等号を含むと事前に決めたため含める)
F-618 と F-5000.0017非該当
F-500 と K-D0.0080非該当
F-500 と P-R10.0090非該当
F-618 と K-D0.0097非該当
F-618 と P-R10.0107非該当

許容距離以内に入るのは1組だけです。この時点での画面の見え方は、「2本の線が 1.3130 と 1.3140 に並んでいる」というものです。

系統をたどると、2本は1つの根拠になる

P-R1 と K-D は、まったく違う式から出ています。片方は Traditional ピボットの R1 の式であり、もう片方は6ゾーン型の境界の式です。名前も違い、通常は別のインジケーターとして別の色で表示されます。

しかし、系統表の入力欄を見ると、どちらも前期間の H / L / C です。入力が同じである以上、この2本は独立した2つの確認ではありません。前期間のデータが1組あり、そこから2通りの式で2つの数字が出ているだけです。確認は1回しか行われていません。

式が違っても入力が同じなら、独立した2つの根拠にはなりません。P-R1 と K-D は、まさにこの関係にある2本です。

畳むのは根拠の数であって、価格ではありません。1.3130 と 1.3140 は違う価格として両方を残し、独立した根拠としては1と数えます。

観察点表示されていた線価格入力の関係独立した根拠の数
1.3130 から 1.3140P-R1、K-D2つのまま残す入力が同一(前期間の H / L / C)。依存あり1

畳み方の2段階

畳み込みには、性質の異なる2つの段階があります。

段階1は、代数的に同一な場合です。式も入力も同じであれば、値は常に一致します。「重なった2本は、根拠2つと数えてよいのか」で挙げた中心の水準がこれにあたり、本記事の入力ではどちらも 1.3060 になります。距離を測るまでもなく1本であり、許容距離の設定とも無関係に成立します。自分が使っている実装の式は、その実装の公式資料で確認してください。名前が違うだけで同じ式を実行しているかどうかは、資料を見れば判定できます。

段階2は、入力を共有する場合です。式は違うが入力が同じという状態で、P-R1 と K-D の関係がこれにあたります。今回はたまたま距離 0.0010 で近い位置にありますが、重要なのは近さではありません。入力である前期間の H / L / C が変われば、両方が同時に動きます。条件を変えても構造的に連動するため、独立した2根拠として数えられません。

段階1と段階2で、記録に残すものが違います。段階1は値が常に一致するので、価格そのものが1つです。段階2は値が違うので、価格は2つ残し、共有している入力を注記して依存ありと表示します。畳むのは根拠の数だけです。

フィボナッチ側の2本も、段階2にあたります。F-618 と F-500 は、同じスイングに対して比率を変えただけです。今回の距離は 0.0017 で許容距離を超えているため、そもそも同じ観察点にはなりません。しかし仮に、比率の選び方や値幅の大きさによってこの2本が許容距離内に入ったとしても、独立した2つの根拠にはなりません。1つのスイングという入力から派生した2つの数字だからです。この場合も、価格は2つのまま残し、根拠の数だけを1と数えます。

入力を部分的にしか共有しない場合

本記事の例には、もう1つの状態が含まれています。フィボナッチ側の入力は分析者が選んだ H と L であり、この例ではそれが前期間の H と L と一致しています。一方、ピボット側の入力は H / L / C の3つです。つまり両者は、入力を部分的に共有しています。

この場合、根拠の数は畳みません。C が入るかどうかで挙動が変わるため、常に連動するとは言えないからです。ただし、記録に「独立」と書くこともしません。入力の一部を共有していることを注記として残し、独立と部分共有を別の状態として区別します。

入力をまったく共有していない場合も同じです。計算の系統が別であることは言えますが、それだけで統計的に独立だとは言えません。同じ市場の同じ期間から作られた水準どうしは、値動きを通じて連動しうるからです。系統が別であることと、統計的に独立であることは、別に確かめるべき二つの事柄です。今回はフィボナッチ側とピボット側の間に許容距離内の組がないため、判定の必要は生じていませんが、スイングの選び方によっては生じます。

本数から規則を作る場合の限定

畳み込みの後に残った独立した根拠の数を使って、たとえば「2以上のときだけ記録に残す」といった規則を作ることはできます。ただし、それは自分が定めた記述的な規則であって、較正された確率ではありません。数字が大きい観察点のほうが反応の起きる割合が高いかどうかは、規則を作った時点では何も分かっていません。

到達時刻・反応方向・反応幅などを到達と反応に分けて記録する例
到達と、その後の反応は別イベントとして記録します。画像を拡大して表示(原寸 1672×941)

本数を確率や見込みとして扱うには、別途の検証が必要です。本記事は、重なりの本数が多いほど価格が反応しやすいという主張を行いません。ここで行っているのは、自分が何本の独立した情報を見ているのかを正しく数えることだけです。重なりという考え方そのもの、および要素の独立性をどう捉えるかは、フィボナッチゾーン/コンフルエンス実践ガイドが扱います。本記事が扱うのは、系統をたどって畳むという記録側の手順だけです。

事前登録から系統の対応づけ、価格の扱いと根拠の数え方、記録までを6段階で示した手順の図。観察前に決めるものと観察後に行うものを分けてある。
二重計上を避ける手順。畳むのは根拠の数であって価格ではない。

到達と反応を、どう記録し分けるのか

畳み込みが終わると、観察点の一覧ができます。ここから先は、その観察点で何が起きたかを記録する作業です。記録するのは、いつ到達したか、どちらから到達したか、どういう経路で到達したか、そして事前に決めた区分のどれに当たったかの四つです。以下の項目はいずれも、注文や取引の判断を示すものではありません。

記録する項目

記録項目内容決める時点
観察点の識別子畳み込み後の観察点に付けた記号観察前
価格または範囲畳み込み後の値、または畳んだ線が挟む範囲観察前
到達の定義ヒゲで触れた時点か、終値がその側にあるか。どの価格系列で判定するか観察前
観測窓到達後、何本または何時間を観察対象とするか観察前
反応の区分観測窓の中で起きたことを分類する区分の一覧観察前
到達の時点到達の定義を最初に満たした時刻観察時
到達の方向上から下げて到達したか、下から上げて到達したか観察時
到達までの経路大きな足で複数の水準を続けて通過してきたか、徐々に近づいたか、休場をはさんで飛び越えたか観察時
観測窓内の結果事前に決めた区分のいずれか観察時

観測窓と反応の区分は、必ず観察前に決めます。到達後に「どこまで見るか」を選べるなら、同じ値動きを反応とも通過とも記録でき、結論は観測窓の選び方で決まってしまいます。

到達は、それ自体では何も示さない

観察点に価格が到達したという記録は、価格がその場所に来たという事実だけを示します。方向は決まりませんし、反発が起きたことも、これから起きることも意味しません。到達と反応は別の項目として、別々に記録します。

到達の方向と経路を記録するのは、同じ価格でも状況が異なるからです。上から下げて到達した場合と、下から上げて到達した場合では、その後に観察される値動きの意味が変わります。ただし、この区別は記録の分類のためのものであり、どちらの場合に何をすべきかを示すものではありません。

様式を固定する

記録は1事例1行とし、同じ様式で残します。うまくいった事例だけを詳しく書き、そうでない事例を省くと、後から見たときに事例の集まりの性質が分からなくなります。書式を固定しておけば、記録を作った時点の判断が後の集計に混入しません。

以上は記録の様式に関する手順であり、参入や注文の置き方を示すものではありません。

観察をいつ打ち切り、反応しなかった事例をどう残すのか

無効化とは、その観察点をこれ以上観察対象として扱わないと決める条件です。売買における損切りとは別のものであり、価格の水準ではなく、観察の前提が失われた状態を指します。

3種類の無効化

1つ目は、入力の更新による無効化です。基準期間が切り替われば、前期間の H / L / C が入れ替わります。本記事の例でいえば、P-R1 と K-D は新しい入力から計算し直され、旧い値は観察点としての根拠を失います。この無効化は、価格が何をしたかとは無関係に、時刻で発生します。

2つ目は、前提の破棄による無効化です。フィボナッチ側の水準は、分析者が選んだスイングを測ったものです。価格がそのスイングの起点を越えれば、測っていた値幅そのものが押しや戻りの対象ではなくなり、そこから出した比率の水準は前提を失います。

3つ目は、観測窓の満了です。到達した後、事前に決めた本数または時間の中で反応の区分のどれにも当てはまらなければ、その事例は「観測窓内に反応の定義を満たさなかった」として確定させます。判定を先送りにすると、後から都合のよい時点を選べるようになります。

これらの条件も、観察前に登録します。無効化の条件が事前に書かれていない観察点は、いつまでも「まだ結論が出ていない事例」として残り続け、集計から静かに外れます。

反応しなかった事例を残す理由

記録に残すべき事例は、次の4区分です。

区分内容
1到達し、観測窓内に反応の定義を満たした
2到達したが、観測窓内に反応の定義を満たさなかった(そのまま通過した場合、範囲内を往来した場合を含む)
3到達しないまま観測期間が終了した
4到達前に、入力の更新または前提の破棄によって失効した

区分1だけを残した記録は、事例の集まりではなく事例の抜粋です。割合を計算しようとしても分母がありません。区分2と3を落とすと、到達した事例のうちどれだけが反応の定義を満たしたのかという最も基本的な数字が出せなくなります。区分4は、観察点が存在した期間の長さを記録に残す役割を持ちます。

同じ価格帯に翌期間も線が来た場合は、別の事例として登録します。入力が入れ替わっている以上、それは新しい観察点であり、前の事例の続きではありません。ここを続きとして扱うと、1つの事例を複数回数えることになり、線の二重計上を避けたはずの記録に、事例の二重計上が入り込みます。

この手順で確定したこと、確定していないこと

本記事で確定したのは、測定と重複排除の手順です。具体的には、観察前に測る対象を登録すること、許容距離とその境界の扱いを先に決めること、各線を系統に対応づけること、代数的に同一なものと入力を共有するものを畳むこと、到達と反応を別々に記録すること、無効化を定義して反応しなかった事例も残すことです。

確定していないことも明示します。重なりのある場所に何らかの優位性があるかどうか、許容距離をいくつに設定するのが妥当か、反応の定義をどう置くのが妥当か、そして取引コストを差し引いた後に何が残るか。これらはいずれも、本記事の手順では答えが出ません。必要なのは、比較対象の設定、標本の大きさ、期間の分割、複数条件を試したことの扱いを含む検証の設計です。

本記事の手順は、その検証の入力になります。系統の欄と、畳み込み後の独立した根拠の数が記録に残っていなければ、集計の段階で同じ入力から出た線を二重に数えたまま計算することになり、出てきた数字が何を測ったものか分からなくなります。逆に言えば、重複を排除する目的は、良い場所を見つけることではなく、後の検証が意味を持つように記録を整えることです。

次に読む記事

本記事は、線を数えるときの記録の作り方に絞りました。ここから先は、目的に応じて次の順路があります。

使う前に確認しておくこと

本記事は、テクニカル分析に関する一般的な情報を提供するものであり、特定の商品、通貨ペア、売買方法を推奨するものではありません。掲載した価格はすべて説明のための合成値です。ここで扱った水準は観察の候補であり、価格の方向を決めるものでも、反発や到達を保証するものでもありません。実際の判断は、ご自身の責任において行ってください。

参入や退出の判断、注文の置き場所、数量、損切りや利確の値といった売買の設定は扱っていません。どのピボット方式やどの比率が優れているかという評価も行っていません。単独の指標で売買を決められるものでもありません。

参照した情報

本記事は測定と記録の手順を主題としているため、各計算式の出典は再掲していません。式の定義とその出どころは、それぞれを主題とする記事で確認できます。

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