投資信託の換金で確認したい基本(受渡日・信託財産留保額)
投資信託を換金(売却して現金化)しようとするとき、確認しておきたいのは、大きく三つです。どの方法で換金するか、お金が実際に手元に入るのはいつか、そして換金のときに差し引かれる費用があるか、という三点です。
この記事では、投資信託を換金するときの実務を、解約請求と買取請求の違い、注文した時点では取引価格が確定していない仕組み(ブラインド方式)、約定日と受渡日の関係、そして信託財産留保額といった観点から、公式情報ベースで中立に整理します。「いつ売れば得か」ではなく、「換金するときに何を確認しておくか」を知るための見取り図として読んでいただくことを想定しています。受渡までの日数や費用の水準は、商品によって異なるため、最終的にはご自身で目論見書や各社・公式機関の情報を確認してください。
なお、投資信託の仕組みやコストの全体像、基準価額の見方といった購入前に確認したい基本は、投資信託を始める前に確認したい基本で整理しています。本記事は、それをふまえたうえで「換金(出口)の実務」に絞って確認します。
投資信託の換金には二つの方法がある
投資信託を途中で換金する方法には、解約請求と買取請求の二つがあります。一般社団法人 資産運用業協会(2026年4月に投資信託協会と日本投資顧問業協会が合併して発足)の公式情報では、それぞれ次のように説明されています。
| 方法 | 内容 | 受け取る代金の性質 |
|---|---|---|
| 解約請求 | 販売会社を通じて、信託財産の一部の解約を請求して換金する方法 | 信託財産を取り崩して受け取る |
| 買取請求 | 保有する投資信託を、販売会社に買い取ってもらう形で換金する方法 | 販売会社に売却して受け取る |
解約請求とは
解約請求とは、販売会社を通じて、信託財産の一部の解約を請求し、その代金を受け取る換金方法です。保有している投資信託の一部または全部を取り崩す形になります。
買取請求とは
買取請求とは、保有する投資信託を、販売会社に買い取ってもらう形で換金する方法です。信託財産を解約するのではなく、販売会社に売却する形をとります。
実務上、どちらの方法を選べるか、また実際にどちらが用いられるかは、販売会社や商品によって異なります。利用している販売会社でどの方法が選べるかは、各社の情報で確認することになります。
税制上の扱いは現在どちらも同じ
かつては、解約請求と買取請求とで税務上の扱いに違いがありました。しかし現在は、2009年(平成21年)以降、公募株式投資信託を換金して得た利益は、いずれの方法でも譲渡所得として扱われる点で同じとされています。換金により受け取る金銭は、譲渡所得の収入金額に含まれるものとして整理されています。
税制上の扱いは現在どちらも同じであるため、「解約請求と買取請求のどちらが有利か」を一律に決めることはできません。選べる方法や手続きは販売会社によって異なります。税金の具体的な計算や申告については、国税庁の情報や税務署、税理士などの専門家でご確認ください。
注文した時点では約定価額が決まっていない(ブラインド方式)
投資信託の換金にあたって理解しておきたいのが、注文した時点では、いくらの価格で取引が成立するかが確定していないという点です。
投資信託を始める前に確認したい基本でも触れたとおり、投資信託の値段にあたる基準価額(NAV、net asset value)は、原則として一日に一回算出されます。株式のように取引時間中にリアルタイムで動くものではありません。換金の注文を出す時点では、その日の基準価額はまだ公表されていないのが通常です。
このように、投資家が当日の基準価額を分からない状態で注文を行う仕組みを、ブラインド方式(blind method)といいます。基準価額が公表されるのは、その日の申込みを締め切ったあとです。
換金の注文は、いくらで売れるかが分からない状態で出すことになります。約定する基準価額は、申込みを締め切ったあとに算出された価格が用いられます。どの営業日の基準価額が適用されるかは、商品によって異なります。
ブラインド方式がとられているのは、すでにそのファンドを保有している投資家との公平性を保つためと説明されています。仮に当日の基準価額を見てから売買できるとすると、価格を知っている人だけが有利になり、既存の保有者が不利益を被るおそれがあるためです。
換金する側からみると、「この値段で売りたい」と価格を指定して注文できるわけではない、という点に注意が必要です。実際に適用される基準価額は、注文後に算出されることになります。
換金してからお金が入るまで(約定日と受渡日)
換金の注文を出してから、実際に代金が手元に入るまでには、いくつかの段階があります。整理すると、申込み、約定、受渡という流れです。
- 換金の申込み(販売会社を通じて、解約請求または買取請求の注文を出す)
- 約定(申込みを締め切ったあとに算出された基準価額で取引が成立する。この日を約定日という)
- 受渡(換金の代金を実際に受け取る。この日を受渡日という)
約定日(やくじょうび)は、注文が成立し、取引が確定する日です。受渡日(うけわたしび、settlement date)は、その代金が実際に受け取れる日です。注文を出したその日に代金が入るわけではなく、数営業日あとになるのが通常です。
一般的な投資信託の場合、資産運用業協会の公式情報では、換金の申込日から数えて四営業日目以降に代金を受け取れる、と説明されています。一方、MMFやMRFのように日々決算を行う商品(日々決算型)では、翌営業日に受け取れるとされています。
受渡までに何営業日かかるかは、商品によって異なります。とくに海外の資産を組み入れているファンドなどでは、国内の資産だけを組み入れる場合と日数が異なることがあります。具体的な日数は、その商品の目論見書で確認してください。この記事では特定の日数を断定していません。
つまり、「換金すればすぐに現金になる」とは限りません。生活費や別の支払いに充てる予定がある場合は、代金がいつ入るのかを、あらかじめ目論見書や販売会社の情報で確認しておくことが基本になります。
換金時に差し引かれることがある費用(信託財産留保額)
換金のときに、費用が差し引かれる場合があります。その代表的なものが、信託財産留保額です。
信託財産留保額とは
信託財産留保額(しんたくざいさんりゅうほがく)とは、換金(解約)するときなどに差し引かれ、信託財産に留保される費用です。資産運用業協会の公式情報によれば、これは販売会社が受け取る報酬ではなく、解約する人が負担して、引き続きそのファンドを保有する投資家のために信託財産へ残される性質の費用とされています。
換金する投資家が出ることで、ファンドはその分の資産を売却するなどの対応が必要になります。その際に生じうるコストを、換金する本人に一定程度負担してもらうことで、ファンドに残る投資家との公平性を保つ、という考え方で設けられているものです。
かからない商品もある
信託財産留保額は、すべての投資信託にかかるわけではありません。資産運用業協会の公式情報でも、差し引かれる商品と差し引かれない商品があると説明されています。
信託財産留保額がかかるかどうか、またかかる場合の水準(率)は、商品によって異なります。この記事では特定の率を示していません。換金のときに費用が差し引かれるかどうかは、その商品の目論見書で確認してください。
なお、投資信託にかかる費用には、信託財産留保額のほかに、購入時手数料や、保有している間にかかる信託報酬(運用管理費用)があります。コスト全体の整理は投資信託を始める前に確認したい基本でも扱っています。
換金前に確認したいその他の留意点
換金の方法・受渡日・費用のほかにも、商品によっては確認しておきたい点があります。
- クローズド期間:商品によっては、一定の期間、解約ができない期間(クローズド期間)が設けられていることがあります。この期間中は換金できないため、いつから換金できるのかを、あらかじめ目論見書で確認しておく必要があります。
- 換金タイミングによって受取額が変わる:投資信託の基準価額は値動きします。換金する時点の基準価額によって、受け取る金額は変わります。購入したときより基準価額が下がっていれば、投資した金額を下回ること(元本割れ)が生じうるものです。
「いつ売れば得をするか」を、あらかじめ判断できるものではありません。基準価額は市場の状況によって変動し、換金する時点で投資した金額を下回ることもあります。換金は、必要性やご自身の状況をふまえて判断するものであり、特定のタイミングが有利だと断定できるわけではありません。
よくある確認事項
解約請求と買取請求はどちらを選べばよいですか
この記事では、どちらが有利かを断定することはしません。2009年以降は、公募株式投資信託を換金した利益はいずれの方法でも譲渡所得として扱われ、税制上の扱いは同じとされています。実際にどちらの方法を選べるか、また手続きがどうなるかは販売会社によって異なるため、利用している販売会社の情報で確認することになります。
換金してからお金はいつ入りますか
商品によって異なります。一般的な投資信託では、資産運用業協会の公式情報で、換金の申込日から数えて四営業日目以降に代金を受け取れると説明されています。日々決算型(MMF・MRFなど)では翌営業日とされています。ただし、海外の資産を組み入れているファンドなどでは日数が異なることがあります。具体的な受渡日は、その商品の目論見書で確認してください。
換金にも費用がかかりますか
かかる商品とかからない商品があります。換金(解約)のときに差し引かれることがある費用として、信託財産留保額があります。これは販売会社の報酬ではなく、信託財産に留保される性質の費用です。すべての投資信託にかかるわけではなく、かかる場合の水準も商品によって異なるため、目論見書で確認することになります。
注文した日の値段で売れますか
注文した時点では、適用される基準価額は確定していません。投資信託では、投資家が当日の基準価額を分からない状態で注文を行う仕組み(ブラインド方式)がとられており、基準価額が公表されるのは申込みを締め切ったあとです。そのため、「この値段で売る」と価格を指定して注文することはできず、申込み後に算出された基準価額で取引が成立します。
用語整理
この記事で扱った用語のうち、確認しておきたいものを整理します。
- 換金(redemption):保有する投資信託を売却して現金化すること。解約ともいいます。
- 解約請求:販売会社を通じて、信託財産の一部の解約を請求して換金する方法。
- 買取請求:保有する投資信託を、販売会社に買い取ってもらう形で換金する方法。
- ブラインド方式(blind method):投資家が当日の基準価額を分からない状態で取引を行う仕組み。基準価額が公表されるのは申込みを締め切ったあとです。
- 基準価額(NAV、net asset value):投資信託の値段にあたるもの。原則として一日に一回算出されます。
- 約定日(やくじょうび):注文が成立し、取引が確定する日。
- 受渡日(うけわたしび、settlement date):換金の代金を実際に受け取る日。
- 信託財産留保額(しんたくざいさんりゅうほがく):換金(解約)時などに差し引かれ、信託財産に留保される費用。販売会社の報酬ではなく、差し引かれる商品と差し引かれない商品があります。
- クローズド期間:一定の期間、解約ができない期間。商品によって設けられていることがあります。
- 譲渡所得:換金により生じた利益の税務上の区分。2009年以降、公募株式投資信託の換金益は換金方法を問わず譲渡所得として扱われます。
まとめ
この記事では、投資信託を換金するときに確認したい基本を、資産運用業協会・国税庁の公式情報をもとに整理しました。換金の方法には解約請求と買取請求があり、税制上の扱いは現在どちらも同じとされています。注文した時点では適用される基準価額は確定しておらず、申込みを締め切ったあとに算出された価格で取引が成立する仕組み(ブラインド方式)がとられています。
確認しておきたいのは、換金してから代金が手元に入るまでには数営業日かかること、その日数は商品によって異なること、そして換金のときに信託財産留保額が差し引かれる商品があることです。受渡までの日数や費用の水準は商品により異なるため、いずれも目論見書で確認するのが基本になります。また、換金時の受取額は基準価額の値動き次第であり、特定のタイミングが有利だと断定できるものではありません。換金を考える際の見取り図として使っていただければと思います。最終的な判断は、目論見書や各社・公式機関の情報をご自身で確認したうえで行ってください。
参照した公式情報
- 一般社団法人 資産運用業協会(旧投資信託協会)「換金の種類と手続き」(解約請求・買取請求の定義/税制上の扱い/受渡までの日数/クローズド期間) https://www.imaj.or.jp/study/investmenttrust/process/sell.html
- 一般社団法人 資産運用業協会(旧投資信託協会)「基準価額と分配金」(ブラインド方式の説明) https://www.imaj.or.jp/study/investmenttrust/about/navdividends.html
- 一般社団法人 資産運用業協会(旧投資信託協会)「投資信託のコスト」(信託財産留保額の説明) https://www.imaj.or.jp/study/investmenttrust/costtax/cost.html
- 国税庁 タックスアンサー No.1463「株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)」(投資信託の解約・償還による金銭と譲渡所得) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1463.htm
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