解説
金融庁が令和9年度税制改正で要望したこと——NISAの非課税保有限度額を「当年中に復活」させる案と、損益通算の対象拡大
金融庁が公表した令和9(2027)年度税制改正要望のうち、個人投資家に関係する2項目(NISAの利便性向上等、金融所得課税の一体化)について、要望の中身と、これが決定ではなく要望であることを、原典の記載範囲だけで示す。
対象:金融庁/令和9(2027)年度税制改正要望の公表/2026-08公表・令和9年度改正に向けた要望
発生事実
何が公表されたか
本記事が扱うのは、金融庁が公表した税制改正の「要望」です。要望は決定ではなく、記載された内容がそのまま制度になるとは限りません。以下では、資料に何が書かれているかを確認します。
金融庁は2026年8月、「令和9(2027)年度税制改正要望について
」を公表しました。主な要望項目には、NISAの利便性向上等と、金融所得課税の一体化(金融商品に係る損益通算範囲の拡大)が含まれています。本記事はこの二項目を取り上げます。資料にはこのほかにも要望項目が挙げられています。
資料は、令和5年度税制改正でNISAの抜本的拡充・恒久化が行われ、令和8年度税制改正でつみたて投資枠の年齢要件の撤廃など制度の一層の充実が図られたことを前提として示しています。そのうえでNISAについては、世代を問わず各自のライフプランに沿った資産形成ができるようにするとの観点から、利便性向上のための措置を講じるよう求めています。資料の図表では、「非課税保有限度額(1,800万円)の当年中の復活
」と、つみたて投資枠の要件整備が挙げられており、要望事項はこれらを含むNISAの利便性向上等にかかる所要の措置とされています。ここでの1,800万円は、資料が現状として示している非課税保有限度額(簿価ベース)の額です。NISAに関する要望事項として挙げられているのは利便性向上のための措置であり、非課税保有限度額そのものの引上げは挙げられていません。また、資料には「【継続要望】
」の表示があります。ただし、この表示がどの項目に付されたものかは、本記事が確認した範囲では判別できません。
損益通算については、2016年1月に上場株式等に加えて特定公社債等まで範囲が拡大された経緯を示したうえで、「デリバティブ取引・預貯金等について、未だ損益通算が認められておらず
」と現状の課題を挙げ、要望事項として「金融商品に係る損益通算範囲をデリバティブ取引・預貯金等にまで拡大すること。
」を掲げています。この項目は経済産業省・農林水産省との共同要望です。
市場の反応
該当しません
本記事は税制改正の要望を扱っており、特定の銘柄や発行体を対象としていないため、市場の反応は本記事の対象外です。当媒体は価格データを取得していません。
投資家への意味
要望を読むときの論点
読者にとって論点となるのは次の点だと考えられます。
第一に、非課税保有限度額が復活する時期です。資料の図では、現状は売却した分が翌年に復活する形で示され、検討案として当年中の復活が示されています。図では、現状・検討案のいずれの側にも、年間投資枠の範囲(つみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円、合計で最大360万円)が併記されています。資料は、この要望について、投資家の制度の予見可能性を高め、金融機関のシステム対応の期間を確保するために今年度の改正が必要としています。
第二に、つみたて投資枠の対象商品です。資料の図表は、対象商品を公募投資信託とETFの行、指定指数に連動するものとそれ以外の列に分けて整理しています。指定指数に連動しないものについては、公募投資信託には、純資産額50億円以上、信託開始以降5年経過、信託期間の3分の2で資金流入超、主に株式または公社債に投資という要件が示されている一方、ETFは「現状、要件未整備
」とされ、ETF市場の環境整備等が進んだことを踏まえて対象とすべき要件を整備する、と記されています。なお指定指数に連動するETFについては、流動性確保の観点から、国内の取引所に上場するものは取引所の指定を受けたもの、海外の取引所に上場するものは資産残高が1兆円以上であることという要件も求められています。要件の整備は、つみたて投資枠で選べる商品の範囲に関わる論点だと考えられます。
第三に、損益通算の範囲です。資料は、デリバティブ取引がヘッジや分散投資に活用されうる一方で、個人投資家による活用は現状限定的だとしています。要望はデリバティブ取引や預貯金等を対象に挙げており、複数の商品をまたいで取引している場合の損益の扱いに関わる論点です。
なお同資料は参考として、令和8年度税制改正大綱が、デリバティブ取引に係る金融所得課税の更なる一体化について、意図的な租税回避行為を防止するための方策等に関するこれまでの検討の成果を踏まえ、総合的に検討するとしている旨を引いています。要望の側から見ても、この項目が検討段階にあることが同じ資料の中で確認できます。
次の確認事項
- この要望が今後どう扱われるかは、次の資料で確認できます。
- 金融庁が公表した同資料の本文
- 共同要望とされた経済産業省・農林水産省の税制改正要望資料
- 今後公表される税制改正大綱
本記事が確認した範囲
本記事が確認した範囲
本記事が確認したのは、金融庁が2026年8月に公表した税制改正要望の資料1点のみです。記載した内容は、いずれも同資料に示された要望事項および現状説明の範囲にとどまります。
同資料からは、これらの要望が実現するかどうか、実現する場合の時期や内容、確度、財政上の影響については判断できません。要望は決定ではなく、今後の議論を経て内容が変わる可能性があります。また本記事は、相場や価格への影響を扱っていません。
なお、本記事が発行主体を金融庁としているのは、資料の取得元が金融庁のウェブサイトであることに基づくものであり、確認した資料の本文にその名称が記されているためではありません。同資料の表紙が示す時点は2026年8月であり、日単位の公表日は同資料本文に記載がありません。本記事が出典欄に記した2026年8月31日は、資料を取得した金融庁の公表ページに示されていた日付であり、資料本文から確認したものではありません。
また、対象商品の要件を整理した図表について、どの要件がどの欄に置かれているかは、抽出したテキストからは判別できません。本記事は原本PDFの版面の配置を読み取ってこれを記述しており、その読み取りは本記事によるものです。
留保事項
- 本記事が確認しきれなかった点
- 資料の名称は原典の表紙どおりです。ただし発行主体を示す「金融庁」の語は、本記事が確認した抽出テキストには現れず、発行主体は取得元のウェブサイトに基づいて特定しています。
- 原典には
【継続要望】
の表示があります。ただし抽出テキストでは、この表示がどの項目に付されたものかまでは判別できず、本記事は表示が資料内に存在することを確認しています。 - 原典はETFについて「
現状、要件未整備
」と記しています。この記載がどの欄のものかは抽出テキストからは判別できず、本記事は原本PDFの版面の配置を読み取って記述しています。 - 原典は純資産額50億円以上ほかの要件を挙げています。これらがどの欄の要件かは抽出テキストからは判別できず、本記事は原本PDFの版面の配置を読み取って記述しています。
一次情報
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金融庁
この資料に基づく記述(19件)
- 表紙 金融庁が公表した資料の名称は「令和9(2027)年度税制改正要望について」である。 留保:資料の名称は原典の表紙どおりです。ただし発行主体を示す「金融庁」の語は、本記事が確認した抽出テキストには現れず、発行主体は取得元のウェブサイトに基づいて特定しています。
- ◆ NISAの利便性向上等 ◎見出し NISAの要望の柱の一つとして、非課税保有限度額(1,800万円)の当年中の復活が挙げられている。
- ◆ NISAの利便性向上等 図表(【継続要望】表示) 資料には【継続要望】の表示がある。 留保:原典には【継続要望】の表示があります。ただし抽出テキストでは、この表示がどの項目に付されたものかまでは判別できず、本記事は表示が資料内に存在することを確認しています。
- ◆ NISAの利便性向上等 図表 ETF欄 つみたて投資枠の対象商品について、指定指数に連動しないETFは要件が未整備であると記されている。 留保:原典はETFについて「現状、要件未整備」と記しています。この記載がどの欄のものかは抽出テキストからは判別できず、本記事は原本PDFの版面の配置を読み取って記述しています。
- ◆ 金融所得課税の一体化 現状及び問題点 デリバティブ取引・預貯金等については、損益通算が認められていないと記されている。
- ◆ 金融所得課税の一体化 要望事項 要望事項は、金融商品に係る損益通算範囲をデリバティブ取引・預貯金等にまで拡大することである。
- ◆ NISAの利便性向上等 要望事項 NISAについての要望事項は、あらゆる世代が自身のライフプランに沿った形で資産形成を行えるよう、利便性向上にかかる所要の措置を講ずることである。
- ◆ NISAの利便性向上等 図表 年間投資枠は、つみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円で、その範囲は最大360万円である。
- ◆ NISAの利便性向上等 図表 公募投信欄 つみたて投資枠の対象商品のうち、指定指数に連動しない公募投資信託には、純資産額50億円以上などの要件が求められている。 留保:原典は純資産額50億円以上ほかの要件を挙げています。これらがどの欄の要件かは抽出テキストからは判別できず、本記事は原本PDFの版面の配置を読み取って記述しています。
- ◆ NISAの利便性向上等 現状及び問題点 令和8年度税制改正では、つみたて投資枠の年齢要件の撤廃など制度の充実が図られた。
- 表紙 要望項目一覧 金融所得課税の一体化は、経済産業省・農林水産省との共同要望である。
- ◆ 金融所得課税の一体化 現状及び問題点 損益通算の範囲は、2016年1月より上場株式等に加え特定公社債等にまで拡大された。
- ◆ NISAの利便性向上等 図表 ETF欄 ETFについては、市場の環境整備等の進展を踏まえ、対象とすべき要件を整備するとされている。
- ◆ NISAの利便性向上等 図表 非課税保有限度額の1,800万円は簿価ベースの額である。
- ◆ NISAの利便性向上等 図表 ETF欄 ETFには、流動性確保の観点から、国内取引所のものは取引所の指定、海外取引所のものは資産残高に関する要件も求められている。
- ◆ NISAの利便性向上等 図表 ETF欄 海外取引所ETFに求められる要件は、資産残高が1兆円以上であることである。
- 参考:令和8(2026)年度税制改正大綱(抜粋) 令和8年度税制改正大綱は、デリバティブ取引に係る金融所得課税の更なる一体化について、総合的に検討するとしている。
- ◆ 金融所得課税の一体化 現状及び問題点 デリバティブ取引について、個人投資家による活用は現状限定的であるとされている。
- ◆ NISAの利便性向上等 図表(注) 今年度の改正が必要な理由として、投資家の制度の予見可能性の向上と、金融機関のシステム対応期間の確保が挙げられている。
出典の原文は各リンク先にあります。本記事は原文の全文を掲載していません。